2019年2月8日号 (no. 1191)
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本日のテーマ【
休業手当にも
最低賃金法は適用されるのかどうか。】
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■暇だからといって
従業員を休ませると給与が必要になる。
使用者、会社側の都合で社員を休ませたり、早退させると、仕事をしてもらっていない場合でも
休業手当という形で給与を支払う必要があります。
例えば、週5日で
契約しているのに、仕事が少ないという理由で一方的に週3日に減らす。1日6時間勤務で
契約しているのに、暇だから1日4時間に減らす。
こういう場合には
労働基準法26条(以下、26条)の
休業手当を支払う必要があり、
ノーワーク・ノーペイの原則とは違う対応になります。
労働基準法26条
使用者の
責に帰すべき事由による休業の場合においては、
使用者は、休業期間中当該
労働者に、その
平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。
他方、屋外での作業が主な仕事で、雨が降っているので作業ができない。だから休み。この場合は休業にはなりません。
使用者の都合ではなく、天候が理由ですから、26条は適用されません。
休業手当が必要かどうかが問題になるのは、
1.暇だからといって
従業員を帰らせてはいけない。
2.お客さんが少ないからといって出勤日を休みにしてはいけない。
という場面です。
■
最低賃金を下回る
休業手当でもOKなの?
26条の
休業手当は、働いた場合の60%以上の額になりますが、この額が
最低賃金を下回るとどうなるのかが問題です。
例えば、とある地域の
最低賃金が1,000円だとして、時間給1,200円で働く人を
使用者の都合で休業させた場合。
休業手当の支給率が60%だとすると、
休業手当の額は1時間あたり720円。一方、
最低賃金は1,000円。
この場合、
休業手当の額が
最低賃金を下回っていますが、これは問題ないのかどうか。
「
休業手当 最低賃金」というワードで検索したところ、「これだ」と思える検索結果が無く、悩んでしまいました。
休業手当は
最低賃金を下回っても構わないのか。それとも、下回ってはいけないのか。通常の
賃金とは違いますから、判断で悩むんですね。
■
休業手当は
賃金なのかどうか。
休業手当が
賃金であるならば、
最低賃金法が適用されます。しかし、
賃金ではないならば、
最低賃金法は適用されず、
最低賃金を下回る
休業手当でもOKと判断できます。
まず、
賃金の定義から確認すると、
最低賃金法の2条3項では、『
賃金 労働基準法第十一条に規定する
賃金をいう。』と書かれています。
次に、
労働基準法11条(以下11条)を見ると、『
賃金とは、
賃金、給料、手当、
賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として
使用者が
労働者に支払うすべてのものをいう。』と書かれています。
では、
休業手当は
賃金に該当するのかどうか考えてみましょう。
休業手当という名称ですから、「手当」に該当します。となると、11条の前半部分にあてはまり、この点から判断すると、
休業手当は
賃金と言えます。
では、
休業手当は「労働の対償」なのかどうか。ここが最大の悩みどころ。
名称上、
休業手当は
賃金に該当します。これは先程書いたとおり。
しかし、「労働の対償」なのかどうかが判断しにくいところ。
休業しているということは、労働はしていない。ならば、労働の対償として
休業手当が支払われているわけではないと解釈できる。
となると、労働の対償ではないものとして
休業手当が支払われているのだから、「
休業手当は
賃金ではない」という判断も可能になります。
労働の対償であれば、
休業手当は
最低賃金の適用を受ける。
労働の対償でなければ、その適用を受けない。
では、どちらなのか。
もし、後者の解釈を
採用すれば、
労働者を休業させた場合、
最低賃金を下回る手当を支払っても構わないと判断できます。
もし、
最低賃金法の適用を受けなくても、
労働時間ゼロで(
最低賃金を下回るが)給与の一部が支払われます。
これは
労働者にとっては悪い条件ではないでしょう。仕事以外のことに時間を使えます。買い物に行ってもいいし、食事に出かけてもいい。フィットネスクラブに行っても、日帰り温泉に行っても構わないでしょう。
例えるならば、
休業手当が
有給休暇に近いものになっているわけです。
だから、
最低賃金を下回っても困らないだろう、という理屈もある。
