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■
行政書士津留信康の『身近な法務サポートマガジン』<第106号/2007/6/15>■
1.はじめに
2.「
会社法務編/中小企業・
ベンチャー経営者&
起業予定者のための“
会社法”等のポイント(50)」
3.「市
民法務編/ビジネスに役立つ“
民法”の基礎(33)」
4.編集後記
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1.はじめに
**********************************************************************
皆様、こんにちは。
行政書士の津留信康です。
会期終了(2007/6/23)が間近に迫った第166通常国会では、
行政書士業務とも関連の深い、「戸籍法&
住民基本台帳法」の各改正法案、
「
株式会社日本政策金融公庫法案」等が、成立しています。
詳しくは、こちら(※)をご覧ください。
※)
http://n-tsuru.cocolog-nifty.com/blog/2007/06/16_4522.html
それでは、今回も、どうぞ最後までおつきあいください。
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2.「
会社法務編―中小企業・
ベンチャー経営者&
起業予定者のための“
会社法”等のポイント(50)」
**********************************************************************
★「2007/4/15発行の第102号」より、
「平成18年度以前の
司法書士試験問題」の解説を通じて、
“
会社法”等に関する理解を深めていただいておりますが、
第5回目は、「
新株予約権付
社債」に関する問題です。
※)法改正等に応じて、
問題文・設問肢の内容を一部変更している場合がありますので、
ご了承ください。
■
新株予約権付
社債に関する次の1~5の記述のうち、
正しいものはどれか(H17-
商法・
会社法)。
1.募集
新株予約権付
社債を発行する場合、
定款で、これを発行することできる旨を定めておかなければならない。
□正解: ×
□解説
会社法に、設問肢のような規定は置かれていません。
2.
定款により、株式の
譲渡制限がされている会社においては、
募集
新株予約権付
社債を募集する場合には、
株主総会の
特別決議による必要がある。
□正解: ○
□解説
公開会社(原則として、
取締役会の決議/
会社法第240条第1項)と異なり、
設問肢のような
非公開会社においては、募集事項決定の際、
株主総会の
特別決議が必要です(同法第238条第2項・第309条第2項第6号)。
3.
新株予約権付
社債においては、
社債が消滅していない場合でも、
新株予約権だけを譲渡することができる。
□正解: ×
□解説
新株予約権付
社債においては、
社債が消滅していない場合の
新株予約権のみの譲渡、
新株予約権が消滅していない場合の
社債のみの譲渡、
のいずれも、できません(
会社法第254条第2項、同法同条第3項)。
4.
新株予約権付
社債の
新株予約権の行使があった場合も、
資本金の額および
発行済株式の総数は、増加する。
□正解: ○
□解説
会社法第281条第1項~第3項を参照のこと。
5.
新株予約権原簿には、
新株予約権付
社債の
社債権者の氏名が記載されることはない。
□正解: ×
□解説
新株予約権付
社債を発行する際、
無記名式の場合には、
新株予約権付
社債権者の氏名が、
新株予約権原簿に記載されることはありません(
会社法第249条第2号)が、
それ以外の場合には、その氏名または名称および住所が、
新株予約権原簿に記載または記録されます(同法同条第3号のイ)。
■
株主総会の
招集手続きが法令に違反する場合には、
株主総会の決議の取消しの制度があるが、
社債権者集会の
招集手続きが法令に違反する場合には、
社債権者集会の決議の取消しの制度はない(H14-
商法・
会社法)。
□正解: ○
□解説
前者は、
会社法第831条第1項第1号を参照のこと。
また、
社債権者集会の
招集手続きは、
株主総会の
招集手続きに準じていますが、
決議取消しの制度は規定されていません。
★次号(2007/7/1発行予定の第107号)では、
「会社の計算(
