こんにちは。
社会保険労務士の田中です。
緊急事態宣言が9月30日まで延長されましたが、
「宣言慣れ」によって感染防止対策がおろそかに
ならないように注意したいところです。
さて、皆さまの会社では、
時効や
退職によって消滅する
年次有給休暇(以下、「年休」という)を買い上げていますか?
今回は年休の買い上げについて考えてみます。
☆☆☆☆ 原則としては労基法39条に違反し、無効 ☆☆☆☆
労働基準法 第39条(
年次有給休暇)では、第1項において
「
有給休暇を与えなければならない」と定めていますので、
「年休の買い上げ」は法の趣旨に反して無効となります。
次の
通達もあります。(昭和30.11.30 基収4718)
『
年次有給休暇の買上げの予約をし、これに基づいて本条の規定により
請求し得る
年次有給休暇の日数を減じないし請求された日数を
与えないことは、本条違反である。』
はっきりと「買上げの予約」は「本条違反である」としています。
☆☆☆☆
時効や
退職で消滅する年休の取り扱い ☆☆☆☆
しかし、原則は無効でも次のように例外もあります。
「結果的に未消化の年
休日数に応じて手当を支給することは違法でない」
(菅野 労働法 12版 P.575)
なお、「買い上げ」と表現せず、「応じて手当を支給」としています。
やはり「買い上げ」として正面から認めるものでないと考えます。
また「結果的に」とあるように、初めから買い上げを意識するのではなく、
取得するように努めたができなかった結果、という事になります。
☆☆☆☆ 「消滅する年休」にもいろいろな種類がある ☆☆☆☆
この「消滅する年休」はいくつかの種類に分ける事ができます。
1 毎年、付与されるが取得できずに
時効で消滅する年休
2 自己都合の
退職時に取得できずに消滅する年休
3
解雇や
退職勧奨時に取得できずに消滅する年休
4 計画年休の実行日前に
退職するため消滅する年休
☆☆☆☆ 「消滅する年休」の種類によって買い上げをする ☆☆☆☆
この種類ごとに買い上げの可否を検討する考え方もあります。
原則は買い上げを無効としますが、上記で言えば3と4の
消滅年休については買い上げを次のように法違反ではないとしています。
「
解雇、
退職勧奨など
使用者の意向により
退職に至ったために
労働者が年休を消化できなかった場合、および、計画年休で
予め設定されていた年休を年
休日前に
退職したために
取得できなかった場合については、これらの未消化年休に代えて
金銭を支給したとしても、
労働者の年休取得を抑制する効果をもたない
ものと考えられるため、労基法に違反するものではないと解されよう。」
(水町 詳解労働法 P.747)
この考え方に基づくと1と2の消滅年休は買い上げをせずに、
取得することが原則ということになるでしょう。
☆☆☆☆ 実務での対応 ☆☆☆☆
これらを踏まえて実務ではどうすれば良いでしょうか?
一般的には「消滅する年休」は種類分けをしないで、
一括して「買い上げる」または「買い上げない」という
運用がなされている事もあると思います。
ここをもう少し丁寧に考えるならば、先の分類の
3と4に加えて「2 自己都合の
退職時に消滅する年休」は、
買い上げをしても良いかと考えます。
もちろん、自己都合の
退職日は自分自身で調整できるので、
退職日までに年休を100%取得することが望ましいでしょう。
しかし、
退職の原因として本人に帰責事由のない事情、
例えばハラスメントやトラブルがあった場合などには、
状況によっては買い上げを認めても良いでしょう。
一方、「1 毎年、付与されるが取得できず消滅する年休」は
取得を原則として買い上げを認めないとした上で、
それでも未消化分がある場合は、次の処理をする方法もあります。
・育児・介護などの目的に限って繰り越し(積立)を認める。
・通常の
賃金ではなく、その何割かで買い上げる。
種類ごとにまとめてみます。
1 毎年、付与されるが取得できずに
時効で消滅する年休
→ 取得が原則であり、買い上げはしない。
2 自己都合の
退職時に取得できずに消滅する年休
→ 取得が原則だが、状況によっては買い上げも良しとする。
3
解雇や
退職勧奨時に取得できずに消滅する年休
4 計画年休の実行日前に
退職するため消滅する年休
→ 買い上げも良しとする。
今回も最後までお読み頂きありがとうございます。(2021.09.16)
==============================================
社会保険労務士 田中事務所 プライバシーマーク取得 オンライン対応可能
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こんにちは。社会保険労務士の田中です。
緊急事態宣言が9月30日まで延長されましたが、
「宣言慣れ」によって感染防止対策がおろそかに
ならないように注意したいところです。
さて、皆さまの会社では、時効や退職によって消滅する
年次有給休暇(以下、「年休」という)を買い上げていますか?
