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給与40万の罠 出題編

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--------|||||=======  労働法で 生き残る!!  =======|||||--------


       労働法令を軽視できる時代は過ぎ去りました。

   知る者こそが自分を守れる。もはやそんな時代に突入しています。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



   VOL.46  ≪ 目次 ≫


◎ 賃金“40万”の罠 ~ 出題編


◎ 編集後記
  
 

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★   賃金“40万”の罠 ~ 出題編


    失業して早や6ヶ月あまり。退職直後は「なに、次の所も簡単に
    みつかるさ」と、高を括っていた児島ヨシオも、さすがに最近は
    少々焦り気味。
    
    同居している両親からは「まだみつからないの?」と小言をい
    われるし、5歳年下の妹はここしばらく視線すら合わせてくれない。
    
    先日なんて「私だって就職活動中なんだから、兄貴のインケツが飛
    び火してくるのはまっぴらごめんよ」
    などと、のたまっている声が聞こえた。
    
    本来なら
    「ぬわぁにぃ。貴様ぁ、アニキに向かってそのいい草はなんだ!」
    と、きつく叱り飛ばす所だが、その後の展開は
    「だって真実じゃない。じゃあ何? 兄貴はどこかで働いているわ
    け? どこに勤めてるの? いくら給料もらってるの? ウチにい
    くらか入れてるの? 妹にお小遣いくらいくれてもいいんじゃない
    の?」
    
    まことに情けないけれど、そんな妹の激しい口撃に反論できない自
    分がすぐに想像できてしまい、結局すごすごと自室で妬け酒ならぬ
    妬けポカリを飲んだりした。
    
    とにかく、どこかにあるはずだ。俺を必要とする職場が。
    
    90日の失業手当(基本手当)さえ切れた今、就職情報誌を繰る
    児島ヨシオの目は、ますます充血してくるのであった。
    
    
    「マジっ?」
    中学時代の同級生赤月健吾の言葉に、児島ヨシオは一瞬血流が停止し
    てしまった。
    
    「何の技術も資格もない俺に、給与が40万なんて仕事があるの?」
    「まさか、それって年間じゃないだろうな」
    「いや、別に赤月のことを疑うわけじゃないんだけど、おいしい話
     には裏があるってよくいうだろ?」
     
    
    児島ヨシオは質問とも独り言ともとれる言葉を発した。
    
    「大丈夫だって。俺が中学時代の同級であるお前を騙すわけないじ
     ゃん」
    中学時代、赤月と嘘つきは紙一重、などと影口を叩かれていた彼は
    そんな過去など存在しないかのように自信満々の笑みを見せた。
    
    
    「そ、そうだな」
    児島ヨシオは頷いた。
    
    これはチャンスだ。このチャンスを生かさない手はない。これで
    あの生意気な妹の奴を黙らせることができる。妹を懲らしめる自身
    の凛々しい姿にニヤつきながら、児島ヨシオは赤月の紹介を受けた。
    
    
    「あの、給与は本当に一月40万貰えるのでしょうか?」
    小さな応接室でテーブルを挟んで座る経営者に児島ヨシオは尋ねた。
    
    「ええ、ウチは一月“40万”出しますよ」
    社長は即答し、大丈夫だよと付け加えた。
    「よ、よろしくお願いします」
    児島ヨシオは立ち上がり、深々と頭を下げた。
    
    
    

    「な、なんじゃこりゃ?」
    初任給の入った封筒を開け中を確かめた児島ヨシオは、何度もその
    目を擦った。しかし、いくらみてもそれは見間違いなんかじゃなか
    った。
    
    「確かに40万あるだろ?」
    児島ヨシオの苦情にもかかわらず、社長は悪びれた様子など微塵
    もなく平然と答えた。
    
    「40万っていっても、これはウォンじゃないですか」
    「そうだよ。40万ウォン、だ。それが何か?」
    「だって、ここは日本ですよ。円で支給するのが当然でしょ!」
    
    「君ね、労動基準法をみたことある? そこの第24条に賃金
     通貨で支払うこと、と定められている。しかし、その通貨単位
     については規定がない。そこで僕は調べた。特別法である労基法
     にないのならば、と一般法である民法をね。
     
     そこにはこうある。民法第402条第1項。
     『債権の目的物が金銭であるときは、支払人である債務者は、ど
     の通貨で弁済してもよい。ただし、ある特定の通貨で支払うとり
     決めがあれば、決められた通貨で支払わなければならない』とね。
     
     そもそも僕がいつ君に“円”で支払うといった? 確かにウチは
     一月40万出すよ、とはいった。でも40万“円”とはいってい
     ない。
          
     僕としてはインドネシア ルピアでもベトナム ドンでもよかった
     んだ。けどウチのカミさんが韓流ブームで何度も韓国に行っててさ、
     ウォンがかなり手元に残ってるんだよ。
     
     また行く気満々だけど、その時はそのときさ。とにかく僕は約束
     通り40万支払ったんだ。君に文句を言われる筋合いじゃない」
     
     まさかこの先もずっと円以外の通貨で支払う気じゃないだろうな。
     腋の下に汗が滲む。
     
          
     確かにお金には違いない・・・けどさ。
     その国で働いてるんならまだしもここは日本だぜ。
     児島ヨシオは苦悶する。
     
     


     危うし?! 児島ヨシオ。どうする? 児島ヨシオ。
     


     
     ※ 登場人物である児島ヨシオは、あの「そんなの関係ねェ」の
       小島氏ではないです。    当然か。  ^^;


     さてさて、この社長の言い分は通るのか? 否か?

     
     
     つづく・・・来年まで。




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―――――――――――――――――――――――――――――――――――


◇ 編集後記


  いつの間にやら師走ですねェ。

  さて、今年の漢字一文字は「偽」という1年でしたが、皆さんにとっては
  どんな1年でしたか?
  
  「真」であれば何よりです。
  
  そこまではいかないな、という場合でも「心」が温かな1年であったのな
  ら「よかったですね」といってもいいんじゃないでしょうか。  ^^

  あるいは「苦」という1年だったという方。年が変わることをきっかけに
  新たな気持ちで取り組んでみてください。
  
  本気で取り掛かれば、何かが変わるやも知れません。
  
  決して「逃」なんてことは考えない。
  
  もっとも、どうしてもダメな時はとっとと「逃げちゃえ」、ですけどね。
  
  
  ちなみに田中の1年はまだまだ「忍」だったかな。  ^^;


  
  それでは、少し気が早いのですが、皆さん、
  
  『メリー・クリスマス & ハッピィー・ニューイヤー』
  

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発行元 :  たなか社会保険労務士事務所


       社会保険労務士/キャリア・コンサルタント

       
       田中 雅也


       e-mail  info@syarousi-tanaka.com


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