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フレックスタイム制度の留意点

平成19年5月15日 第43号
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人事のブレーン社会保険労務士レポート
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
目次

1. フレックスタイム制度の留意点

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ブログもよろしくお願い致します。
人事のブレーン社会保険労務士日記」です。
http://norifumi.cocolog-nifty.com/blog/
是非見てみて下さい!

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1. フレックスタイム制度の留意点

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<1> はじめに

今回はフレックスタイム制度について取り上げてみたい。
前2回は「1ヶ月単位の変形労働時間制」「1年単位の変形労働時間制」と取
り上げたが、変形労働時間制度というものは理解しているようでしていないも
のである。

ご質問の多い点や誤解の多い点をまとめてみたが、今回は変形労働時間制の最
終回フレックスタイム制度である。

<2>1ヶ月単位の変形労働時間制との比較

(1) 精算期間

フレックスタイム制度の精算期間は1ヶ月以内となっている。
1ヶ月以内であれば1日でも、1週でも構わないが、実際は1ヶ月の精算期間
とすると事が圧倒的に多く、本稿では1ヶ月の精算期間を前提に進めていきた
い。

(2)所定労働時間の総枠の考え方

所定労働時間の考え方は1ヶ月単位の変形労働時間制と同様である。
所定労働時間の総枠の考え方は私のメルマガ、平成19年3月15日発行第4
1号を参照されたい。
http://blog.mag2.com/m/log/0000121960/108347420.html

(3)始業終業の時刻について

1ヶ月を通じて週40時間を達成する制度であることに、フレックスタイム制
度と1ヶ月単位の変形労働時間制度の共通点がある。

相違点は、フレックスタイム制度の最大の特徴である始業終業の時刻を労働者
に委ねるかどうかである。

フレックスタイム制度では、始業終業の時刻を労働者に委ねる制度であり、原
則として始業終業の時刻を使用者が介入することは出来ないとなっている。

1ヶ月単位の変形労働時間制度では、始業終業の時刻は使用者の権限で決定す
るものであり、1ヶ月の所定労働時間の総枠の範囲内で使用者が勤務表等で振
り分ける制度である。

この点が相違点であるが、1ヶ月を通じての週40時間達成という点では共通
点が多い。

<3> フレックスタイム制度の運用上のポイント

(1)制度の概要

フレックスタイム制度の概要については他の書籍等に任せて、本稿では実務上
誤解が多い点を中心にお話しする。

とはいっても、最小限の概要だけはおはなししたい。

(2)コアタイムとフレキシブルタイム

始業終業の時刻を労働者の裁量に任すといっても、1日24時間全て自由に使
って良いというものでもない。

施設管理上の問題や深夜手当の問題から裁量について一定の制限をする場合が
多い。

労働者が必ず出勤していなければいけない時間帯をコアタイムといい、始業終
業の時刻を委ねている時間帯をフレキシブルタイムという。

コアタイムは必ず設ける必要はない。
フレキシブルタイムについては、一定の制限を設ける場合が多い。
フレックスタイム制度であっても、深夜時間帯に業務に従事すれば深夜手当
対象となる。
これにより、同様の業務に従事していても夜型人間の方が賃金が高くなってし
まう。
これを是正する為にフレキシブルタイムを午前5時から午後10時までとする
企業がある。
午前5時という会社は少ないが、フレキシブルタイムの終わりを午後10時と
する企業は多い。
この様にフレキシブルタイムに一定の制限を加える事は問題ないのである。

(3)休日について

フレックスタイム制度に於いて労働者に委ねているのは始業終業の時刻である。
出勤日までは労働者に委ねていない。
よって出勤日については使用者がその裁量で決定すべきものである。
仮に労働者が出勤日ではない法定休日に出勤してきた場合、他の労働日が所定
労働時間の相枠内であっても3割5分増しの休日労働手当を支払わなければな
らず、休日労働をせざるを得ない場合には、事前に休日の振替を行うことが求
められる。
いずれにしても、休日については経営者の裁量により決定するわけであるから、
使用者の許可無い休日労働をさせてしまった場合の責任は使用者にあるわけで、
黙示の意思表示により休日労働の指示があったとみなされる場合が多いと思わ
れる。

