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【Q&A】【火蓋が切られた】労災認定後の民事訴訟

 こんにちは、産業医・労働衛生コンサルタントの朝長健太です。
 弊社が、働く人の健康管理の事業を開始して、3年以上が経過しました。
 その中で、身体的・精神的健康を優先するあまり、社会的健康がおろそかになっている事例を多数見ることになりました。
 身体的健康を優先するあまり、精神的・社会的に不健康になった社会的新型コロナウイルス禍という事例を、皆様も多く実感されたことでしょう。
 WHO憲章にあるように、健康とは、身体的・精神的・社会的に健康であることです。さらに、職域では企業と労働者の双方を健康にすることが必要です。
 休職者ゼロ・新型コロナ関連倒産ゼロを達成した労働衛生コンサルタント技術の提供に関して、『企業利益をわかりやすく向上させる新規サービス』を用意しました。
 是非、弊社を利用し、健康の向上を図ってください。
https://www.kenpomerit.com/
 さらに、文末のように令和元日(5月1日)に、「令和の働き方 部下がいる全ての人のための 働き方改革を資産形成につなげる方法」も作成してます。是非、ご覧ください。

 今回は、「【Q&A】【火蓋が切られた】労災認定後の民事訴訟」について作成しました。
 企業利益の向上という、精神的・社会的健康を向上させるために、弊社をご活用ください。
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【Q&A】【火蓋が切られた】労災認定後の民事訴訟
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【火蓋が切られた】労災とそこから派生する労使間の民事訴訟
https://www.soumunomori.com/column/article/atc-175667/
のコラムの事例(以下「本訴訟事例」という。)において、次の様に質問がありましたので、Q&A形式で回答します。

Q 事業者側は、当時のPCR検査を受ける目安は「37.5度以上の発熱が4日以上」であったと主張している。
 令和2年2月21日付け「職場における新型コロナウイルス感染症の拡大防止に向けた取り組みについて」が示され、同時に「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)(令和2年2月21日時点版)の答2)に、「37.5度以上の発熱が4日以上」と示されている。
 さらに、事業者向け以外にも、厚労省から次の様に示されており、「37.5度以上の発熱が4日以上」の文言が無くなるのは、令和2年5月8日の事務連絡からである。

◇「新型コロナウイルス感染症についての相談・受診の目安について」(令和2年2月17日各都道府県衛生主管部(局)宛厚生労働省健康局結核感染症課事務連絡)の2.帰国者・接触者相談センターに御相談いただく目安
⇒以下のいずれかに該当する方は、帰国者・接触者相談センターに御相談ください。
・ 風邪の症状や37.5度以上の発熱が4日以上続く方
(解熱剤を飲み続けなければならない方も同様です。)
・ 強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある方

◇「新型コロナウイルス感染症に関する行政検査について(依頼)」(令和2年2月17日各都道府県衛生主管部(局)宛厚生労働省健康局結核感染症課事務連絡)の1 検査対象者において、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第12条第1項及び第14条第2項に基づく届出の基準等について」 で定める(4)感染が疑われる患者の要件に該当する者や、 37.5°C以上の発熱かつ呼吸器症状を有し、入院を要する肺炎が疑われる者等の様に、37.5℃以上の発熱が基準と示されている。

 これだけ厚生労働省が、具体的に示していることから、事業者側の対応は適切で、その責任は厚労省にあるのではないか?