今回は年休の買い上げについて考えてみます。
☆☆☆☆ 原則としては労基法39条に違反し、無効 ☆☆☆☆
労働基準法 第39条(年次有給休暇)では、第1項において
「有給休暇を与えなければならない」と定めていますので、
「年休の買い上げ」は法の趣旨に反して無効となります。
次の通達もあります。(昭和30.11.30 基収4718)
『年次有給休暇の買上げの予約をし、これに基づいて本条の規定により
請求し得る年次有給休暇の日数を減じないし請求された日数を
与えないことは、本条違反である。』
はっきりと「買上げの予約」は「本条違反である」としています。
☆☆☆☆ 時効や退職で消滅する年休の取り扱い ☆☆☆☆
しかし、原則は無効でも次のように例外もあります。
「結果的に未消化の年休日数に応じて手当を支給することは違法でない」
(菅野 労働法 12版 P.575)
なお、「買い上げ」と表現せず、「応じて手当を支給」としています。
やはり「買い上げ」として正面から認めるものでないと考えます。
また「結果的に」とあるように、初めから買い上げを意識するのではなく、
取得するように努めたができなかった結果、という事になります。
☆☆☆☆ 「消滅する年休」にもいろいろな種類がある ☆☆☆☆
この「消滅する年休」はいくつかの種類に分ける事ができます。
1 毎年、付与されるが取得できずに時効で消滅する年休
2 自己都合の退職時に取得できずに消滅する年休
3 解雇や退職勧奨時に取得できずに消滅する年休
4 計画年休の実行日前に退職するため消滅する年休
☆☆☆☆ 「消滅する年休」の種類によって買い上げをする ☆☆☆☆
この種類ごとに買い上げの可否を検討する考え方もあります。
原則は買い上げを無効としますが、上記で言えば3と4の
消滅年休については買い上げを次のように法違反ではないとしています。
「解雇、退職勧奨など使用者の意向により退職に至ったために
労働者が年休を消化できなかった場合、および、計画年休で
予め設定されていた年休を年休日前に退職したために
取得できなかった場合については、これらの未消化年休に代えて
金銭を支給したとしても、労働者の年休取得を抑制する効果をもたない
ものと考えられるため、労基法に違反するものではないと解されよう。」
(水町 詳解労働法 P.747)
この考え方に基づくと1と2の消滅年休は買い上げをせずに、
取得することが原則ということになるでしょう。
☆☆☆☆ 実務での対応 ☆☆☆☆
これらを踏まえて実務ではどうすれば良いでしょうか?
一般的には「消滅する年休」は種類分けをしないで、
一括して「買い上げる」または「買い上げない」という
運用がなされている事もあると思います。
ここをもう少し丁寧に考えるならば、先の分類の
3と4に加えて「2 自己都合の退職時に消滅する年休」は、
買い上げをしても良いかと考えます。
もちろん、自己都合の退職日は自分自身で調整できるので、
退職日までに年休を100%取得することが望ましいでしょう。
しかし、退職の原因として本人に帰責事由のない事情、
例えばハラスメントやトラブルがあった場合などには、
状況によっては買い上げを認めても良いでしょう。
一方、「1 毎年、付与されるが取得できず消滅する年休」は
取得を原則として買い上げを認めないとした上で、
それでも未消化分がある場合は、次の処理をする方法もあります。
・育児・介護などの目的に限って繰り越し(積立)を認める。
・通常の賃金ではなく、その何割かで買い上げる。
種類ごとにまとめてみます。
1 毎年、付与されるが取得できずに時効で消滅する年休
→ 取得が原則であり、買い上げはしない。
2 自己都合の退職時に取得できずに消滅する年休
→ 取得が原則だが、状況によっては買い上げも良しとする。
3 解雇や退職勧奨時に取得できずに消滅する年休
4 計画年休の実行日前に退職するため消滅する年休
→ 買い上げも良しとする。
今回も最後までお読み頂きありがとうございます。(2021.09.16)
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