こんにちは。
社会保険労務士の田中です。
暑いですね。この時季になるといつも思い出します。
平成1桁台の頃は、
算定手続きのため暑い中、
社会保険事務所や
健康保険組合をまわっていました。
社会保険労務士にとっての「夏の風物詩」の感もありました。
今は郵送や電子申請が一般的となり、様変わりしました。
さて、今回は
時間外労働の考え方です。
例えば…
始業時刻 午前9時 終業時刻 午後6時 の会社です。
午前8時から1時間の
時間外労働がありました。
始業時刻前ですから、いわゆる「
早出残業」ですね。
そして午後6時の終業時刻に定時退勤しました。
この場合の
時間外労働をどの時間帯とするかについて
次の考え方があります。
因みにどちらの考え方でも
時間外労働は1時間なので、
割増賃金の額は変わりません。
1 午前8時から午前9時の1時間を
時間外労働とする。
「
所定労働時間基準説」とします。
『ある日の
労働時間が
法定労働時間を超えた場合には、
時間外労働として規制される
労働時間の部分は、
所定労働時間につけ加えられた
労働時間における
法定労働時間を超える部分である。』
(菅野和夫 労働法 第12版 P.502)
こちらは
就業時間から外れた時間帯を
時間外労働にする考え方です。
2 午後5時から午後6時の1時間を
時間外労働とする。
「実
労働時間基準説」とします。
『労基法の強行法規制からすれば、実
労働時間数によって
客観的に決定されるとする実
労働時間基準説が理論的に適当』
(水町勇一郎 詳解 労働法 P.672)
こちらは仕事を開始してから8時間を超えた部分を
時間外労働にする考え方です。
【 実務上の取り扱い 】
1時間分の割増手当が支払われていればどちらでも構いませんが、
実務上は1の「
所定労働時間基準説」が馴染みやすいかと考えます。
「
所定労働時間基準説」には、
「当事者意思との整合性」と「実務上の便宜」があると、
「実
労働時間基準説」の水町教授も指摘しています。
「当事者意思との整合性」とは、本人にとっては、
始業時刻前の午前8時から午前9時が「
早出残業」という
実感がある、という事を指しているのでしょう。
「実務上の便宜」とは、給与計算や
時間外労働時間の集計を
するなどの実務面において面倒ではない、という事でしょう。
当所で顧客の給与計算を行う場合は、
「
所定労働時間基準説」によって処理しています。
一方、「実
労働時間基準説」は理論的ですっきりしています。
例えば、先の例で午前8時に出勤したが午後5時に早退した、
という場合を考えると、実
労働時間は8時間です。
「
所定労働時間説」を貫けば1時間の
時間外労働が発生、
「実
労働時間基準説」では
時間外労働は発生しません。
おそらく給与計算の実務ではこのようなケースには
「実
労働時間基準説」をあてはめる事でしょう。
そうすると結果として2つの説を使い分けている、
ということになります。
これが事態を複雑にしていたかもしれません。
実務の「
所定労働時間基準説」
理論の「実
労働時間基準説」 とも言えます。
今回も最後までお読み頂きありがとうございます。(2021.07.29)
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暑いですね。この時季になるといつも思い出します。
平成1桁台の頃は、算定手続きのため暑い中、
社会保険事務所や健康保険組合をまわっていました。
社会保険労務士にとっての「夏の風物詩」の感もありました。
今は郵送や電子申請が一般的となり、様変わりしました。
さて、今回は時間外労働の考え方です。
例えば…
始業時刻 午前9時 終業時刻 午後6時 の会社です。
午前8時から1時間の時間外労働がありました。
始業時刻前ですから、いわゆる「早出残業」ですね。
そして午後6時の終業時刻に定時退勤しました。
この場合の時間外労働をどの時間帯とするかについて
次の考え方があります。
因みにどちらの考え方でも時間外労働は1時間なので、
割増賃金の額は変わりません。
1 午前8時から午前9時の1時間を時間外労働とする。
「所定労働時間基準説」とします。
『ある日の労働時間が法定労働時間を超えた場合には、
時間外労働として規制される労働時間の部分は、
所定労働時間につけ加えられた労働時間における
法定労働時間を超える部分である。』
(菅野和夫 労働法 第12版 P.502)
こちらは就業時間から外れた時間帯を
時間外労働にする考え方です。
2 午後5時から午後6時の1時間を時間外労働とする。
「実労働時間基準説」とします。
『労基法の強行法規制からすれば、実労働時間数によって
客観的に決定されるとする実労働時間基準説が理論的に適当』
(水町勇一郎 詳解 労働法 P.672)
こちらは仕事を開始してから8時間を超えた部分を
時間外労働にする考え方です。
【 実務上の取り扱い 】
1時間分の割増手当が支払われていればどちらでも構いませんが、
実務上は1の「所定労働時間基準説」が馴染みやすいかと考えます。
「所定労働時間基準説」には、
「当事者意思との整合性」と「実務上の便宜」があると、
「実労働時間基準説」の水町教授も指摘しています。
「当事者意思との整合性」とは、本人にとっては、
始業時刻前の午前8時から午前9時が「早出残業」という
実感がある、という事を指しているのでしょう。
「実務上の便宜」とは、給与計算や時間外労働時間の集計を
するなどの実務面において面倒ではない、という事でしょう。
当所で顧客の給与計算を行う場合は、
「所定労働時間基準説」によって処理しています。
一方、「実労働時間基準説」は理論的ですっきりしています。
例えば、先の例で午前8時に出勤したが午後5時に早退した、
という場合を考えると、実労働時間は8時間です。
「所定労働時間説」を貫けば1時間の時間外労働が発生、
「実労働時間基準説」では時間外労働は発生しません。
おそらく給与計算の実務ではこのようなケースには
「実労働時間基準説」をあてはめる事でしょう。
そうすると結果として2つの説を使い分けている、
ということになります。
これが事態を複雑にしていたかもしれません。
実務の「所定労働時間基準説」
理論の「実労働時間基準説」 とも言えます。
今回も最後までお読み頂きありがとうございます。(2021.07.29)
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