条文から考えても、
休業手当は、名称上は
賃金であるものの、「労働の対償」とは言い切れないところがあります。
となると、
休業手当は
賃金ではなく「
最低賃金法の適用を受けない」という解釈も間違いとは言えません。
■
使用者の都合で休ませなければいい。
休業手当を支払う場面に遭遇しなければ、今回のような問題は考えなくていいのです。
早退させたら、他の日の
勤務時間を延ばして調整する。
休ませる場合は、振り替えで外の日に出勤できるようにする。
雇用契約で約束した内容を
履行できれば、
休業手当を支払うことはありません。
契約で約束した内容を
履行できないことに対して支払われるのが
休業手当ですから、一方的に
勤務時間を短くしたり、休みを増やさなければ、26条が適用される場面にはなりません。
https://www.soumunomori.com/casestudy/article/atc-1501/
休業手当にも
最低賃金を適用か
( - 引用開始 - )
賃金が
最低賃金法で定める基準を上回っているか否かは、一定範囲の
賃金項目(
時間外労働の
賃金、精皆勤・
家族手当等)を除外し、時給換算した
賃金額と最賃額を比較して判断します。時間給制のパート等の場合、時給と最賃額を比較すれば足ります。1日7時間で
契約したパートの場合、法律で1
日当たり664円×7時間=4,494円以上の
賃金支払いが保障されていることになります。
しかし、休業が実施されれば、1日の
賃金総額がそれを下回るケースも想定されます。
最低賃金法第4条では、「
労働者の都合、または
使用者の正当な理由により、
所定労働時間の一部について労働しなかった場合、その時間に対応する
賃金を支払わないことを妨げない」と規定しています。
労基法第26条に基づく
休業手当を支払い、休業させたケースも同様です。
( - 引用終了 - )
こういう解釈もあるようですが、
最低賃金法4条4項
第一項及び第二項の規定は、
労働者がその都合により
所定労働時間若しくは所定労働日の労働をしなかつた場合又は
使用者が正当な理由により
労働者に
所定労働時間若しくは所定労働日の労働をさせなかつた場合において、労働しなかつた時間又は日に対応する限度で
賃金を支払わないことを妨げるものではない。
この
最低賃金法4条4項は、
ノーワーク・ノーペイについて書かれているように読めますし、
休業手当に
最低賃金法が適用されるかどうかを判断できるような回答ではないと思います。
使用者の都合で休ませる場面を作らない。これが一番の解決策です。
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メールマガジン【本では読めない
労務管理のミソ】のご紹介
内容の一例・・・
『定額
残業代で
残業代は減らせるのか』
『15分未満の
勤務時間は切り捨て?』
『4週4日以外の
変形休日制度もある』
『長時間残業を減らす方法は2つある』
『管理職は週休3日が理想』
『日曜日=
法定休日と思い込んではいけない』
『
半日有給休暇と
半日欠勤の組み合わせはダメ?』
『寸志は
賃金or贈り物?』
『ケータイは仕事道具か遊び道具か』
など、その他盛りだくさんのテーマでお送りしています。
本に書いていそうなんだけど、書いていない。
そんな内容が満載。
【本では読めない
労務管理のミソ】
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https://www.growthwk.com/entry/2008/05/26/125405?utm_campaign=soumu_cm_common_20190208_1
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合格率0.07%を通り抜けた大学生。
今、私はこうやって
社労士という職業で仕事をしているわけですが、子供の頃からなりたかった職業というわけではなくて、大学生の頃に遭遇したきっかけが始まりです。
子供の頃になりたい職業というと、男の子ならば、警察官やスポーツ選手、パイロットというのが良くあるもの。女の子だと、スチュワーデス(今はキャビンアテンダント)、花屋さん、ケーキ屋さん、保育園の先生とか。そういう社会的に広く
認知されたものが選ばれるので、小学生や中学生が
社労士になりたいなんてことはゼロではないのでしょうが、極めて稀でしょう。
私が
社労士試験に合格したのは大学4年のときで、いわゆる「現役合格」です。けれども、3年の時に一度不合格になって、ヘコんだんです。「たかが
社労士試験ごときにオチたのか」って。だって、簡単そうなイメージがするでしょ、
