• HOME
  • コラムの泉

コラムの泉

このエントリーをはてなブックマークに追加

専門家が発信する最新トピックスをご紹介(投稿ガイドはこちら

規程に反する労使慣行の効力

◆事例:規程に反する労使慣行の効力

 当社の就業規則では休憩時間を昼のみ45分と定めていますが、実際の現場で
はこれと別に午後15分の休憩も取っています。今般、生産性を上げるため就業
規則どおりにしようとしたところ、従業員から慣行に反するとクレームが入り
ました。運用を規則どおりにするだけなので問題ないと思うのですが。
 なお、この慣行はかなり以前から行われており、管理職も承知していますが
経過は判然としません。

◇回答----------------------------------------------------------------
 一定の条件を満たす労使慣行は、就業規則に定めがなくとも有効とされます。
また、就業規則に抵触するような慣行であっても、法令に違反しなければ労使
慣行が優先されます。事例の場合、即座に午後の休憩を廃止することは困難で
す。

■解説----------------------------------------------------------------

 事実上長年に渡り、就業規則に定めがないか、あってもこれとは異なる取り
扱いが行われていることがあります。いわゆる「労使慣行」と呼ばれるもので
すが、これは現場において一定の取り扱いが長期に渡り継続して行われている
場合に、これを規範とするというものです。

 事例のような休憩の取り扱いはもちろんのこと、就業時間休日、休暇、賃
金、退職金、安全衛生、福利厚生等に至るまでおよそ労働条件となるものにつ
いて、就業規則賃金規程及び労働契約にに定めがなくとも事実上行われてい
る場合には、今後も慣行として義務づけられることとなります。この場合、労
使慣行は就業規則労働契約等と一体化して労働条件を形成します。また、就
業規則に反する慣行であっても、法令に違反しない限りは就業規則に優先され
ます。

 但し労使慣行といっても、事実上行われているもの全てではなく、一定の条
件があります。基準法では労使慣行の規定はありませんが、民法第92条が根拠
となります。特に労働関係においては判例も多数あり、次の3つの条件が定着
しています。
 一つは、同種の行為又は事実が長期間反復継続して行われていること。
 二つは、当事者がこれに従うことを明示的に排斥していないこと。
 三つは、その慣行について、その内容を決定しうる権限を持つか、又は取り
    扱いの裁量権を持つ者が、これに従うことを当然と考えていること。

 事例の場合は、かなり以前から管理職も休憩を取っていることなどから、い
わゆるヤミの取り扱いとは考えられず、労使慣行と言えます。厳密に言えば、
現場の管理職に労働条件の決定権限があるかとの問題もありますが、少なくと
も現場で長期間容認してきた取り扱いそのものは、会社全体の黙認があったも
のと見なされるのが一般的です。

 労使慣行の内容を変更するには、一定の手続きが必要となります。その内容
就業規則に関わるのか労働契約に関わるのかを見極め、それぞれの変更手続
きに従って実施することが必要です。
 ベストな方法は、労使協定において、既に慣行として行われていた内容を改
めて確認し、今後は取りやめる旨の明示をすることです、生産性向上のため、
黙認していた休憩時間を廃止するというのは一応合理的な理由はありますが、
いきなり一方的な変更はトラブルの元になります。充分時間をかけて過去の経
緯や変更の必要性を説明し、意見交換を行うべきです。その上で、場合によっ
ては経過措置や猶予期間を置くなどの措置も必要となる場合もあります。

 従業員の頭には就業規則とか労使慣行とかの意識はまずありません。日々の
業務の中で長年やってきたことが当たり前と思っており、体にしみついていま
す。このような状態の中で労働条件を変えるのは大変骨の折れる作業となりま
す。
 もし規程等と事実上の取り扱いが異なっている事例があったら、早急に整合
性をとるべきです。早めに修正すれば、漏れていたとか例外だったということ
で否認し易いものです。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【メルマガ】 労務に効く薬
http://blog.mag2.com/m/log/0000102365
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


▼ 投稿記事の著作権は、記事の執筆者に帰属します。無断で転載・複製・頒布することを深く禁じます。
▼ 当サイトの全てのコンテンツ(コンテンツ内に投稿された情報を含む)・リンク先の情報をご利用される際には、専門機関に問い合わせるなど十分な確認をなさってから実践するようにしてください。
▼ 当サイトの全てのコンテンツ(コンテンツ内に投稿された情報を含む)・リンク先の情報をご利用されたことによる損害等の保証は一切負いかねますので予めご了承願います。

絞り込み検索!

現在22,361コラム

カテゴリ

労務管理

税務経理

企業法務

その他

≪表示順≫

※ハイライトされているキーワードをクリックすると、絞込みが解除されます。
※リセットを押すと、すべての絞り込みが解除されます。

スポンサーリンク

経営ノウハウの泉より最新記事

スポンサーリンク

労働実務事例集

労働新聞社 監修提供

法解釈から実務処理までのQ&Aを分類収録

注目のコラム

注目の相談スレッド

スポンサーリンク

PAGE TOP