(4)残業について

フレックスタイム制度の残業は、1ヶ月の総労働時間を合計して、所定労働時
間を超過した部分が2割5分増しの残業手当の対象である。

フレックスタイム制度の残業時間は1ヶ月を締めてみないと分からないわけで
あるが、前述した法定休日労働については、総労働時間所定労働時間の総枠
内であっても別途3割5分増しの支給しなければならない。

(5)労働時間の貸し借りについて

例えば4月の総労働時間所定労働時間をオーバーし、5月の総労働時間が所
労働時間より少なくなった場合には、4月のオーバー分を5月で調整して4
月の残業代を支払わないということは出来ない。

フレックスタイム制の前提に労働基準法第24条の問題がある。
賃金全額払いの原則である。
賃金は毎月1回、一定期日に、全額を現金にて本人に直接支払いなさい」と
いう原則である。
フレックスタイム制度に於いて、前月の超過労働時間を当月で精算することは、
前月分の賃金を全額支払っていないことになり労働基準法第24条違反となる。

この理由により出来ないわけである。

但し、次の場合は良いとされている。

前月所定労働時間に満たさなかった。
賃金カットをしていない。
この2点を満たせば、当月の労働時間の総枠から前月の総枠に満たない時間を
控除できる。

ただこの場合にも、当月の労働時間の総枠が法定労働時間内に限られ、法定労
働時間をオーバーする場合には、当該時間を精算しなければならない。

実際にこの制度が使えるのは、残業が非常に少なく、夏期休暇年末年始休暇
、ゴールデンウィークがある月に限定されるであろう。

フレックスタイム制度における労働時間の貸し借りについては、余り我が国で
は実務上の意味を持たないわけである。

(6)フレックスタイム制度適用者に対する会議の出席命令

フレックスタイム制度においては出退勤の時刻を労働者に委ねている。
しかし、会議やクライアントとの打ち合わせについて時刻が決まっているので
あり、この点の関係はどうであろうか。

フレックスタイム制度に於いて労働者に委ねているのは出退勤の裁量だけであ
り、業務遂行方法等をも委ねているわけではない。

よってフレックスタイム制度の適用者が、会議の出席やクライアントの打ち合
わせに出るかでないかの裁量の余地はなく、出ることが労働契約に含まれた義
務になっている。
この様に考えると、会議への出席やクライアントの指定した時刻へ特定の場所
に赴くことは、フレックスタイム制度の主旨に反することはなく、労働契約
本旨に沿った契約履行である。

コアタイムを設けている場合には、コアタイムの時刻を繰り上げまたは繰り下
げすることは禁じられていることはなく、これで対応することも可能である。

<4>まとめ

フレックスタイム制度については、私見では営業系の職種やエンジニアに適用
している企業が多い。
1ヶ月単位の変形労働時間制1年単位の変形労働時間制及びフレックスタイ
ム制度を十分に理解をして、どの制度を適用することが最適な労働時間管理を
することが出来るのか検討していかなければならない。

就業規則の変更とは、この労働時間管理制度の見直しを含めて行うことが重要
であり、結果的に賃金制度の大幅な変更をする必要が出てくる可能性もある。
しかし、労働者の働き方や労働基準法の改正を踏まえて最適な労働時間管理の
運用を行うことこそ人事部門の責任であり、社会保険労務士の職責であると考
える。

労働時間管理がしっかりと出来ていないと、合法的で戦略的な賃金設計は行う
ことは出来ない。

その様な意味で、3回にわたり労働時間管理の基礎的な問題を取り上げた。

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