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【労働衛生教育利用可】科学と科学的非科学との違い

 こんにちは、産業医・労働衛生コンサルタントの朝長健太です。
 産業医として化学工場、営業事務所、IT企業、電力会社、小売企業等で勤務し、厚生労働省において労働行政に携わり、臨床医として治療を行った複数の健康管理の視点で情報発信をしております。多くの企業様に労働衛生法、従業員の健康、会社の利益を守るお手伝いが出来ればと、新ブランド産業医EX(エキスパート)を立ち上げさせて頂きました。
https://www.sangyouiexpert.com/
 さらに、文末のように令和元日(5月1日)に、「令和の働き方 部下がいる全ての人のための 働き方改革を資産形成につなげる方法」を出版し、今まで高価であった産業医が持つ情報を、お手頃な価格にすることができました。
 今回は、「【労働衛生教育利用可】科学と科学的非科学との違い」について作成しました。
 労働衛生の取組を行うことで、従業員に培われる「技術」「経験」「人間関係」等の財産を、企業が安定して享受するためにご活用ください。
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【労働衛生教育利用可】科学と科学的非科学との違い
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 実務では科学的という表現が多く登場しますが、科学を意味しているものと、非科学を意味しているものがあります。辞書では、『一定の目的・方法のもとに種々の事象を研究する認識活動。また、その成果としての体系的知識。研究対象または研究方法のうえで、自然科学・社会科学・人文科学などに分類される。』と示されていますが、健康管理で必要な科学の観点で整理します。
 
◎科学の2軸
 健康管理に関する「科学研究の認識活動及びその結果の体系的知識」には、物理や化学に代表される法則性の軸と、疫学研究やデータ解析に代表される観察性の軸に分けられます。
 健康管理においては、解剖学や薬学等が主に法則性の軸であり、それらに基づき仮説を立て、コホートの中で前向き又は後追いで実行し観察することで、データを整理します。原則、95%信頼区間の中に納まる手法が合理的として実務で活用されています。
 さらに、リスクの観点では、法則性の中で因果関係が認められているハザードについて検討を行い、ハザードとの接触が、接触していない人と比べて健康障害発生確率を2倍以上にすると認められた場合、そのハザードは必ず避けなければならないものと判断されます。
 厳密には、法則性と観察性の2軸が、科学研究の認識活動及びその結果の体系的知識であり、95%信頼区間や確率2倍は、人文学的な感性や良識といった非科学によって定められています。しかし、体系の根幹は法則性と観察性に基づくので、科学と人文学が混在した医学や労働安全衛生は原則科学として扱われます。

◎健康管理の実務で認められる科学的非科学
 健康管理の実務で科学的科学と科学的非科学を区別するに当たって、重要なポイントは、実態の全体像を総合的に評価しているか否かにあります。自分の都合の良い事象だけを羅列するという『人為的介入』をすることは、自身の感性に基づき事実の取捨選択を行っているため、実態に基づきはしますが、科学として扱うことはできません。
 例えば、Aという菌に感染した場合、半数程度の人に発熱等の症状が出て、1割弱が集中治療等を要し、2%弱が致死的になるとします。この場合、自身の都合の良い事象だけを羅列する科学的非科学では、次の様に全く反対の結果になります。

・Aという菌に大衆が過度に安心することで、利益が見込める者である者のであれば、「Aという菌に感染してもほとんどは無症状です。安心してください。」と発言し広めることで、自身の利益が向上します。
・Aという菌に大衆が過度に不安になることで、利益が見込める者であれば、「Aという菌に感染して、多くの方が集中治療を要し、亡くなった方もたくさんいます。徹底的な感染予防を行ってください。」と発言し広めることで、自身の利益が向上します。

 どちらも事実に基づいていますが、自分に都合の悪い事象を無視した「人為的に加工された情報」になっています。これが、科学的非科学といえる表現になります。また、類似事例として、「都合の良い結果は科学的非科学の成果、都合の悪い結果と科学的非科学は関係ない」という後出しで情報操作するものもあります。
 健康管理において、科学的非科学は身体的・精神的・社会的健康を破壊し、科学に基づき整理された体系も破壊します。企業においては外部からもたらされた科学的非科学で売り上げが下がることは避ける必要があるため、「科学研究の認識活動及びその結果の体系的知識」について適切なアプローチが行える専門家が必要になります。

◎実務について
 科学的非科学についてまず必要なのは、その存在を認識しておくことです。科学的非科学を科学と勘違いすると、業務が滞ることや、事故が発生した際に取り返しがつかなくなります。さらに、科学的非科学により発生した不利益が、科学により発生した不利益と勘違いすると、利益を生み出す科学に基づいた手法を否定し、より事態が悪化してしまいます。
科学的非科学とフェイクニュースを混同することも危険です、科学的非科学とは都合の良い事実を人為的に収集しただけであり、フェイクニュースは事実と異なる情報を報道することです。科学的非科学の方が事実に基づくものであり、悪意が存在しない分、未熟な暴力となりより危険といえます。
 医療や働く人の健康管理の場においては、科学的非科学の影響で健康を害したり命を落としたりした人を多く認めました。こういった不幸を企業内で発生させることが無いように、『法則性と観察性に基づく認識活動及び体系的知識』という科学に基づき、良好事例と不良事例の双方を考慮に入れ、適切な対応を行ってください。

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令和の働き方 部下がいる全ての人のための 働き方改革を資産形成につなげる方法
http://miraipub.jp/books/%E3%80%8C%E4%BB%A4%E5%92%8C%E3%80%8D%E3%81%AE%E5%83%8D%E3%81%8D%E6%96%B9-%E9%83%A8%E4%B8%8B%E3%81%8C%E3%81%84%E3%82%8B%E5%85%A8%E3%81%A6%E3%81%AE%E4%BA%BA%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE-%E5%83%8D/

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