違法配当)」について、ご紹介する予定です。
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3.「市
民法務編―ビジネスに役立つ“
民法”の基礎(33)」
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★本号から、「平成18年度
司法書士試験問題」の解説を通じて、
民法各編についての理解を深めていただきますが、
第3回目は、「
失踪宣告」に関する問題です。
※)便宜上、問題文・設問肢の内容を一部変更している場合がありますので、
ご了承ください。
■Aが
失踪宣告を受け、
Aの妻Bが生命保険金を受取るとともに、Aの土地を
相続した。
Bは、受取った生命保険金を費消し、また、
相続した土地をCに売却した。
その後、Aが生存することが明らかになったため、
失踪宣告は取り消された。
この場合の法律関係に関する次の1~5の記述のうち、
判例の趣旨に照らし、正しいものはどれか(午前-第5問)。
1.Bが生命保険金を費消した際に、Aの生存について善意であったとしても、
遊興費として生命保険金を費消した場合には、Bは、保険者に対し、
費消した生命保険金の相当額を返還しなければならない。
□正解: ×
□解説
失踪の宣告によって財産を得た者は、その取消しによって、権利を失い、
現に利益を受けている限度においてのみ、
その財産を返還する義務を負います(
民法第32条第2項)。
「現に受けている利益」について、
設問肢1の「遊興費として費消」の場合には、残っていない、
設問肢2の「生活費として費消」の場合には、形を変えて残っている、
と解されるため、
その財産の返還義務につき、前者では生じませんが、後者では生じます。
2.Bが生命保険金を費消した際に、Aの生存について善意であり、かつ、
生活費として生命保険金を費消した場合には、Bは、保険者に対し、
費消した生命保険金の相当額を返還する必要はない。
□正解: ×
□解説
設問肢1の解説を参照のこと。
3.Bが、Cに土地を売却した際に、Aの生存について悪意であったときは、
Cが善意であっても、Aについての
失踪宣告の取消しにより、
Cは、当該土地の
所有権を失う。
□正解: ○
□解説
失踪宣告が取り消されると、
原則として、
失踪宣告の効果は遡及的に消滅し、
失踪宣告後になされた行為の効果も消滅しますが、
失踪宣告後、その取消し前に、「善意」でした行為については、
失踪宣告取消後も、その効果は消滅しません(
民法第32条第1項後段)。
前述の「善意」について、判例(大判S13.2.7)では、
「
契約当時、当事者双方が善意でしたこと」を求めていることから、
当事者の一方が悪意の設問肢3・4の場合、
契約の効力は消滅しますが、
設問肢5の場合には、消滅しません。
なお、設問肢5の場合、B・Cともに善意であるため、Dが悪意であっても、
通説では、法的安定性の観点から、
契約の効力は消滅しないと解されています。
4.Bが、Cに土地を売却した際、
BとCがともに、Aの生存について悪意であった場合において、
Cが、Dに土地を転売したときは、
Dが、Aの生存について善意であったとしても、
Aについての
失踪宣告の取消しにより、Dは、当該土地の
所有権を失う。
□正解: ○
□解説
設問肢3の解説を参照のこと。
5.Bが、Cに土地を売却した際、
BとCがともに、Aの生存について善意であった場合において、
Cが、Aの生存について悪意であるDに土地を転売したときは、
Aについての
失踪宣告の取消しにより、Dは、当該土地の
所有権を失う。
□正解: ×
□解説
設問肢3の解説を参照のこと。
★次号(2007/7/1発行予定の第107号)では、
「
代理」について、ご紹介する予定です。
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4.編集後記
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★業務のご案内(
売掛金回収促進サポート)★
当事務所では、「
内容証明郵便」の活用を中心として、
「中小企業・
ベンチャー経営者のための
売掛金回収促進」に関するサポート
を行っています。
詳しくは、こちら(※)をご覧ください。
※)
http://n-tsuru.cocolog-nifty.com/blog/2007/03/post_6371_1.html
■第106号は、いかがでしたか?
