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平成22年施行 改正労働基準法について

平成21年1月15日 第64号
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人事のブレーン社会保険労務士レポート
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目次

1.平成22年施行 改正労働基準法について
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1.平成22年施行 改正労働基準法について

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<1> はじめに

(1)はじめに

今回は労働基準法改正について取り上げた。
施行は平成22年4月1日である。

平成10年、平成15年に労働基準法の改正があったが、今回は割増賃金率と
年次有給休暇についての改正であり、近年の改正では一番実務に影響してくる
であろう。
給与計算システムや勤怠管理システムについては、プログラムの修正が簡単に
出来ない場合もあり早めの対策を必要とすることから今回のテーマとした。

法施行直前に施行規則が出される為、必要に応じて施行直前にも取り上げてみ
ようと思う。

因みに前回の平成15年改正の内容は、このメルマガの創刊号のテーマであっ
た。
http://archive.mag2.com/0000121960/20031215094000000.html?start=60
5年以上もメルマガを毎月発行していることとなり、時間の長さを改めて感じ
るとともに、読んで頂いている皆様方に心より感謝を申し上げたい。

(2)概要

現行の労働基準法では、時間外労働について2割5分増、休日労働については
3割5分増とされており、深夜時間帯では2割5分上乗せされた割増賃金
になる単純な制度であった。

今回の改正で、休日労働及び深夜労働の割増率は変わらないが、いわゆる残業
時間についての割増率が複雑になった。

1)「月45時間まで」
2)「月45時間を超え60時間まで」
3)-1「月60時間を超えた大企業」
3)-2「月60時間を超えた中小企業」

に分類されるようになった。
また3)-1の場合でも2つのケースに分かれる。

まず原則である月60時間を超えたケースについて述べてみたいと思う。

<2> 時間外労働の割増率の引き上げ

(1)月60時間を超えた場合の原則的割増賃金の取り扱い
(改正法第37条1項但し書き)

1ヶ月60時間を超える時間外労働については割増賃金が現行の2割5分増か
ら5割増に引き上げられる。

これは時間外労働についての割増率であり、月60時間を超える時間外労働
行っている時間帯が午後10時より午前5時までの深夜時間帯である場合には、
これに深夜時間帯割増賃金率2割5分が上乗せされるため、7割5分の割増
率となる。

1ヶ月とは歴月のことではなく、賃金精算期間と考えて問題はない。

また割増賃金の計算の基礎となる賃金等についての改正点はないから、「通常
労働時間賃金の計算額」に一定の割増率を乗じればいい。

これが原則的な取り扱いであり、2つの例外的取り扱いがある。

(2)有給休暇を与えた場合の割増賃金率の特例
(改正法第37条第3項)

1)内容
原則では月60時間を超える時間外労働では5割増の賃金を支払う事となって
いるが、60時間を超過した時間について、有給休暇を付与した場合には、そ
有給休暇を付与した時間分については2割5分増の賃金で良いとされた。
ここでいう有給休暇とは労働基準法第39条に規定する年次有給休暇のことで
はなく、年次有給休暇とは別途に、時間外労働の対償として有給で実際に休ま
せた場合である。
第39条の年次有給休暇を取らせても、割増率の減率対象にはならないので注
意が必要である。

2)労使協定が必要
この制度の導入条件として、事業場の過半数代表者との書面による労使協定
必要であるので留意されたい。
定める内容は「労働基準法第37条第1項但し書きの規定により割増賃金を支
払うべき労働者に対して、当該割増賃金の支払いに代えて、通常の賃金が支払
われる休暇を厚生労働省令で定めるところにより与えられることを定めた場合」
となっている。
上記内容で協定を締結すればよく、労働基準監督署長への届け出は法令上必要
とされていない。

3)有給の賃金額は
労働基準法第39条の年次有給休暇では3通りの賃金支払い方法が記載されて
いるが、本条による有給休暇については前述の労使協定の記載内容をみると「通
常の賃金が支払われる休暇」とあり、改正法第39条においても第37条関係
賃金支払い方法について言及がないので、平均賃金社会保険標準報酬
額での支払いは認められていないと考えて良いであろう。

4)まとめ
実際の細かい計算方法については、通達を待たなければならないが、60時間
を超える時間外労働であっても、法第39条とは別の有給休暇を取らせれば従
前通りの2割5分増の賃金を支払えばよいことになっている。

振替休日ではない代休がこの有給に該当すると考えられるが、この有給の付与
労働基準法24条の賃金支払い5原則から同一賃金精算期間である必要があ
ろう。
変形労働時間制のように同一週内とする要件については通達を待つ必要がある
が、私見では2割5分は支払う義務がある以上、同一賃金精算期間のみの要件
で足ると考える。