社労士なんて。チョチョッと勉強すれば、スルッと合格できるだろう。そう思っている人も少なくないはず。
「よく知られている資格 = 難しい」、「あまり知られていない資格 = 難しくない」。こういう判断基準があって、
社労士は後者に該当するため、難しくないだろうと思われてしまうわけです。
私もそうやってナメていたクチですから、不合格になったんです。
実際は、想像しているよりも難易度は高くて、大学生の頃に約1年ほど時間を投じて、やっとこさ合格したのが本当のところ。
どうすると不合格になるか。どんなテキストや問題集を使えばいいか。問題集の使い方。スマホをどうやって
社労士試験対策に活用するか、などなど。学生の頃の視点で書いています。
社労士試験というと、社会人の受験者が多いですから、学生の人の経験談が少ないんですよね。だから、私の経験が学生の人に役立つんじゃないかと思います。
とはいえ、学生の人が
社労士に興味を持つというのはやはりレアで、何らかのきっかけが無ければ出会えないでしょうね。ただ、珍しいといっても、毎年、1割弱ほどは学生の受験者がいるので、受験者の総数を5万人と仮定すると、その1割弱なら3,000人から4,000人ぐらいは学生がいます。
そういう方の役に立つならば、私の経験も使っていただきたいですね。
https://www.growthwk.com/entry/2017/02/28/121910?utm_campaign=soumu_cm_common_20190208_2
大学生が独学で
社労士試験に合格する方法: 合格率0.07%の軌跡
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【学生から好かれる職場と学生から嫌われる職場】
高校生になれば、アルバイトをする機会があり、
過去、実際に経験した方、
もしくは、今まさに働いている学生の方もいるのでは。
中には、
「学生時代はアルバイトなんてしたことないよ」
という方もいらっしゃるかもしれません。
そういう稀な方は経験が無いでしょうけれども、
学生のアルバイトというのは、
何故か、不思議と、どういう理屈なのか分かりませんが、
雑というか、荒っぽいというか、
そういう手荒い扱いを受けるんです。
若いし、体力もあるし、
少々、手荒に扱っても大丈夫だろうという感覚なのでしょうか。
それ、気持ちとしては分かりますけれども、
法令上は、学生も他の
従業員と(ほぼ)同じであって、
一定のルールの下で
労務管理しないといけないのです。
もちろん、
18歳未満は夜22時以降は働けないとか、
8時間を超えて働けないとか、
そういう学生ならではの制約は一部ありますけれども、
それ以外のところは他の
従業員と同じ。
週3日出勤で
契約したはずなのに、
実際は週5日出勤になっている。
休憩時間無しで働いている。
採用時に、1日5時間働くと決めたのに、
実際は1日3時間程度しか勤務させてもらえない。
「学生には
有給休暇が無い」と言われた。
テスト休みを取って時給を減らされた。
など、
やってはいけない
労務管理がなされてしまっている
という実情もあるようです。
何をやってはいけないかを知らないまま、
間違った対応をしてしまうこともあるでしょう。
(知らないからといって許されるものではありませんけれども)
このような
労務管理をすると、学生から好感を持たれ、
辞めていく人が減るのではないか。
一方で、
「これをやってしまってはオシマイよ」
な感じの
労務管理だと、
ザルで水をすくうように人が辞めていく。
学生から好まれる職場と嫌われる職場。
その境目はどこにあるのかについて書いたのが
『学校では教えてもらえない学生の働き方と雇い方 - 35の仕事のルール』
です。
「学生が好む職場」と「学生が嫌う職場」 その違いは何なのか。
https://www.growthwk.com/entry/2019/11/08/214715?utm_campaign=soumu_cm_common_20190208_3
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残業で悩んでいませんか?
「長時間の残業が続いている」
「
残業代の支払いが多い」
「残業が減らない」
こういう悩み、よくありますよね。
ニュースでも未払い
残業代の話題がチラホラと出てくるぐらい、残業に対する関心は高くなっています。
法律では、1日に8時間まで、1週間では40時間までしか仕事ができません。その水準を超えてしまうと、残業となり、
割増賃金が必要になります。
とはいえ、1日で8時間と固定されていると不便だと感じませんか? 1週間で40時間と固定されていると不便だと感じませんか?
