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【Q&A】風邪程度で労災認定や民事訴訟等になる場合について

 こんにちは、産業医・労働衛生コンサルタントの朝長健太です。
 産業医として化学工場、営業事務所、IT企業、電力会社、小売企業等で勤務し、厚生労働省において労働行政に携わり、臨床医として治療を行った複数の健康管理の視点で情報発信をしております。多くの企業様に労働衛生法、従業員の健康、会社の利益を守るお手伝いが出来ればと、新ブランド産業医EX(エキスパート)を立ち上げさせて頂きました。
https://www.sangyouiexpert.com/
 さらに、文末のように令和元日(5月1日)に、「令和の働き方 部下がいる全ての人のための 働き方改革を資産形成につなげる方法」を出版し、今まで高価であった産業医が持つ情報を、お手頃な価格にすることができました。
 今回は、「【Q&A】風邪程度で労災認定や民事訴訟等になる場合について」について作成しました。
 労働衛生の取組を行うことで、従業員に培われる「技術」「経験」「人間関係」等の財産を、企業が安定して享受するためにご活用ください。
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【Q&A】風邪程度で労災認定や民事訴訟等になる場合について
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「労災とそこから派生する労使間の民事訴訟を避けるために」を投稿いたしましたが、大変なご反響とご意見をいただきました。
https://www.soumunomori.com/column/article/atc-174805/
 頂いたご意見を元に、以下の様にQ&Aを作成しました。ご参考いただければと思います。
 健康リスク顕在化後の溝さらいに追われることなく、前向きな対応に努めてください。

Q:基補発0428第1号「新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱いについて」で、感染症に関する労災認定基準は、従来からの考え方に基づくので、新型コロナウイルス感染症に限らないこと分かったが、風邪程度で労災申請が多発するとは考えにくい。想定される場合について教えて欲しい。
A:ご指摘のように、風邪症状だけで労災申請が多発するとは考えにくいです。しかし、高齢者や基礎疾患を持っている従業員(3ヵ月以上、8時間勤務で月20日働いていたとする)が、風邪の罹患から肺炎や基礎疾患の増悪を引き起こし、死亡災害が認められた場合は、少なくとも次の遺族補償一時金等が遺族に支払われ、年金等が適用される場合はそれ以上が支払われます。金額を鑑みるに申請がされるものと十分に考えられます。
 なお、補償給付金等を受け取る権利は、従業員死亡日の翌日から起算して5年存続するので、新型コロナウイルスに限らず、過去に事業所で感染したインフルエンザや感冒等を起因として亡くなったおそれがある従業員の遺族が申請してくる可能性もあります。日頃から適切な衛生管理の取り組みと記録の保存をしておきましょう。

遺族補償一時金等(被災労働者の死亡当時遺族補償年金を受ける遺族がいない場合)
【前提】
給付基礎日額の1,000日分
・受給者は、配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹のうち最優先順位者
遺族補償一時金に加え、遺族特別支給金葬祭料等が支給
給付基礎日額
給付基礎日額は、労働基準法第12条でいう平均賃金に相当する額とされる。
そこで、令和元年度地域別最低賃金で最低の790円を元に計算する(3ヵ月の暦日を92日とする)
790(円)×8(時)×60(日)/92(日)=4,122(円)(端数切り上げ)
遺族補償一時金、遺族特別支給金(300万円)、葬祭料等(給付基礎日額×30日+31.5万円)の金額】
4,122(円)×1,000(日)+3,000,000(円)+〔4,122(円)×30(日)+315,000(円)〕=7,560,660(円)
【参考】
給付基礎日額が、最高限度額と同額の25,492円であった場合の遺族補償一時金
25,492(円)×1,000(日)+3,000,000(円)+25,492(円)×60(日)=30,021,520(円)

Q:労災認定されたからといって、風邪程度の対策で違法性を指摘され、民事訴訟等に波及するとは考えにくいし、裁判でも風邪対策の不備程度で損害賠償を認めないと思う。もし、民事訴訟等になった際は、どのようなことが想定されるか。
A:労災認定は憲法第27条の労働の義務を果たした結果の不利益について、政府が管掌する補償です。民事訴訟は企業が憲法第31条に示された生存権侵害の禁止を破ったことに起因し、民法第415条の不作為(安全配慮義務違反)による損害賠償責任が議論されます。従って、労災認定された後に、民事訴訟に波及する可能性は十分にあります。
 さらに、実務的な観点として、労災補償一時金等で弁護士費用等を捻出することができるので、それ以上の損害賠償が得られる見込みがある場合は、民事訴訟に波及する可能性は非常に高くなります。その他、高額の損害賠償が見込まれず裁判に至らない場合でも、裁判外紛争解決手続きとして、安全配慮義務違反の確認及びそれに基づく仲裁は、定型書式を作成した弁護士や特定社労士が数万~数十万円程度で請け負う可能性は十分にあります。
 従って、民事訴訟等で安全配慮義務違反の有無が議論され、そこで企業側の不作為が認められた場合は、負ける可能性が高いといえます。想定される具体的事項としては、憲法27条第2項に係る労働安全衛生法労働基準法、障害者の雇用の促進等に関する法律等(以下「労働関係法」という。)の義務について、法益剥奪力の強い「罰則付き義務」「罰則なし義務」「努力義務」(努力義務等の遵守の仕方については、他のコラムでの説明していますが、より詳細をお知りになりたい方は、弊社にお問い合わせ下さい。)の順で、遵守の有無が確認されると考えられます。
 なお、新型コロナウイルスに関する『業種別ガイドライン』については、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき作成されているものであり、職業別ガイドラインを遵守をしていることと、労働関係法を遵守することは全く別になりますので注意が必要です。

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令和の働き方 部下がいる全ての人のための 働き方改革を資産形成につなげる方法
http://miraipub.jp/books/%E3%80%8C%E4%BB%A4%E5%92%8C%E3%80%8D%E3%81%AE%E5%83%8D%E3%81%8D%E6%96%B9-%E9%83%A8%E4%B8%8B%E3%81%8C%E3%81%84%E3%82%8B%E5%85%A8%E3%81%A6%E3%81%AE%E4%BA%BA%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE-%E5%83%8D/

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