次号(第107号)は、2007/7/1発行予定です。
■編集責任者:
行政書士 津留信康
□津留
行政書士事務所
http://www.n-tsuru.com
□ご連絡専用アドレス
n-tsuru@mbr.nifty.com
■当メルマガの発行は、「まぐまぐ(
http://www.mag2.com/)」を利用しており、
購読の解除は、「
http://www.mag2.com/m/0000106995.html」からできます。
■当メールマガジンの無断転載等を禁じます。
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■行政書士津留信康の『身近な法務サポートマガジン』<第106号/2007/6/15>■
1.はじめに
2.「会社法務編/中小企業・ベンチャー経営者&
起業予定者のための“会社法”等のポイント(50)」
3.「市民法務編/ビジネスに役立つ“民法”の基礎(33)」
4.編集後記
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1.はじめに
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皆様、こんにちは。行政書士の津留信康です。
会期終了(2007/6/23)が間近に迫った第166通常国会では、
行政書士業務とも関連の深い、「戸籍法&住民基本台帳法」の各改正法案、
「株式会社日本政策金融公庫法案」等が、成立しています。
詳しくは、こちら(※)をご覧ください。
※)
http://n-tsuru.cocolog-nifty.com/blog/2007/06/16_4522.html
それでは、今回も、どうぞ最後までおつきあいください。
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2.「会社法務編―中小企業・ベンチャー経営者&
起業予定者のための“会社法”等のポイント(50)」
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★「2007/4/15発行の第102号」より、
「平成18年度以前の司法書士試験問題」の解説を通じて、
“会社法”等に関する理解を深めていただいておりますが、
第5回目は、「新株予約権付社債」に関する問題です。
※)法改正等に応じて、
問題文・設問肢の内容を一部変更している場合がありますので、
ご了承ください。
■新株予約権付社債に関する次の1~5の記述のうち、
正しいものはどれか(H17-商法・会社法)。
1.募集新株予約権付社債を発行する場合、
定款で、これを発行することできる旨を定めておかなければならない。
□正解: ×
□解説
会社法に、設問肢のような規定は置かれていません。
2.定款により、株式の譲渡制限がされている会社においては、
募集新株予約権付社債を募集する場合には、
株主総会の特別決議による必要がある。
□正解: ○
□解説
公開会社(原則として、取締役会の決議/会社法第240条第1項)と異なり、
設問肢のような非公開会社においては、募集事項決定の際、
株主総会の特別決議が必要です(同法第238条第2項・第309条第2項第6号)。
3.新株予約権付社債においては、社債が消滅していない場合でも、
新株予約権だけを譲渡することができる。
□正解: ×
□解説
新株予約権付社債においては、
社債が消滅していない場合の新株予約権のみの譲渡、
新株予約権が消滅していない場合の社債のみの譲渡、
のいずれも、できません(会社法第254条第2項、同法同条第3項)。
4.新株予約権付社債の新株予約権の行使があった場合も、
資本金の額および発行済株式の総数は、増加する。
□正解: ○
□解説
会社法第281条第1項~第3項を参照のこと。
5.新株予約権原簿には、
新株予約権付社債の社債権者の氏名が記載されることはない。
□正解: ×
□解説
新株予約権付社債を発行する際、
無記名式の場合には、新株予約権付社債権者の氏名が、
新株予約権原簿に記載されることはありません(会社法第249条第2号)が、
それ以外の場合には、その氏名または名称および住所が、
新株予約権原簿に記載または記録されます(同法同条第3号のイ)。
■株主総会の招集手続きが法令に違反する場合には、
株主総会の決議の取消しの制度があるが、
社債権者集会の招集手続きが法令に違反する場合には、
社債権者集会の決議の取消しの制度はない(H14-商法・会社法)。
□正解: ○
□解説
前者は、会社法第831条第1項第1号を参照のこと。
また、社債権者集会の招集手続きは、
株主総会の招集手続きに準じていますが、
決議取消しの制度は規定されていません。
