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年次有給休暇付与における注意点

平成19年7月15日 第45号
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人事のブレーン社会保険労務士レポート
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
目次

1.年次有給休暇付与における注意点

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ブログもよろしくお願い致します。
人事のブレーン社会保険労務士日記」です。
http://norifumi.cocolog-nifty.com/blog/
是非見てみて下さい!

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1.年次有給休暇付与における注意点

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1.はじめに

年次有給休暇とは、6ヶ月以上継続勤務したものに対して10労働日(短時間
労働者については比例付与)されるものである。
また、当該期間中の出勤率が8割以上あることが年次有給休暇発生の要件であ
る。

しかし、実務においてはこの8割以上要件と、継続勤務要件について誤解があ
り今回のテーマとして取り上げた。

2.年次有給休暇の概要

(1)継続勤務の起算日

継続勤務の起算日は、入社日である。
入社日とは、正社員、アルバイト等の名称の如何を問わず、その会社にはじめ
て出勤をした日が起算日となる。
移籍出向転籍)の場合には、転籍した日ということである。

年次有給休暇の付与についてはこの入社日が全ての起算日になる。

(2)基準日の設定

入社した日が起算日であるから年次有給休暇の発生日はバラバラで管理しにく
い。
そこで毎年4月1日等を基準日と定め、入社日の如何にかかわらず当該日をも
って新たに付与する制度を取っている企業がある。
この場合には、例え4月1日が入社7ヶ月であっても、3月1日に10労働日
付与され1ヶ月後の4月1日に再度11労働日付与される。結果として、入社
7ヶ月にもかかわらず21労働日の年次有給休暇を付与する必要が生じる。

数字を見ると企業サイドとしては理不尽ではあるが、基準日を統一することに
より事務作業軽減を選択した訳であるから、これについてはやむを得ない。
しかし、昨今の給与計算ソフトにおいてはわざわざ統一した基準日を設けなく
ても、入社日と勤務継続期間で自動的に計算してくれる機能がついているので
ご確認をされたい。

(3)基準日の注意点

入社日と同時に年次有給休暇を付与する企業がある。
また、入社日に5日付与し6ヶ月経過したら残りの5日を付与する企業もある。
いずれの場合にも入社日において年次有給休暇を付与した場合には、入社日が
基準日となり、1年経過後に11労働日の付与をしなければならない点に注意
が必要である。

(4)比例付与における基準日との関係

年次有給休暇を付与する場合には、基準日における勤務形態である。
年次有給休暇付与にあたっては、正社員、パート等の呼称の如何に関係なく勤
務日数により付与される日数が決まっている。
週の所定労働時間が30時間未満でかつ週の労働日数が4日以下の場合年次有
給休暇の比例付与の対象となり、日数が少なく付与される。
週の所定労働時間が30時間以上の場合や週の労働日数が5日以上の場合には
比例付与の対象とはならない。

この要件をみる際は、全て基準日が基準であり、例えば基準日を迎えて年次有
給休暇が付与された直後に短時間労働者となり勤務日数が減少しても、基準日
にフルタイムで働いていれば次の基準日までフルタイムの日数の年次有給休暇
のままである。
逆の場合も同様で、短時間労働者で基準日を迎えた後にフルタイムになった場
合には、次の基準日まで短時間労働者の日数の年次有給休暇のままである。

3.継続勤務要件

(1)職種変更等による継続勤務の要件

継続勤務とは当該企業の在籍期間である。
業務災害における休職は勿論のこと、私傷病による休職労働組合の専従職員、
他社に出向している期間も含めて全ての期間が在籍期間となるのである。

例えば定年退職をし、当該退職に伴う退職金の精算をして再雇用をした場合に
定年退職前とその後の再雇用の期間を通算して年次有給休暇を付与しなけれ
ばならない。

また、アルバイトや契約社員から正社員になった場合にも同様であり、いずれ
の場合にも当該企業との雇用関係において労務管理上の区分が変更されたに過
ぎず、在籍期間に影響を与えるものではない。

