いよいよ10月からインボイス制度がスタートしました。
既存の会社はおおよそインボイス登録を終え、会社のシステムなどに反映させているところかと存じます。
さて、これから起業する
事業者、または売上1000万円を超えない免税
事業者においても、10月から必ずインボイス登録をしないとどの
事業者も取引ができなくなってしまうのでしょうか?
業種によっては、既にインボイス登録が取引するための最低条件となりつつある分野もあるようです。
しかし、実はインボイス登録が取引にほぼ影響がない業種はいくつかあります。せっかく免税
事業者または起業初年度で通常
消費税の申告が不要で、本来取引上インボイス登録をしなくてもあまり影響なく事業を続けられるのに、世間の風潮に流されて無駄にインボイス登録をし、必要のない負担をすることの無いよう、インボイス登録が必要な業種と不要な業種を考えてみましょう。
- 目次 -
「
BtoB」か「
BtoC」か
BtoCでもインボイス登録が必要な場合
各種特例がある場合
「農業特例」
「卸売市場特例」
「媒介者交付特例」
「2割特例」に注目
「
BtoB」か「
BtoC」か
まず、インボイス登録がされていない
事業者から発行される
請求書等が、それを受け取った
事業者の
消費税の申告の計算上、税額控除できないことが大きな問題のため、大前提として
BtoBの取引がメインの
事業者においては、インボイス登録が取引上必要性の高いケースが多いと言えます。
あえて例外として考えると、保険診療のみで自由診療などを行っていない病院へ医療器具や薬品などを卸している会社などは、病院自体の売上が
非課税売上のため
消費税の申告が無いことから、当該取引においては卸会社のインボイス登録の要否はあまり関係ないこととなります。しかし、実際には自由診療を行って
消費税の申告がある病院などにも卸会社は商品を売っているケースがほとんどのため、医療器具の卸会社はほとんどインボイス登録をしています。
一方、
BtoCの会社となると、インボイス登録の必要性が低くなるケースが出てきます。
一例として、理容室や美容室が挙げられます。
理容室が散髪代として髪を切った方に
領収書を渡したとします。しかし、この散髪をした方が会社の社長であっても、一会社員であっても、一般的にこの
領収書を
経費にすることはできません。そのため、この
領収書にインボイスの登録番号があるかないかは取引上何の影響も生じないため、このようなケースでは当該理容室はインボイス登録の必要性がほぼないことになります。当該理容室が免税
事業者である場合は、インボイス登録をしないという選択肢をとる可能性が高くなるのです。
美容室でも同じ理由が想定されます。カット代やパーマ代などで発行した
領収書を受け取った側が、
経費として
領収書を利用できないケースがほとんどのため、美容室もインボイス登録をしないケースが想定されるのです。
BtoCでもインボイス登録が必要な場合
しかしながら、例えば当該美容室がいわゆるホステスなどのセットを主たる業務としている場合、セット代として発行した
領収書はホステス又はホステスが所属する店舗の
消費税の申告で利用する可能性があります。そうなると、登録番号の有無で税額控除が出来るか否かが変わるため、
領収書に登録番号がある方が顧客に重宝されるため、当該美容室の場合、インボイス登録をする方がビジネスの円滑な取引につながるのです。
居酒屋やクラブ、スナックなどの飲食店の場合、基本は
BtoCの業種ですが、インボイス登録の判断が難しい業種と言えます。
この場合は、顧客層で判断しなければなりません。顧客が一般のサラリーマンなどの
領収書を使わない消費者が多い場合、インボイス登録の必要性が低くなるかもしれません。一方、会社の宴会が多い居酒屋や、経営者同士の接待客が多いクラブやスナックでは、
請求書、
領収書に登録番号があった方がよいため、インボイス登録が必須となるでしょう。
よくある例の一つとして、スナックのオーナーなどが
事業者交流会などに参加して、
事業者仲間を顧客ターゲットにしていることがあります。このような場合は、経営者が顧客の割合が自然と高くなるので、新規
事業者などの場合でもインボイス登録を選択するケースとなるでしょう。
各種特例がある場合
その他業種でも、例えば農業だと飲食店などが主な直接顧客でなく、個別にて消費者に販売しているケースなどは、インボイス登録の必要性が低い事例と考えられます。さらにいうと、農業の場合「農協特例」「卸売市場特例」という制度があり、農協や市場を通して販売する場合、生産者が免税
事業者でも、農協や市場の登録番号が記載された適格
請求書を消費者に発行できることになっており、生産者が免税
事業者であっても、買い手にインボイス登録されている適格
請求書等を発行できるというとても有利な制度があるのです。
また別の業種例だと、写真店などでも、一般消費者の顧客と、結婚相談所などの
事業者の顧客の割合がどれくらいかで、インボイス登録の要否が分かれたりもするでしょう。加えて、当該取引の場合、結婚相談所が
仲介業者となるケースもあるので、後述の「媒介者交付特例」を適用するケースもあります。
「媒介者交付特例」制度とは、ECサイトのように、売り手と買い手の間に媒介者をはさんで取引する
委託販売のケースの場合、売り手の登録番号を使って受託販売者が
請求書を発行できる制度です。
この制度は、売り手と、受託販売者が共にインボイス制度を登録していることが条件となりますので、「農協特例」や「卸売市場特例」ほどの優遇はされていない点ご注意ください。
「農業特例」
<商品の動き>
A生産者(免税
事業者)→B農協(登録番号あり)→購入者…Bの登録番号での適格
請求書で
消費税の税額控除ができる!