5)事例
分かりにくい点もあると考え事例で説明したい。
時間外労働を76時間行った場合

60時間までは1.25の賃金
60時間を超えた、16時間分の賃金については1.5の賃金を支払わなけれ
ばならない。
厚生労働省の示した事例では、この16時間について1.25とする場合には、
原則的な制度との賃金差額は1時間あたり0.25となり、「16時間×0.25
=4時間」の計算により4時間の有給を付与すれば1.5に代えて1.25の
割増率でよいと明示されている。

(3)中小企業への経過措置
(改正法第138条)

中小企業事業主は第37条但し書きで定める月60時間を超える場合の5割の
割増賃金率の適用を猶予される。
この猶予は3年後に見直すとされている。
法律では「当分の間」とされており、経済状況が厳しい場合等には猶予措置の
延長もあり得るということである。

中小企業の定義は以下の通りである。
1)資本金の額または出資の総額
小 売 業 5,000万円以下
サービス業 5,000万円以下
卸 売 業     1億円以下
上記以外      3億円以下

「または」

2)常時使用する労働者
小 売 業     50人以下
サービス業    100人以下
卸 売 業    100人以下
上記以外     300人以下

ここでの注意点は2点。
第一は、上記定義は「かつ」ではなく、「または」であるという点。
資本金要件か労働者数要件のどちらかに該当した場合には中小企業の猶予措置
の適用が「受けられるという」ことである。

第二は、企業単位の人数であるという点。
労働基準法では事業場単位で常時労働者数を計算し、36協定就業規則等の
労働条件整備を行うこととしている。
しかしながら第37条但し書きでは企業全体の人数で要件を判断するというこ
とである。

また常時使用する労働者とは在籍人数であり、分かり易くいうとタイムカード
の数である。

<3>月60時間までの時間外労働に対する割増率引き上げの努力義務

<2>では月60時間を超える時間外労働の場合の割増率を原則、例外に分け
てみてきた。
改正法では、月45時間を超える時間外労働についても割増率を引き上げる努
力をする義務を課した。
この努力義務は、<2>の場合と違い企業規模にかかわらず適用される。
中小企業主については月45時間を超える時間外労働について、それ以外の企
業は月45時間を超え60時間までの時間についてである。

これにあわせて特別条項付き36協定においては月45時間を超える時間外労
働に対する割増賃金率を定めることが必須とされた。

なお36協定の限度時間については、法施行日までに労働政策審議会にて議論
の上改正される予定となっているが、現時点でどの様になるかは不明である。


<4> 年次有給休暇の時間単位での付与

(1)現行の年次有給休暇の考え方

この項で説明する年次有給休暇とはすべて法39条に規定する年次有給休暇
ある。

現行法の年次有給休暇に対する考え方は、暦日単位で労働を免除し心身の疲労
回復を図るという趣旨であり、時間単位での付与は認められていなかった。
筆者は独立行政法人の非特定化のお手伝いをしたことがあるが、公務員では勤
務時間法により時間単位の付与が認められているが、労働基準法では上記理由
により暦日単位とされており、「不利益変更だ」とお叱りを受けた記憶がある
が、今回の改正で認められるようになった。

(2)労使協定が前提

まず労使協定を締結し、年次有給休暇について時間単位で付与できる旨を定め
る。
この労使協定は法令上、労働基準監督署長への提出の必要はない。

労使協定を締結しなければ従前通り暦日単位を原則として、最小半日単位の付
与で良いとされている。

労使協定で規定する内容は以下の通りである。

1 時間を単位として年次有給休暇を与えることができるとされる労働者の範

2 時間を単位として与えることができることとされる有給休暇の日数(5日
以下に限る)
3 厚生省令で定める事項

以上である。
労働者の範囲を定めることが要件であるから、「正社員のみ」や「営業職のみ」
といった規定も可能である。

(3)時間単位の付与

時間単位で付与できるのは5日を限度とするとされている。
労使協定を締結すれば、その対象の労働者より請求された場合には使用者は拒
否できないとされている。

(4)時間で休暇を取得した場合の賃金計算

賃金の支払い方法については従前通り「通常の賃金」「平均賃金」「労使協定
を前提とした社会保険標準報酬日額」の時間換算額が認められているが、加え
て「厚生労働省令で定めるところにより算定した額の賃金」が追加された。


<6>まとめ

平成22年施行の改正労働基準法は実務に非常に影響がある。
今までの労働時間管理の延長線上で考えていては運用に問題を生じる可能性が
ある。
厚生労働省令がでるまで不明な点があるが、どの様な制度が望ましいかしっか
りと検討しなければならない。

現行法でも企業の実態にあった労働時間管理制度の提案をしているが、改正法
ではこれまで以上に個々の企業実体に即した労働時間管理の構築が必要となる。

是非ご相談頂きたい。

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編集責任者 特定社会保険労務士 山本 法史
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