毎日8時間の時間制限があると、柔軟に
勤務時間を配分できませんよね。
例えば、月曜日は6時間の勤務にする代わりに、土曜日を10時間勤務にして、平均して8時間勤務というわけにはいかない。
仕事に合わせて、ある日は
勤務時間を短く、ある日は
勤務時間を長くできれば、便利ですよね。
でも、実は、「月曜日は6時間の勤務にする代わりに、土曜日を10時間勤務にして、平均して8時間勤務なので、残業は無し」こんなことができる仕組みがあるんです。
「えっ!? そんな仕組みがあるの?」と思った方は、ぜひ『残業管理のアメと罠』を読んでみてください。
『残業管理のアメと罠』
https://www.growthwk.com/entry/2012/05/22/162343?utm_campaign=soumu_cm_common_20190208_4
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決まったことを決まった手順で処理するのは難しいものではありません。例えば、給与計算。毎月1回は給与が支給されるので、その計算作業も毎月ありますけれども、頭を悩ませるほどのものではありません。
他には、
雇用保険や
社会保険への加入手続きもちょくちょくと発生しますけれども、これも必要な書類を揃えて出すだけですから難しくない。
労務管理ではルーティンな業務があり、それらを処理するには特別な能力や知識は必要ありません。
しかし、時として、普段は遭遇しないような問題が起こります。例えば、
休憩時間を1回ではなく何回かに分けて取るのはいいのかどうか。
有給休暇を半日や時間単位で細かく分けて取ると便利なのかどうか。仕事着に着替える時間には給与は支払われるのかどうかなど。答えが1つに定まりにくい問題が
労務管理では起こります。
一例として、
Q:会社を休んだら、
社会保険料は安くなる?
Q:伊達マスクを付けて仕事をするの?
Q:休む人が多くて勤務シフトに穴が開く。対処策は?
Q:
休憩時間を分けて取ってもいいの?
Q:残業を許可制にすれば残業は減る?
Q:残業しないほど、
残業代が増える?
Q:喫煙時間は
休憩なの?
Q:
代休や
振替休日はいつまでに取ればいいの?
このような問題に対して、どのように対処するか。それについて書いたのが『仕事のハテナ 17のギモン』です。
▽ ▽ 『仕事のハテナ 17のギモン』 ▽ ▽
https://www.growthwk.com/entry/2017/05/23/132023?utm_campaign=soumu_cm_common_20190208_5
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本日のテーマ【休業手当にも最低賃金法は適用されるのかどうか。】
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
■暇だからといって従業員を休ませると給与が必要になる。
使用者、会社側の都合で社員を休ませたり、早退させると、仕事をしてもらっていない場合でも休業手当という形で給与を支払う必要があります。
例えば、週5日で契約しているのに、仕事が少ないという理由で一方的に週3日に減らす。1日6時間勤務で契約しているのに、暇だから1日4時間に減らす。
こういう場合には労働基準法26条(以下、26条)の休業手当を支払う必要があり、ノーワーク・ノーペイの原則とは違う対応になります。
労働基準法26条
使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。
他方、屋外での作業が主な仕事で、雨が降っているので作業ができない。だから休み。この場合は休業にはなりません。使用者の都合ではなく、天候が理由ですから、26条は適用されません。
休業手当が必要かどうかが問題になるのは、
1.暇だからといって従業員を帰らせてはいけない。
2.お客さんが少ないからといって出勤日を休みにしてはいけない。
という場面です。
■最低賃金を下回る休業手当でもOKなの?