「卸売市場特例」
A生産者(免税
事業者)→B市場(登録番号あり)→購入者…Bの登録番号での適格
請求書で
消費税の税額控除ができる!
「媒介者交付特例」
A生産者(登録番号あり)→B媒介販売者(登録番号あり)→購入者…Aの登録番号での適格
請求書をBが
代理発行して
消費税の税額控除ができる…しかしA又はB共に免税
事業者でない場合のみ
「2割特例」に注目
最後に、インボイス制度で
消費税の免税
事業者が円滑な取引のため課税
事業者を選んだ場合でも、一部救済措置があるので紹介します。それは「2割特例」というもので、免税
事業者がインボイス登録で課税
事業者となった場合、
消費税の申告において、売上に係る
消費税額から特別控除税額として売上に係る
消費税額の8割を無条件で控除できるという制度が出来ております。
業種によっては、この制度で
消費税の納税額がかなり変わることになると思いますので、ぜひ活用できる
事業者は活用しましょう。
このように、インボイス登録の選択について、
BtoBの場合は登録必要性は高く、
BtoCの場合もケースバイケースと言えるものの、特例なども複数設けられているので、特例次第でも選択肢が変わるので、新規
事業者などで判断が難しい場合は専門家に相談の上で手続きを検討しましょう。
いよいよ10月からインボイス制度がスタートしました。
既存の会社はおおよそインボイス登録を終え、会社のシステムなどに反映させているところかと存じます。
さて、これから起業する事業者、または売上1000万円を超えない免税事業者においても、10月から必ずインボイス登録をしないとどの事業者も取引ができなくなってしまうのでしょうか?
業種によっては、既にインボイス登録が取引するための最低条件となりつつある分野もあるようです。
しかし、実はインボイス登録が取引にほぼ影響がない業種はいくつかあります。せっかく免税事業者または起業初年度で通常消費税の申告が不要で、本来取引上インボイス登録をしなくてもあまり影響なく事業を続けられるのに、世間の風潮に流されて無駄にインボイス登録をし、必要のない負担をすることの無いよう、インボイス登録が必要な業種と不要な業種を考えてみましょう。
- 目次 -
「BtoB」か「BtoC」か
BtoCでもインボイス登録が必要な場合
各種特例がある場合
「農業特例」
「卸売市場特例」
「媒介者交付特例」
「2割特例」に注目
「BtoB」か「BtoC」か
まず、インボイス登録がされていない事業者から発行される請求書等が、それを受け取った事業者の消費税の申告の計算上、税額控除できないことが大きな問題のため、大前提としてBtoBの取引がメインの事業者においては、インボイス登録が取引上必要性の高いケースが多いと言えます。
あえて例外として考えると、保険診療のみで自由診療などを行っていない病院へ医療器具や薬品などを卸している会社などは、病院自体の売上が非課税売上のため消費税の申告が無いことから、当該取引においては卸会社のインボイス登録の要否はあまり関係ないこととなります。しかし、実際には自由診療を行って消費税の申告がある病院などにも卸会社は商品を売っているケースがほとんどのため、医療器具の卸会社はほとんどインボイス登録をしています。
一方、BtoCの会社となると、インボイス登録の必要性が低くなるケースが出てきます。
一例として、理容室や美容室が挙げられます。
理容室が散髪代として髪を切った方に領収書を渡したとします。しかし、この散髪をした方が会社の社長であっても、一会社員であっても、一般的にこの領収書を経費にすることはできません。そのため、この領収書にインボイスの登録番号があるかないかは取引上何の影響も生じないため、このようなケースでは当該理容室はインボイス登録の必要性がほぼないことになります。当該理容室が免税事業者である場合は、インボイス登録をしないという選択肢をとる可能性が高くなるのです。
美容室でも同じ理由が想定されます。カット代やパーマ代などで発行した領収書を受け取った側が、経費として領収書を利用できないケースがほとんどのため、美容室もインボイス登録をしないケースが想定されるのです。