A 事業者が主張する「37.5度以上の発熱が4日以上」の時に、適切に取り組むという対策(以下「事業者対策」という。)については、厚生労働省の各種通達等に合致していると認められます。
 ですが、令和2年3月31日付け「新型コロナウイルス感染症の大規模な感染拡大防止に向けた職場における対応について(要請)」(以下「要請通達」という。)も発出されており、2 大規模な感染拡大防止等に向けた対策についてにおいて、「事業場の実態に即した、実行可能な感染拡大防止対策を検討いただきたいこと。」「事業場に、労働安全衛生法により、安全衛生委員会衛生委員会産業医衛生管理者安全衛生推進者、衛生推進者等が設置・選任されている場合、衛生管理の知見を持つこうした労使関係者により構成する組織を有効活用するとともに、労働衛生の担当者に対策の検討や実施への関与を求めていただきたいこと。」と示されてます。さらに、別添のチェックシートで「結果は、衛生委員会等に報告し、対策が不十分な点があれば調査審議いただき、改善に繋げてください。また、その結果について全ての労働者が確認できるようにしてください。」と示されています。
 事業者側は、事業者対策が、事業場の実態に即した、実行可能な感染防止対策であるかどうかを衛生委員会で調査審議することは、法令で定められており、少なくとも令和2年3月31日時点では、厚生労働省よりリマインドがされています。
 事業者が遵守しなければならないのは、法令であり通達等ではありません。
 本訴訟事例では、行政から派生した事業所であることから、法令に基づき危険予知及び危険回避の手段として事業者対策案を定め、衛生委員会(50人以上の場合)又は労働者の意見を聴くための機会(50人未満の場合)で調査審議等し、産業医(50人以上の場合)又は医師その他の者(50人未満の場合)の専門的意見を反映して、事業者対策を定めたと見込まれます。これを行っている場合、労働者衛生委員会等を通じて事業者対策案を明確か暗黙かは別にして、同意したといえます。労働者が同意した対策の結果について、事業者が責任を問われることは考えにくいです。
 ただし、通達等を遵守していても法令を守っていなかったとの証拠が握られてしまうと話が別になります。衛生委員会等が開催されていない場合は、労働者から同意が得られているとは言えませんし、専門家の意見が反映されていない場合は、その医学的責任は事業者が負うことになります。
 その際、裁判においては比較的証拠が得やすい「衛生員会の議事録」「産業医の勤務実態」「健康診断結果の医師意見」等が確認されることになると見込まれます。
 また、厚生労働省としての責任は、本訴訟事例のクラスター発生日が令和2年3月24日頃、要請通達の発出が令和2年3月31日であり、法令遵守について当初から示しておくべきであったかどうかが問われる可能性はゼロではないですが、法令は日頃から遵守するべきであり、定期的にその必要性を案内している厚生労働省側に、著しい責任が負わされることは考えにくいです。
 今回の事業者対策は、医学的に意味があったと言えるでしょう。ですが、裁判所は医学という自然法則を議論する場でなく、法律を議論する場所です。対策が医学的に意味があっても、対策の決定過程、改善過程等に違法性があった場合は、その点が安全配慮義務違反に問われる可能性があります。
 今回の社会的新型コロナウイルス禍においては、様々な事業者が多くの対策を行いました。その結果、肺炎で亡くなる方が大幅に減少し、年間の医療費も1.4兆円減少しました。この、素晴らしい取り組みに関して、違法性が指摘されるのはもったいないことです。安衛法令を遵守し、適切な健康管理に努めてください。

【補足】
Q 安全配慮義務は、最高裁判所の判例(昭和50年2月25日第三小法廷判決。以下「本判例」という。)により確立した概念である。今回も、事業者が法律を完璧に遵守していたとしても、司法判断で労働者遺族側が勝つことが考えられないか。

A 安全配慮義務については、ご指摘の様に最高裁判例により確立した概念です。しかし、本判例では、民法第1条第2項「権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。」の罰則なし義務が遵守されていなかったとして、損害賠償請求が認めらています。根拠法が無い状態で損害賠償が認められた訳ではありません。
 本訴訟事例においては、適切に法令遵守がされていれば、明確か暗黙かは別にして、労働者の同意が得られ、専門家の評価を受けた対策を実行しているといえます。従って、司法判断のみで労働者遺族側が勝つことは考えにくいです。

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令和の働き方 部下がいる全ての人のための 働き方改革を資産形成につなげる方法
http://miraipub.jp/books/%E3%80%8C%E4%BB%A4%E5%92%8C%E3%80%8D%E3%81%AE%E5%83%8D%E3%81%8D%E6%96%B9-%E9%83%A8%E4%B8%8B%E3%81%8C%E3%81%84%E3%82%8B%E5%85%A8%E3%81%A6%E3%81%AE%E4%BA%BA%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE-%E5%83%8D/

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