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採用調査-2

採用調査-2★

 前回は採用調査について説明しましたが、正面切って内外ともに「わが社は
採用にあたり調査をしてます」と言ってはなりません。なぜなら、職業安定法
第5条の4では「労働者の募集に必要な範囲内で、応募者の個人情報を収集、保
管、使用しなければならない」旨規定されています。さらに、同条第2項では
「求職者等の個人情報を適正に管理するために必要な措置を講じる」べきこと
も要求されています。

 実務的には、これに基づく指針(労働省告示)が出されており、原則として収
集してはならない個人情報等は次のとおりとなっています。

1 人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因と
 なるおそれのある事項
  ・家族の職業、収入、本人の資産等の情報
  ・容姿、スリーサイズ等差別的評価につながる情報
2 思想及び信条 
  ・人生観、生活信条、支持政党、購読新聞・雑誌、愛読書
3 労働組合への加入状況
  ・労働運動、学生運動、消費者運動その他社会運動に関する情報

 昔は聞いて当たり前の事項も多く含まれますが、役所の説明では、これらは
職務遂行能力と全く関係のない内容であり、本人に責任のない事項や本来自由
であるべき事項等、本人の適性、能力以外のことを採用基準にすることは就職
差別につながる恐れがあり、身元調査の結果には無責任な風評、予断、偏見と
いったものが存在する恐れがあるためです。

 さらに、個人情報の収集は、本人から直接又は本人の同意を得て第三者から
収集する等、適法かつ公正な手段によって行わなければなりません。従って、
これらの情報を収集するような質問や応募書類の使用、身元調査等を行っては
いけないということです。

 これに違反をした場合は、職業安定法に基づく改善命令が出される場合があ
ります。この命令に従わないと、6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金があ
り得ます。実際に発動されたかどうかは不明ですが。

 と、ここまではあくまでも真面目な建前論。実際の採用現場でそのまま通用
しないのも事実です。ではどうすべきか。
 職業安定法では、労働者個人情報の収集は本人の同意がある場合まで制限
してはいません。要は、本人が自ら述べたり、又は諾否の自由を与えて質問す
ることは可能と考えられます。一部には、採用をエサに釣るのは不当だ、との
意見もありますが、程度問題でしょう。面接で「もし答えたくない場合はいい
ですが、あなたは・・・」的なやりとりは良く見られる光景です。

 ただそれでも注意したいのは、セクハラ系の質問です。相手が話しに乗って
くるタイプがどうか、後でチクらないかどうか、面接担当者は一瞬で判断しな
ければなりません。本当の意味のベテランかどうかの分かれ目です。

 一方、採用調査については、本人の同意を取って行うことは通常あり得ませ
ん。面接でどうしても不安が残ったり、質問できなかったけどどうしても知っ
ておきたいという場合、覚悟の上で調査をかけることが多いため、秘密裏に行
わざるを得ないこととなります。
 しかも不思議なことに、調査会社の報告書様式は、上記で役所が禁止した事
項をきちんと網羅されているケースも多いです。やっぱ、皆知りたいのね。

 何だか後ろめたいですが、採用にあたっての調査は企業の危機管理の面から
必要なケースもあります。もし、問題ある応募者を採用してしまった場合、将
来にわたって大きなリスクを抱え込むことになり、時には企業存亡の危機にも
なりかねません。一旦、変なのを採用すると解雇するには莫大なエネルギーが
必要となります。応募者の中からどの人物を採用するか、選択の自由がある内
に取捨選択する方がベターです。

 当然、この調査の存在は、採用責任者と経理以外の者には知られないように
すべきです。調査報告書の保管が必要な場合は、鍵のかかる金庫等に厳重に保
管し、長期保管も避けるべきです。
 それと、これらの受け渡しも要注意。相対受け渡しが絶対です。昔はFAX
で送ってくるなんてのもあったようですが、今やったら大変なことに。

 また、履歴書等を含め、応募者の書類の取扱いは細心の注意が必要です。む
やみにコピーしたり、机上に放置したり、不用意な処分等、個人情報が漏れた
り改ざんされたりしないよう厳重な管理が求められるほか、不要となった場合
は適切に返却したり廃棄することも必要です。特に今年4月からは個人情報
護法も施行されることから、労働者の権利意識も高まっており、万一漏洩があ
った場合、百万円単位の賠償を求められることさえあります。

 なお、蛇足ながら、採用調査は減少傾向にあるようで、ごく限られた会社で
行われるだけかも知れませんが、今後転職する気でいる方は、ご近所の人に会
ったら挨拶ぐらいはしておきましょう。調査員は自宅周辺の聞き取り調査をす
ることも多いので、感じが悪いと悪口雑言書かれることにもなりかねません。
たとえ風評であったにせよ、損するのは自分ですから。


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