◆事例:転勤命令
地方の営業所長として栄転させたい社員がいますが、老親の世話や子供の教
育等の理由で拒んでいます。この場合でも転勤は強制できますか。
◇回答----------------------------------------------------------------
就業規則に「転勤に応ずるべし」との定めがあり、転勤が業務上必要である
等の状況があれば、転勤は
業務命令として行うことができます。これに従わな
い場合は
懲戒処分も可能です。
ただ、これにより貴重な戦力を失うこともあり、必ずしも規則どおり進める
ことは得策でないこともあります。
■解説----------------------------------------------------------------
転勤を命じられた
従業員は、それまで安定した生活基盤を変えざるを得ない
ため、経済的精神的に大きな影響を受けます。単身赴任はなおのこと、家族帯
同での転居であれば家族も様々な不利益を被ることとなります。
しかしながら会社としても、転勤は組織活性化や適正配置等のため必要な施
策であることから、双方の利害が対立しやすくトラブルの元になります。
転勤を巡っては多くの判例があり、概ね次の要件で確立されています。
1
就業規則に「転勤命令に応ずるべし」との定めがある。
2 転勤が業務上の必要から命ぜられたものである。
3 不当な動機や目的がないこと。
4
従業員が受ける不利益の受忍限度が通常の範囲内であること。
これによれば、一般的な転勤命令を
従業員は拒否できないこととなります。
もちろん
従業員の受ける不利益を会社がどのようにカバーしたかも問われます。
少なくとも懲罰を目的とした転勤は、訴えられればアウトです。
特に問題となるのが、業務上の必要性と不利益の限度の2点です。
業務上の必要性については、余人を持って替えがたいまでの厳格な要件は必
要とされないようです。よくあるローテーション転勤のような対象者を厳選し
ないような転勤であっても可とされます。
ところが
従業員の受忍限度については難しい問題を含んでいます。転勤した
らどのような不利益があるかだけでなく、判例においては会社がその不利益を
いかに緩和しようとしたか、努力の有無や程度も判断されます。
転勤の形態は単身赴任と家族帯同の2つのケースが考えられ、それぞれによ
り状況も異なってきます。一般的には不利益の対価として手当を支給するケー
スが多いですが、これでこと足れりと考えるだけでは済まないことも多くあり
ます。
単身赴任であれば帰郷の頻度により帰宅旅費の負担の問題もありますし、家
族帯同であれば金銭面の他、子女の教育や親の介護の問題も絡んできます。
特に最近はこの問題への関心も高まっていることから、会社の考えを押しつ
けることも困難になりつつあります。
従業員が転勤を拒否する真の理由の多くは、今までと環境が異なることへの
不安や面倒臭さにあるので、これらの理由しかないのであれば問題なく転勤を
命ずることができます。しかし事例によっては生活の破綻を招きかねないこと
もあり得ます。
判例でも、子供に健康上の問題があり妻だけでは世話をできないことから単
身赴任命令を無効としたもの、家業を営む両親の体調不良により家族帯同の転
勤命令を無効としたもの等があります。
いずれにしても転勤命令は業務運営の必要から行うものであり、転勤を巡る
トラブルで
従業員を処分し辞められたりしては元も子もありません。再就職の
難しい現在では、正面切っての拒否はしないものの「いつか辞めてやる」と根
に持つケースも多いです。
転勤命令を発する場合は、プライバシーに配慮しつつも、極力本人の家族状
況等も把握して行う必要があります。手当による不満解消策だけでなく、本人
への打診の方法や必要性の説明、戻れる時期の有無等、将来的な見通しまで含
めたソフト的な政策も肝心です。大変手間がかかりますが、この辺りをどう活
かしていくかが
労務屋の手腕の見せ所です。
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◆事例:転勤命令
地方の営業所長として栄転させたい社員がいますが、老親の世話や子供の教
育等の理由で拒んでいます。この場合でも転勤は強制できますか。
◇回答----------------------------------------------------------------
就業規則に「転勤に応ずるべし」との定めがあり、転勤が業務上必要である
等の状況があれば、転勤は業務命令として行うことができます。これに従わな
い場合は懲戒処分も可能です。
ただ、これにより貴重な戦力を失うこともあり、必ずしも規則どおり進める
ことは得策でないこともあります。
■解説----------------------------------------------------------------
転勤を命じられた従業員は、それまで安定した生活基盤を変えざるを得ない
ため、経済的精神的に大きな影響を受けます。単身赴任はなおのこと、家族帯
同での転居であれば家族も様々な不利益を被ることとなります。
しかしながら会社としても、転勤は組織活性化や適正配置等のため必要な施
策であることから、双方の利害が対立しやすくトラブルの元になります。
転勤を巡っては多くの判例があり、概ね次の要件で確立されています。
1 就業規則に「転勤命令に応ずるべし」との定めがある。
2 転勤が業務上の必要から命ぜられたものである。
3 不当な動機や目的がないこと。
4 従業員が受ける不利益の受忍限度が通常の範囲内であること。
これによれば、一般的な転勤命令を従業員は拒否できないこととなります。
もちろん従業員の受ける不利益を会社がどのようにカバーしたかも問われます。
少なくとも懲罰を目的とした転勤は、訴えられればアウトです。
特に問題となるのが、業務上の必要性と不利益の限度の2点です。
業務上の必要性については、余人を持って替えがたいまでの厳格な要件は必
要とされないようです。よくあるローテーション転勤のような対象者を厳選し
ないような転勤であっても可とされます。
ところが従業員の受忍限度については難しい問題を含んでいます。転勤した
らどのような不利益があるかだけでなく、判例においては会社がその不利益を
いかに緩和しようとしたか、努力の有無や程度も判断されます。
転勤の形態は単身赴任と家族帯同の2つのケースが考えられ、それぞれによ
り状況も異なってきます。一般的には不利益の対価として手当を支給するケー
スが多いですが、これでこと足れりと考えるだけでは済まないことも多くあり
ます。
単身赴任であれば帰郷の頻度により帰宅旅費の負担の問題もありますし、家
族帯同であれば金銭面の他、子女の教育や親の介護の問題も絡んできます。
特に最近はこの問題への関心も高まっていることから、会社の考えを押しつ
けることも困難になりつつあります。
従業員が転勤を拒否する真の理由の多くは、今までと環境が異なることへの
不安や面倒臭さにあるので、これらの理由しかないのであれば問題なく転勤を
命ずることができます。しかし事例によっては生活の破綻を招きかねないこと
もあり得ます。
判例でも、子供に健康上の問題があり妻だけでは世話をできないことから単
身赴任命令を無効としたもの、家業を営む両親の体調不良により家族帯同の転
勤命令を無効としたもの等があります。
いずれにしても転勤命令は業務運営の必要から行うものであり、転勤を巡る
トラブルで従業員を処分し辞められたりしては元も子もありません。再就職の
難しい現在では、正面切っての拒否はしないものの「いつか辞めてやる」と根
に持つケースも多いです。
転勤命令を発する場合は、プライバシーに配慮しつつも、極力本人の家族状
況等も把握して行う必要があります。手当による不満解消策だけでなく、本人
への打診の方法や必要性の説明、戻れる時期の有無等、将来的な見通しまで含
めたソフト的な政策も肝心です。大変手間がかかりますが、この辺りをどう活
かしていくかが労務屋の手腕の見せ所です。
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