では期間の定める労働者契約を更新した場合にはどの様に考えるのか。
これも更新している以上、在籍期間の蓄積はなされており2ヶ月契約を3回繰
り返せば年次有給休暇の発生要件を満たすこととなる。
この場合において、契約更新の際、前の契約とその後の契約の間に一定期間を
設けて継続勤務性を否定する主張がなされる場合があるが、実態として一定期
間を設けることが継続勤務性の否定を意図しておこなわれている場合には、前
勤務との継続性が認定される可能性が高く、業務の関係上一定期間あいた場合
にも同様の取扱がなされると考えられる(昭36.11.27 基収第140号)。


(2)企業合併及び企業分割の場合

企業の吸収合併営業譲渡会社分割等いずれの場合においても、商法上の考
え方と違い労働法上の考え方においては、労働契約自体が譲渡されたものとみ
なされ、継続勤務性は中断されず、新組織においても従前の勤務期間を通算し
た期間が在籍期間となり、その期間に基づき年次有給休暇が付与される。

(3)転籍

転籍の場合には、継続勤務は中断される。
在籍出向の場合や上記営業譲渡合併等の場合と違い転籍については継続勤務
性が認められず、新たな雇用関係が成立したと考えられ、転籍した日が入社日
と考えられ、当該日から6ヶ月継続勤務した日に年次有給休暇の付与がなされ
る。

4.8割以上の出勤要件

(1)全労働日の考え方

出勤すべき日の8割以上勤務すれば年次有給休暇の発生要件になる。
この出勤すべきというものは、会社の所定労働日のことであり、短時間労働者
の場合には契約上出勤すべき日となる。

例えば週1回の出勤が契約上の所定労働日であれば、週に一回の出勤を6ヶ月
間継続しておこなえば年次有給休暇は発生する。

またシフト制の職場において、店長とそりが合わず俗にいう「シフトから干さ
れる」労働者がいるが会社が意図的に本来付与する所定労働日を当該労働者
付与しておらず、これをもって出勤率が8割未満となっても年次有給休暇は発
生する。

「シフトから干す」のであれば、そもそも当該労働者の解雇へ向けて話し合い
をするべきであり、「シフトから干せ」ば自ら退職するだろうという安易な考
えは慎むべきである。


また法律上出勤したとみなすことになっている期間もあり、それは以下の通り
である。
・業務上の事由で傷病にかかり休業している期間(通勤災害は該当しない)
産前産後休暇の期間
試用期間
育児休業及び介護休業の期間
使用者責めに帰すべき事由で休業した期間
以上である。
年次有給休暇出勤率算定にあたり、この期間は出勤したものとして計算しな
ければならない。

上記に含まれていない、慶弔休暇生理休暇については出勤率の計算にあたり、
取得日を控除しても法令上問題はないが、休暇の性質上控除しないことが望ま
しいとの行政指導がある。(生理休暇出勤率に含めるという合意があればそ
の様に取り扱って構わないと趣旨の通達がある 昭23.7.31基収第26
75号)

5.まとめ

年次有給休暇については、労働者の権利意識の高まりから中小企業においても
その取得率が高まり、実務上年次有給休暇の発生要件についての誤解が目立つ
ようになってきた。
それを踏まえての今回のテーマであった。
年次有給休暇という制度は、あくまで労働日を免除することが目的であり、時
間単位の付与は禁止されている。最小単位で半日単位の付与を認めて良いとさ
れており、経営者が認めなければ半日単位の付与を行う必要はない。

また、遅刻3回で1日欠勤扱いとするとしている企業において、年次有給休暇
出勤率算定は、これを控除してはならない。
あくまで労働日単位の欠勤を控除するのである。
極端な話、全労働日に遅刻しても8割要件は満たしているのである。
この場合には、年次有給休暇の問題ではなく、遅刻について労使間で話し合い、
改善されないようであれば解雇へ向けての話し合いをすべき事で、結果として
年次有給休暇が付与されても、それは労働者に有利な労働基準法であるという
後ろ向きな考えに立たず、解雇等の対策を怠った経営者自身に非があると考え
ることが相当である。

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