26条の休業手当は、働いた場合の60%以上の額になりますが、この額が最低賃金を下回るとどうなるのかが問題です。
例えば、とある地域の最低賃金が1,000円だとして、時間給1,200円で働く人を使用者の都合で休業させた場合。
休業手当の支給率が60%だとすると、休業手当の額は1時間あたり720円。一方、最低賃金は1,000円。
この場合、休業手当の額が最低賃金を下回っていますが、これは問題ないのかどうか。
「休業手当 最低賃金」というワードで検索したところ、「これだ」と思える検索結果が無く、悩んでしまいました。
休業手当は最低賃金を下回っても構わないのか。それとも、下回ってはいけないのか。通常の賃金とは違いますから、判断で悩むんですね。
■休業手当は賃金なのかどうか。
休業手当が賃金であるならば、最低賃金法が適用されます。しかし、賃金ではないならば、最低賃金法は適用されず、最低賃金を下回る休業手当でもOKと判断できます。
まず、賃金の定義から確認すると、最低賃金法の2条3項では、『賃金 労働基準法第十一条に規定する賃金をいう。』と書かれています。
次に、労働基準法11条(以下11条)を見ると、『賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。』と書かれています。
では、休業手当は賃金に該当するのかどうか考えてみましょう。
休業手当という名称ですから、「手当」に該当します。となると、11条の前半部分にあてはまり、この点から判断すると、休業手当は賃金と言えます。
では、休業手当は「労働の対償」なのかどうか。ここが最大の悩みどころ。
名称上、休業手当は賃金に該当します。これは先程書いたとおり。
しかし、「労働の対償」なのかどうかが判断しにくいところ。
休業しているということは、労働はしていない。ならば、労働の対償として休業手当が支払われているわけではないと解釈できる。
となると、労働の対償ではないものとして休業手当が支払われているのだから、「休業手当は賃金ではない」という判断も可能になります。
労働の対償であれば、休業手当は最低賃金の適用を受ける。
労働の対償でなければ、その適用を受けない。
では、どちらなのか。
もし、後者の解釈を採用すれば、労働者を休業させた場合、最低賃金を下回る手当を支払っても構わないと判断できます。
もし、最低賃金法の適用を受けなくても、労働時間ゼロで(最低賃金を下回るが)給与の一部が支払われます。
これは労働者にとっては悪い条件ではないでしょう。仕事以外のことに時間を使えます。買い物に行ってもいいし、食事に出かけてもいい。フィットネスクラブに行っても、日帰り温泉に行っても構わないでしょう。
例えるならば、休業手当が有給休暇に近いものになっているわけです。
だから、最低賃金を下回っても困らないだろう、という理屈もある。
条文から考えても、休業手当は、名称上は賃金であるものの、「労働の対償」とは言い切れないところがあります。
となると、休業手当は賃金ではなく「最低賃金法の適用を受けない」という解釈も間違いとは言えません。
■使用者の都合で休ませなければいい。
休業手当を支払う場面に遭遇しなければ、今回のような問題は考えなくていいのです。
早退させたら、他の日の勤務時間を延ばして調整する。
休ませる場合は、振り替えで外の日に出勤できるようにする。
雇用契約で約束した内容を履行できれば、休業手当を支払うことはありません。
契約で約束した内容を履行できないことに対して支払われるのが休業手当ですから、一方的に勤務時間を短くしたり、休みを増やさなければ、26条が適用される場面にはなりません。
https://www.soumunomori.com/casestudy/article/atc-1501/
休業手当にも最低賃金を適用か
( - 引用開始 - )
賃金が最低賃金法で定める基準を上回っているか否かは、一定範囲の賃金項目(時間外労働の賃金、精皆勤・家族手当等)を除外し、時給換算した賃金額と最賃額を比較して判断します。時間給制のパート等の場合、時給と最賃額を比較すれば足ります。1日7時間で契約したパートの場合、法律で1日当たり664円×7時間=4,494円以上の賃金支払いが保障されていることになります。
しかし、休業が実施されれば、1日の賃金総額がそれを下回るケースも想定されます。最低賃金法第4条では、「労働者の都合、または使用者の正当な理由により、所定労働時間の一部について労働しなかった場合、その時間に対応する賃金を支払わないことを妨げない」と規定しています。
労基法第26条に基づく休業手当を支払い、休業させたケースも同様です。
( - 引用終了 - )
こういう解釈もあるようですが、
最低賃金法4条4項
