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「無期転換をめぐる裁判の動向」について

私はもう立派な「高齢者」ですが、「高齢者」呼ばわりされることには抵抗があります。
だから、物を購入しようとするとき女店員から“「シニア」の方にはこちらがお勧めです”
と言われると「高齢者」と言われるより気分が良くなり、ついつい買ってしまいます。
それは「シニア」と「高齢者」という言葉の響きには大きな違いがあるからでしょう。
カタカナのシニアは、高齢者という意味を持ちつつも、ジュニア(年下)の反対語として
年上の意味で使われることもあり、余りネガティブな印象はないように思えます。
それに対し、「高齢者」と言われると隠居老人のイメージが強く、聞いて余り心地よくはありません。
実際に「高齢者」と見られると普通の商取引でもスムーズには行かないのです。
薬屋で風邪薬を購入する際に「この薬の服用は医師に相談するように」と言われたり、
クレカで支払うとすると「このカードの使用には暗証番号が必要ですが、大丈夫ですか?」と
言われたり、まるで認知症老人扱いをされてしまいます。

現在は65歳以上を高齢者と呼びますが、65歳になったからといって急激に老け込むわけでは
ないし健康状態には個人差も大きく、同じ65歳でも「まだ若い」と見られる人もいれば、
「もう若くない」と見られる人もいます。
でも65歳を超えると一律で高齢者扱いをされてしまうのが社会の現実です。

60歳乃至65歳での定年退職はサラリーマンにとって、人生の一大事です。
今までは長期雇用人事制度の下、長年会社に勤めていれば多くの人が役職につき責任あるポストを
任せられていました。中には出世して「今の会社があるのは俺のおかげだ」と勘違いする人も
いたほどです。しかし60歳で再雇用されて、65歳で退職を迎えると、その翌日からはもはや出勤も
仕事もなくなるのです。
そして直ぐに「会社は自分がいなくても何も問題がないことに気づく」のです。
誰が抜けても替わりがいるのが会社。一人の社員の退職で「会社が業務を遂行出来なくなる」
ことは、普通ありません。でも、逆にサラリーマンにとっては、会社を退職したらやるべき業務が
無くなってしまいます。「無職」になってしまうのです。いくら出世して偉くなった人でも無職
となります。だから、「定年退職」のときは、サラリーマンなら多かれ少なかれ誰もが味わう
解放感と喪失感、そして「サラリーマンの悲哀」を感じるときなのです。

定年になる前に、年齢により身分が変わる制度があります。
主に大企業で採用されている「役職定年制度」です。
大雑把に言えば、「一定の年齢になると、能力にかかわらず、管理職の職務を解かれる制度」
とも言えるでしょうか。大企業は、毎年大量の新入社員を採用するところが多く、どんどんポストを
回していかないと、組織がうまく機能しません。また、役職定年によって世代交代を行うことで、
組織や人材の硬直化を防ぐ目的もあります。ポストの数は限られており、同じ人がずっとその地位に
居続けると、下の人が昇進できなくなってしまいます。大企業を中心に役職定年採用する企業が
少なくないゆえんです。
各社によって実際の制度は様々ですが、例えば「53歳までに課長以上にならない場合」、
その次は「57歳までに部長以上にならない場合」などに管理職から外される例があります。
役職定年に達すると、会社は「これまでのキャリアを活かして、引続き活躍して」と耳触りの
いい言葉でポスト離任の辞令を出しますが、移動後の仕事は閑職となり、部下はおらず給料も
下がる場合が多いようです。
未だ役職定年まで年数がある間は、定年候補者も「自分はもっと出世するだろう」と敢えて
思い込み、不都合な現実から目を背けようとします。
でも実際には多くの社員が、自らの目論見通りには出世できず役職定年が現実となって
落胆することになるようです。

現在、企業は人手不足で、役職定年を見直してシニア人材の積極的な活用に舵を切っている
ところも少なくありません。また、企業は原則的に65歳まで雇用する義務があります。
そうなると、55歳位で役職定年になったとしても、未だ会社人生は約10年も残っています。
その間、愚痴をこぼしながらネガティブに会社人生を送るより、自分の強みを見つけてそれを
活かして前向きに働く方が良いに決まっています。長い間働いてきたのですから、絶対に
何らかの強みを持っているはずです。
役職定年を意識するようになったら、「役職定年の日をただ漫然と待ってしまうのか、
それとも知識や技術の再習得などに向かって動き出すか」。
それがサラリーマン人生の終盤戦を大きく左右することになるかもしれません。

前回の「「男性育休」制度の改正案」についての話は、如何でしたでしょうか。
今回は、「無期転換をめぐる裁判の動向」についての話をします。

──────────◆ 目 次 ◆──────────────
〇無期転換をめぐる裁判の動向
日本通運で、有期雇用で働いていた男性(40)が、契約期間が通算5年を過ぎ、無期契約
への転換を希望できる日の直前に雇用を打切られたのは不当だと訴えた訴訟で、横浜地裁が
訴えを棄却する判決を言い渡しました。
男性は2012年9月から同社に派遣社員として勤務。労働契約法の改正で5年ルールが導入
された後の13年7月に、1年間の契約社員として日通に直接雇われ、4回の契約更新を
重ねましたが、18年6月末に契約を打ち切られました。判決では、雇用契約書
「更新限度が18年6月30日までの5年」と明記されていると指摘。男性が「契約内容を
十分認識した上で契約を締結した」と認定し、改正労契法の「5年ルール」については、
「5年を超えて労働者雇用する意図がない場合に、当初から更新上限を定めることが
直ちに違法にはならない」と指摘しました。男性は控訴する方針ということです。
無期転換については、無期転換申込権が発生する5年の直前での雇止めに関するトラブルが増加。
裁判も相次いでいて、2月の山口地裁判決(山口県立病院機構)、3月の福岡地裁判決(博報堂)
などでは、不更新条項の効果を否定して「雇止め法理」を踏まえて雇い止めを無効とする判決が
出ています。

こうしたなか、厚生労働省では、「無期転換ルールに対応するための取組支援ワークブック」
を公開しました。このワークブックは、「企業が無期転換ルールに対応するにあたって問題となる
ポイントを中心に、ワーク形式の演習を交えながら解説したもの」で、平成30年の「多様な正社員
及び無期転換ルールに係るモデル就業規則と解説(全業種版)」とともに使用して、無期転換ルール
に適法に対応した社内制度を整備してほしいというものです。
巻末には8ステップからなるワークシートが掲載されており、これを活用することで、無期転換ルール
に対応するための手順を実践することができるとしています。
また、厚労省では3月24日から、無期転換ルールの見直しを主要テーマのひとつとする検討会も
始まりました。現行法下での適正な運用を心がけたいのはもちろんですが、
今後の制度の見直しへの動きも気になるところです。

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