★次号(2007/7/1発行予定の第107号)では、
「会社の計算(違法配当)」について、ご紹介する予定です。
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3.「市民法務編―ビジネスに役立つ“民法”の基礎(33)」
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★本号から、「平成18年度司法書士試験問題」の解説を通じて、
民法各編についての理解を深めていただきますが、
第3回目は、「失踪宣告」に関する問題です。
※)便宜上、問題文・設問肢の内容を一部変更している場合がありますので、
ご了承ください。
■Aが失踪宣告を受け、
Aの妻Bが生命保険金を受取るとともに、Aの土地を相続した。
Bは、受取った生命保険金を費消し、また、相続した土地をCに売却した。
その後、Aが生存することが明らかになったため、失踪宣告は取り消された。
この場合の法律関係に関する次の1~5の記述のうち、
判例の趣旨に照らし、正しいものはどれか(午前-第5問)。
1.Bが生命保険金を費消した際に、Aの生存について善意であったとしても、
遊興費として生命保険金を費消した場合には、Bは、保険者に対し、
費消した生命保険金の相当額を返還しなければならない。
□正解: ×
□解説
失踪の宣告によって財産を得た者は、その取消しによって、権利を失い、
現に利益を受けている限度においてのみ、
その財産を返還する義務を負います(民法第32条第2項)。
「現に受けている利益」について、
設問肢1の「遊興費として費消」の場合には、残っていない、
設問肢2の「生活費として費消」の場合には、形を変えて残っている、
と解されるため、
その財産の返還義務につき、前者では生じませんが、後者では生じます。
2.Bが生命保険金を費消した際に、Aの生存について善意であり、かつ、
生活費として生命保険金を費消した場合には、Bは、保険者に対し、
費消した生命保険金の相当額を返還する必要はない。
□正解: ×
□解説
設問肢1の解説を参照のこと。
3.Bが、Cに土地を売却した際に、Aの生存について悪意であったときは、
Cが善意であっても、Aについての失踪宣告の取消しにより、
Cは、当該土地の所有権を失う。
□正解: ○
□解説
失踪宣告が取り消されると、
原則として、失踪宣告の効果は遡及的に消滅し、
失踪宣告後になされた行為の効果も消滅しますが、
失踪宣告後、その取消し前に、「善意」でした行為については、
失踪宣告取消後も、その効果は消滅しません(民法第32条第1項後段)。
前述の「善意」について、判例(大判S13.2.7)では、
「契約当時、当事者双方が善意でしたこと」を求めていることから、
当事者の一方が悪意の設問肢3・4の場合、契約の効力は消滅しますが、
設問肢5の場合には、消滅しません。
なお、設問肢5の場合、B・Cともに善意であるため、Dが悪意であっても、
通説では、法的安定性の観点から、
契約の効力は消滅しないと解されています。
4.Bが、Cに土地を売却した際、
BとCがともに、Aの生存について悪意であった場合において、
Cが、Dに土地を転売したときは、
Dが、Aの生存について善意であったとしても、
Aについての失踪宣告の取消しにより、Dは、当該土地の所有権を失う。
□正解: ○
□解説
設問肢3の解説を参照のこと。
5.Bが、Cに土地を売却した際、
BとCがともに、Aの生存について善意であった場合において、
Cが、Aの生存について悪意であるDに土地を転売したときは、
Aについての失踪宣告の取消しにより、Dは、当該土地の所有権を失う。
□正解: ×
□解説
設問肢3の解説を参照のこと。
★次号(2007/7/1発行予定の第107号)では、
「代理」について、ご紹介する予定です。
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4.編集後記
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★業務のご案内(売掛金回収促進サポート)★
当事務所では、「内容証明郵便」の活用を中心として、
「中小企業・ベンチャー経営者のための売掛金回収促進」に関するサポート
を行っています。
詳しくは、こちら(※)をご覧ください。
※)
http://n-tsuru.cocolog-nifty.com/blog/2007/03/post_6371_1.html
■第106号は、いかがでしたか?
次号(第107号)は、2007/7/1発行予定です。
■編集責任者:行政書士 津留信康
□津留行政書士事務所
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