第一項及び第二項の規定は、労働者がその都合により所定労働時間若しくは所定労働日の労働をしなかつた場合又は使用者が正当な理由により労働者に所定労働時間若しくは所定労働日の労働をさせなかつた場合において、労働しなかつた時間又は日に対応する限度で賃金を支払わないことを妨げるものではない。
この最低賃金法4条4項は、ノーワーク・ノーペイについて書かれているように読めますし、休業手当に最低賃金法が適用されるかどうかを判断できるような回答ではないと思います。
使用者の都合で休ませる場面を作らない。これが一番の解決策です。
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メールマガジン【本では読めない労務管理のミソ】のご紹介
内容の一例・・・
『定額残業代で残業代は減らせるのか』
『15分未満の勤務時間は切り捨て?』
『4週4日以外の変形休日制度もある』
『長時間残業を減らす方法は2つある』
『管理職は週休3日が理想』
『日曜日=法定休日と思い込んではいけない』
『半日有給休暇と半日欠勤の組み合わせはダメ?』
『寸志は賃金or贈り物?』
『ケータイは仕事道具か遊び道具か』
など、その他盛りだくさんのテーマでお送りしています。
本に書いていそうなんだけど、書いていない。
そんな内容が満載。
【本では読めない労務管理のミソ】
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合格率0.07%を通り抜けた大学生。
今、私はこうやって社労士という職業で仕事をしているわけですが、子供の頃からなりたかった職業というわけではなくて、大学生の頃に遭遇したきっかけが始まりです。
子供の頃になりたい職業というと、男の子ならば、警察官やスポーツ選手、パイロットというのが良くあるもの。女の子だと、スチュワーデス(今はキャビンアテンダント)、花屋さん、ケーキ屋さん、保育園の先生とか。そういう社会的に広く認知されたものが選ばれるので、小学生や中学生が社労士になりたいなんてことはゼロではないのでしょうが、極めて稀でしょう。
私が社労士試験に合格したのは大学4年のときで、いわゆる「現役合格」です。けれども、3年の時に一度不合格になって、ヘコんだんです。「たかが社労士試験ごときにオチたのか」って。だって、簡単そうなイメージがするでしょ、社労士なんて。チョチョッと勉強すれば、スルッと合格できるだろう。そう思っている人も少なくないはず。
「よく知られている資格 = 難しい」、「あまり知られていない資格 = 難しくない」。こういう判断基準があって、社労士は後者に該当するため、難しくないだろうと思われてしまうわけです。
私もそうやってナメていたクチですから、不合格になったんです。
実際は、想像しているよりも難易度は高くて、大学生の頃に約1年ほど時間を投じて、やっとこさ合格したのが本当のところ。
どうすると不合格になるか。どんなテキストや問題集を使えばいいか。問題集の使い方。スマホをどうやって社労士試験対策に活用するか、などなど。学生の頃の視点で書いています。
社労士試験というと、社会人の受験者が多いですから、学生の人の経験談が少ないんですよね。だから、私の経験が学生の人に役立つんじゃないかと思います。
とはいえ、学生の人が社労士に興味を持つというのはやはりレアで、何らかのきっかけが無ければ出会えないでしょうね。ただ、珍しいといっても、毎年、1割弱ほどは学生の受験者がいるので、受験者の総数を5万人と仮定すると、その1割弱なら3,000人から4,000人ぐらいは学生がいます。
そういう方の役に立つならば、私の経験も使っていただきたいですね。
https://www.growthwk.com/entry/2017/02/28/121910?utm_campaign=soumu_cm_common_20190208_2
大学生が独学で社労士試験に合格する方法: 合格率0.07%の軌跡
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【学生から好かれる職場と学生から嫌われる職場】
高校生になれば、アルバイトをする機会があり、
過去、実際に経験した方、
もしくは、今まさに働いている学生の方もいるのでは。
中には、
「学生時代はアルバイトなんてしたことないよ」
という方もいらっしゃるかもしれません。
そういう稀な方は経験が無いでしょうけれども、
学生のアルバイトというのは、
何故か、不思議と、どういう理屈なのか分かりませんが、
雑というか、荒っぽいというか、
そういう手荒い扱いを受けるんです。
若いし、体力もあるし、
少々、手荒に扱っても大丈夫だろうという感覚なのでしょうか。
それ、気持ちとしては分かりますけれども、
法令上は、学生も他の従業員と(ほぼ)同じであって、
一定のルールの下で労務管理しないといけないのです。
もちろん、
18歳未満は夜22時以降は働けないとか、