BtoCでもインボイス登録が必要な場合
しかしながら、例えば当該美容室がいわゆるホステスなどのセットを主たる業務としている場合、セット代として発行した領収書はホステス又はホステスが所属する店舗の消費税の申告で利用する可能性があります。そうなると、登録番号の有無で税額控除が出来るか否かが変わるため、領収書に登録番号がある方が顧客に重宝されるため、当該美容室の場合、インボイス登録をする方がビジネスの円滑な取引につながるのです。
居酒屋やクラブ、スナックなどの飲食店の場合、基本はBtoCの業種ですが、インボイス登録の判断が難しい業種と言えます。
この場合は、顧客層で判断しなければなりません。顧客が一般のサラリーマンなどの領収書を使わない消費者が多い場合、インボイス登録の必要性が低くなるかもしれません。一方、会社の宴会が多い居酒屋や、経営者同士の接待客が多いクラブやスナックでは、請求書、領収書に登録番号があった方がよいため、インボイス登録が必須となるでしょう。
よくある例の一つとして、スナックのオーナーなどが事業者交流会などに参加して、事業者仲間を顧客ターゲットにしていることがあります。このような場合は、経営者が顧客の割合が自然と高くなるので、新規事業者などの場合でもインボイス登録を選択するケースとなるでしょう。
各種特例がある場合
その他業種でも、例えば農業だと飲食店などが主な直接顧客でなく、個別にて消費者に販売しているケースなどは、インボイス登録の必要性が低い事例と考えられます。さらにいうと、農業の場合「農協特例」「卸売市場特例」という制度があり、農協や市場を通して販売する場合、生産者が免税事業者でも、農協や市場の登録番号が記載された適格請求書を消費者に発行できることになっており、生産者が免税事業者であっても、買い手にインボイス登録されている適格請求書等を発行できるというとても有利な制度があるのです。
また別の業種例だと、写真店などでも、一般消費者の顧客と、結婚相談所などの事業者の顧客の割合がどれくらいかで、インボイス登録の要否が分かれたりもするでしょう。加えて、当該取引の場合、結婚相談所が仲介業者となるケースもあるので、後述の「媒介者交付特例」を適用するケースもあります。
「媒介者交付特例」制度とは、ECサイトのように、売り手と買い手の間に媒介者をはさんで取引する委託販売のケースの場合、売り手の登録番号を使って受託販売者が請求書を発行できる制度です。
この制度は、売り手と、受託販売者が共にインボイス制度を登録していることが条件となりますので、「農協特例」や「卸売市場特例」ほどの優遇はされていない点ご注意ください。
「農業特例」
<商品の動き>
A生産者(免税事業者)→B農協(登録番号あり)→購入者…Bの登録番号での適格請求書で消費税の税額控除ができる!
「卸売市場特例」
A生産者(免税事業者)→B市場(登録番号あり)→購入者…Bの登録番号での適格請求書で消費税の税額控除ができる!
「媒介者交付特例」
A生産者(登録番号あり)→B媒介販売者(登録番号あり)→購入者…Aの登録番号での適格請求書をBが代理発行して消費税の税額控除ができる…しかしA又はB共に免税事業者でない場合のみ
「2割特例」に注目
最後に、インボイス制度で消費税の免税事業者が円滑な取引のため課税事業者を選んだ場合でも、一部救済措置があるので紹介します。それは「2割特例」というもので、免税事業者がインボイス登録で課税事業者となった場合、消費税の申告において、売上に係る消費税額から特別控除税額として売上に係る消費税額の8割を無条件で控除できるという制度が出来ております。
業種によっては、この制度で消費税の納税額がかなり変わることになると思いますので、ぜひ活用できる事業者は活用しましょう。
このように、インボイス登録の選択について、BtoBの場合は登録必要性は高く、BtoCの場合もケースバイケースと言えるものの、特例なども複数設けられているので、特例次第でも選択肢が変わるので、新規事業者などで判断が難しい場合は専門家に相談の上で手続きを検討しましょう。