こんにちは。社会保険労務士の田中です。
当所では「社労士診断認証制度」を推奨しています。
(当所のHP該当ページ↓)
https://www.tanakajimusho.biz/shindan
「社労士診断認証制度」は「全国社労士会連合会」が認証しており、
会社が「ホワイト企業」であることの証明となります。
「社労士診断認証制度」は次の3タイプがあります。
(1)職場環境改善宣言企業
(2)経営労務診断実施企業
(3)経営労務診断適合企業
認証を得るためには、それぞれ次のシートにある
要件を満たす必要があります。
(1)は「職場環境改善宣言確認シート」(20項目)
(2)と(3)は「経営労務診断確認シート」(51項目)
本コラムではこれら合計71項目について、
認証を受けるための範囲にとどまらず、
実務上の留意点を含めて解説しています。
第10回目の解説は「職場環境改善宣言確認シート」
『4 賃金
10 勤務時間のすべてについて、正しく支給している 』 です。
☆☆☆☆ 問題の多いところ。時間外労働の明示・黙示による指示 ☆☆☆☆
就業時間の給与を支給することは当然です。
ここは問題無いと思います。
実務でトラブルになるのは「時間外労働」です。
まず労働時間は「会社の指示」があった時間であり、
その時間が給与支給の対象となります。
従って、時間外労働に対して会社の指示があったか無かったか、
また、会社の指示があったとしても明示であるか黙示であるか、
というところもポイントです。
時間外労働に対する賃金支払いが争われる裁判では、
会社の黙示による指示があったと判断されて、
過去に遡って多額の時間外労働手当(あわせて付加金)を
会社が支払う判決が出される事が多くあります。
これを防ぐには次の対策が挙げられます。
1 時間外労働そのものを無くす。
「働き方改革」以降、この選択肢も現実的になっています。
本気で取り組むという強い意志、
成功事例を見て「我が社もできる」という確信、
これらが時間外労働の削減につながっていると考えます。
2 時間外労働には、書面での申請・承認を徹底させる。
最初の1ヶ月程度はルールとして実行されますが、
その後は形骸化していきます。
続けられるか否か、が重要です。
3 定期的に従業員の勤務状況を確認する。
問題がある場合でも対症療法的な対策は行うものの
根本的な解決には労力が必要であるため、
解決を先送りした結果、かえって問題が悪化するケースがあります。
四半期に1回程度は、面談をして問題があれば、
そこで真正面から解決に取り組むことが必要です。
☆☆☆☆ 1分単位で支給しているか ☆☆☆☆
また、時間外労働においては労働時間を15分は30分単位で
丸めることなく、1分単位で支給することも必要です。
また、遅刻や早退についても1分単位が原則です。
例えば、8分の遅刻を15分に切り上げて控除することはできません。
但し、この例の場合、7分についてペナルティとして控除する旨を
就業規則(給与規程)に定めれば可能になります。
なお、その時も労働基準法第91条の「制裁規定の制限」に
抵触しないように給与計算をしてください。
なお遅刻早退時間の減額については通達があります。(昭和63.3.14基発150)
『(略)3 遅刻・早退についてその時間に比例して賃金を減額することは
違法ではないが、遅刻・早退の時間に対する賃金額を超える減給は
制裁とみなされ、法第91条の適用を受ける。』
☆☆☆☆ 賃金支払いの5原則 ☆☆☆☆
教科書的になりますが「賃金支払いの5原則」です。
労働基準法 第24条(賃金の支払)に定めてありますが、
2項に分かれています。
第1項 → 通貨で、直接労働者に、その全額を
第2項 → 毎月一回以上、一定の期日を定めて
支払わなければならない。
第1項は、全ての賃金が対象となります。
第2項は、臨時に支払われれる賃金、賞与などは対象外です。
また、「毎月一回以上、一定の期日を定めて」の趣旨は、
賃金支払いの間隔が開き過ぎないように、労働者の生活を
安定させるためのものです。
「確認シート」の項目はこのうち「全額払い」を確認するものです。
☆☆☆☆ ノーワーク・ノーペイの法的根拠 ☆☆☆☆
条文や通達などによる明確な根拠はありませんが、
講学上、次のように考えられています。
「労務の給付が労働者の意思によってなされない場合は、
反対給付たる賃金も支払われないのが当然の原則となる。」
(労働法 第12版 菅野和夫 P.990)
実務上、これを確実にするためには就業規則(給与規程)に
不就労時間分の給与は支給しない、と明記する事をお奨めします。
☆☆☆☆ まとめ ☆☆☆☆
「勤務時間のすべてについて、正しく支給している」
というのが確認項目でした。最後にまとめます。
まず時間外労働の範囲を正しく把握してください。
その上で時間外労働を1分単位で支給する必要があります。
また、遅刻・早退の減額も1分単位が原則になります。
改めて、ご確認ください。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございます。(2021.11.02)
【 今までご紹介した社労士診断認証制度 】
1 就業規則・労働者が10人未満でも職場ルールは整備した方が良いです。
https://www.soumunomori.com/column/article/atc-175610/
2 育児・介護休業規程を定めるときのポイント2つ。ひな形を活用せよ。
https://www.soumunomori.com/column/article/atc-175630/
3 ハラスメントに対応するルールは何を定めるか?
https://www.soumunomori.com/column/article/atc-175640/
4 始業から終業までの時間管理
https://www.soumunomori.com/column/article/atc-175679/
5 36協定を締結して労基署に届け出ていますか?
https://www.soumunomori.com/column/article/atc-175704/
6 長時間労働とならない取り組みをしていますか?
https://www.soumunomori.com/column/article/atc-175718/
7 年次有給休暇を正しく付与していますか?
https://www.soumunomori.com/column/article/atc-175765/
8 従業員が年休の付与日数と残日数を知っていますか?
https://www.soumunomori.com/column/article/atc-175777/
9 基本給や手当等の基準が定められていますか?
https://www.soumunomori.com/column/article/atc-175796/
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