8時間を超えて働けないとか、
そういう学生ならではの制約は一部ありますけれども、
それ以外のところは他の従業員と同じ。
週3日出勤で契約したはずなのに、
実際は週5日出勤になっている。
休憩時間無しで働いている。
採用時に、1日5時間働くと決めたのに、
実際は1日3時間程度しか勤務させてもらえない。
「学生には有給休暇が無い」と言われた。
テスト休みを取って時給を減らされた。
など、
やってはいけない労務管理がなされてしまっている
という実情もあるようです。
何をやってはいけないかを知らないまま、
間違った対応をしてしまうこともあるでしょう。
(知らないからといって許されるものではありませんけれども)
このような労務管理をすると、学生から好感を持たれ、
辞めていく人が減るのではないか。
一方で、
「これをやってしまってはオシマイよ」
な感じの労務管理だと、
ザルで水をすくうように人が辞めていく。
学生から好まれる職場と嫌われる職場。
その境目はどこにあるのかについて書いたのが
『学校では教えてもらえない学生の働き方と雇い方 - 35の仕事のルール』
です。
「学生が好む職場」と「学生が嫌う職場」 その違いは何なのか。
https://www.growthwk.com/entry/2019/11/08/214715?utm_campaign=soumu_cm_common_20190208_3
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残業で悩んでいませんか?
「長時間の残業が続いている」
「残業代の支払いが多い」
「残業が減らない」
こういう悩み、よくありますよね。
ニュースでも未払い残業代の話題がチラホラと出てくるぐらい、残業に対する関心は高くなっています。
法律では、1日に8時間まで、1週間では40時間までしか仕事ができません。その水準を超えてしまうと、残業となり、割増賃金が必要になります。
とはいえ、1日で8時間と固定されていると不便だと感じませんか? 1週間で40時間と固定されていると不便だと感じませんか?
毎日8時間の時間制限があると、柔軟に勤務時間を配分できませんよね。
例えば、月曜日は6時間の勤務にする代わりに、土曜日を10時間勤務にして、平均して8時間勤務というわけにはいかない。
仕事に合わせて、ある日は勤務時間を短く、ある日は勤務時間を長くできれば、便利ですよね。
でも、実は、「月曜日は6時間の勤務にする代わりに、土曜日を10時間勤務にして、平均して8時間勤務なので、残業は無し」こんなことができる仕組みがあるんです。
「えっ!? そんな仕組みがあるの?」と思った方は、ぜひ『残業管理のアメと罠』を読んでみてください。
『残業管理のアメと罠』
https://www.growthwk.com/entry/2012/05/22/162343?utm_campaign=soumu_cm_common_20190208_4
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決まったことを決まった手順で処理するのは難しいものではありません。例えば、給与計算。毎月1回は給与が支給されるので、その計算作業も毎月ありますけれども、頭を悩ませるほどのものではありません。
他には、雇用保険や社会保険への加入手続きもちょくちょくと発生しますけれども、これも必要な書類を揃えて出すだけですから難しくない。
労務管理ではルーティンな業務があり、それらを処理するには特別な能力や知識は必要ありません。
しかし、時として、普段は遭遇しないような問題が起こります。例えば、休憩時間を1回ではなく何回かに分けて取るのはいいのかどうか。有給休暇を半日や時間単位で細かく分けて取ると便利なのかどうか。仕事着に着替える時間には給与は支払われるのかどうかなど。答えが1つに定まりにくい問題が労務管理では起こります。
一例として、
Q:会社を休んだら、社会保険料は安くなる?
Q:伊達マスクを付けて仕事をするの?
Q:休む人が多くて勤務シフトに穴が開く。対処策は?
Q:休憩時間を分けて取ってもいいの?
Q:残業を許可制にすれば残業は減る?
Q:残業しないほど、残業代が増える?
Q:喫煙時間は休憩なの?
Q:代休や振替休日はいつまでに取ればいいの?
このような問題に対して、どのように対処するか。それについて書いたのが『仕事のハテナ 17のギモン』です。
▽ ▽ 『仕事のハテナ 17のギモン』 ▽ ▽
https://www.growthwk.com/entry/2017/05/23/132023?utm_campaign=soumu_cm_common_20190208_5
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