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【注意喚起】うがい議論の衝撃・消毒の基礎と安全配慮

 こんにちは、産業医・労働衛生コンサルタントの朝長健太です。
 産業医として化学工場、営業事務所、IT企業、電力会社、小売企業等で勤務し、厚生労働省において労働行政に携わり、臨床医として治療を行った複数の健康管理の視点で情報発信をしております。多くの企業様に労働衛生法、従業員の健康、会社の利益を守るお手伝いが出来ればと、新ブランド産業医EX(エキスパート)を立ち上げさせて頂きました。
https://www.sangyouiexpert.com/
 さらに、文末のように令和元日(5月1日)に、「令和の働き方 部下がいる全ての人のための 働き方改革を資産形成につなげる方法」を出版し、今まで高価であった産業医が持つ情報を、お手頃な価格にすることができました。
 今回は、「【注意喚起】うがい議論の衝撃・消毒の基礎と安全配慮」について作成しました。
 労働衛生の取組を行うことで、従業員に培われる「技術」「経験」「人間関係」等の財産を、企業が安定して享受するためにご活用ください。
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【注意喚起】うがい議論の衝撃・消毒の基礎と安全配慮
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 もはや令和にも関わらず、うがいの意味について、一部議論が発生しており、衝撃を受けております。
 今回は、うがいの意味について、100年以上の歴史とエビデンスを持つ基礎医学に基づいた説明をさせていただきます。

◎うがいは消毒に基づく予防対策の一環であり、無菌にすることではない
 消毒とは、人体に有害な病原微生物(以下「菌等」という。)や物質等を除去または無害化することです。具体的には菌等を殺すこと、または菌等の数や能力を減退させ病原性をなくすことです。決して、無菌にすることではありません。
 従って、うがいは菌等の数を減らすことで、消毒に基づく予防対策の効果が期待できます。医学事例の場合、解放骨折や腸管穿孔等、本来菌等が存在しない臓器が汚染された場合に、手術において徹底的に洗浄を行います。これは、外科系の医師であれば基本中の基本になります。
 議論の中では、うがいに全く予防効果が無いと断じている方がいますが、それは誤りです。消毒の観点から大きな意義があります。
 また、イソジン(ポピドンヨード)についても、ヨウ素のハロゲンが持つ化学特性により、様々な菌等を殺菌することで減らし、消毒する効果があります。

◎うがい用の溶液は浸透圧調整を行わなければなりません
 議論の中には、うがいをすると粘膜に傷がつきそこから菌等が繁殖すると主張される方がいます。
 細胞の内と外は水で満たされていますが、その水は真水ではなく、様々な物質が溶解した水溶液になっています。そして、水溶液について細胞膜の内と外で濃度が異なる場合は、細胞膜を水(真水)が移動することで、内外の濃度が同じになっていきます。
 この水が移動することを力がかかっていると捉えて、浸透圧(人の体液の浸透圧は約290mOsm/kgH2O)と呼びます。
 日常生活では、風呂の水が指の皮膚の中に移動し、指先がしわしわになるや、プールの水が鼻に入り、鼻神経の中に移動することで神経が励起され、強烈な痛みを感じるというものになります。
 従って、うがい用の液体を真水で行うことは、粘膜の中に水が移動し、柔らかい粘膜細胞を破壊してしまいます。うがいは生理食塩水等で行うこととし、どうしても真水しかない場合は、粘膜の表面だけを極めて軽くうがいすることが大事です。
 過去に、麻酔科として参加した手術で、治療上必要に迫られ真水で腹腔内を満たしたことがありましたが、血圧が上昇する等の痛み刺激症状が強く出たことを覚えています。なかなかそういった機会はありませんが、外科系の医師であれば基本中の基本になります。
 また、浸透圧調整を行わずにイソジン(ポピドンヨード)を利用することも、粘膜を傷つけ、うがい後に小さな傷から菌等が増殖しやすくなります。

事業者に対する注意点
 「感染予防効果あり!!では、来年度以降の集団の健康管理をどうするか」で示しましたように、予防に効果はあります。
https://www.soumunomori.com/column/article/atc-174562/
 一方で、経済を崩壊させるほどの膨大なコストを費やした予防対策を行ったにもかかわらず、感染をゼロにすることはできませんでした。
 予防対策については、事業所の中では衛生委員会で調査審議し、リスクアセスメントで対策の優先順位をつけ、低コストの予防対策を組み合わせることからはじめて、目標とする安全配慮を達成することが重要です。
 ファントホッフは自身の法則「希薄溶液の浸透圧は絶対温度と溶液のモル濃度に比例する」の業績により、1901年に第1回ノーベル化学賞を受賞しています。その知見を活かした浸透圧に基づく医療行為は大きな成果をもたらしています。今回のうがいの議論は、100年以上も前の科学法則を無視した議論が横行しており、このような情報を元に事業所内の健康管理対策をすると、安全配慮義務違反等を問われる可能性は十分にあります。特に、真水で複数回のうがいを指導(イソジン利用の有無を問わず)し、そこから感染症の悪化を引き起こし、因果関係が認められた場合は、傷害に該当するおそれもあります。

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令和の働き方 部下がいる全ての人のための 働き方改革を資産形成につなげる方法
http://miraipub.jp/books/%E3%80%8C%E4%BB%A4%E5%92%8C%E3%80%8D%E3%81%AE%E5%83%8D%E3%81%8D%E6%96%B9-%E9%83%A8%E4%B8%8B%E3%81%8C%E3%81%84%E3%82%8B%E5%85%A8%E3%81%A6%E3%81%AE%E4%BA%BA%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE-%E5%83%8D/

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