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労務管理

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使用者側が設ける労働条件に制限はないのでしょうか?

著者 SENNA さん

最終更新日:2006年02月01日 23:18

知人が、求人情報誌を見て、ある会社の面接を受け合格したため、さっそくその会社の研修に参加したところ、当該情報誌には記載のない、次の条件の提示を受け、納得がいかないものの、流されるままに労働契約を締結してしまいました。
(1)時給1,000円として支給するものの、労働者本人から退職を申し出たときは、会社(使用者)は、労働期間の開始日に遡って、時給を610円として賃金の精算を行う。
(2)会社が労働者の能力が不足していると判断し当該労働者を解雇したときは、時給はそのまま1,000円とし、上記(1)のような精算は行わない。

なお、会社は労働契約締結時には使用者に対して所定の労働条件については書面にて交付する義務を負っているにもかかわらず、知人には、労働契約書への署名捺印後、そのコピーなど一切書面が渡されていません。そのようなこともあって、労働契約の期間については、期間の定めがあるのかそうでないのか、本人はよく覚えていません。

ここで質問させていただきます。
①上記のように労働者にとって非常に理不尽な条件(労働者から退職を申し出たときの不利益な賃金精算)による労働契約は有効なのでしょうか?
②上記のように労働者にとって明らかに不利となる労働条件は、労働基準法上認められるものなのでしょうか?賃金の支給基準などの労働条件を定めるにあたって、労働基準法上、制限は設けられていないのでしょうか?

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Re: 使用者側が設ける労働条件に制限はないのでしょうか?

著者神戸元町労務管理サポートさん (専門家)

2006年02月03日 11:46

①上記のように労働者にとって非常に理不尽な条件(労働者から退職を申し出たときの不利益な賃金精算)による労働契約は有効なのでしょうか?

「時給1,000円として支給するものの、労働者本人から退職を申し出たときは、会社(使用者)は、労働期間の開始日に遡って、時給を610円として賃金の精算を行う。」

二つの場合が考えられます。

1 労働契約期間の定めがある場合は、契約期間の途中でやめた場合、使用者から損害賠償の請求をされる可能性はあります。理論的には、従業員退職によって会社が実際に被害を被った場合には、損害賠償の請求をすることは可能です。
 しかし、この場合でも、契約期間の途中退職と会社が被った損害との間に相当の因果関係がある場合に限られ、しかも損害賠償額も会社が実害を受けた範囲内に限られますので、多くの場合、会社が被った損害を確定することは困難と考えられます。ですから、実際に損害賠償を請求するケースは稀だと思います。仮に損害賠償の請求をするにしても会社が被った損害でなくてはなりません。

ご質問のようにあらかじめ(1000円ー610円=390円)×労働時間数というように金額を決めておくことは賠償予定の禁止労働基準法第16条)に抵触します。

労働基準法第16条「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、または損害賠償を予定する契約をしてはならない。」
具体的には、「途中でやめたら、違約金を払え」とか「会社に損害を与えたら○○円」払え」という労働契約をすることは禁止されているのです。
(1000円ー610円=390円)×労働時間数を精算するというのは、これらと同じことを言っているので、実行したら労働基準法に違反するということになります。

2 労働契約期間の定めがない場合は労働者はいつでも辞めることができます。退職の申し出について、会社の承認までは必要ありません。しかし、退職には一定のルールがあり、それに従った手続きをとることが必要です。
就業規則がある場合には、その規定に従って退職を申し出ることが必要です。また、就業規則に定めがない場合では、労働者は14日前に申し出ることによって、いつでも契約を解除できます(民法第627条)

 この場合はそもそも会社は損害賠償の請求をすることはできないということになります。なおさら労働基準法第16条違反ということになり、1と同様にこのような労働契約をしてはいけません。


②上記のように労働者にとって明らかに不利となる労働条件は、労働基準法上認められるものなのでしょうか?賃金の支給基準などの労働条件を定めるにあたって、労働基準法上、制限は設けられていないのでしょうか?

このような不利な労働条件については①の回答のとおりです。

労働条件については労働基準法第15条で書面の明示が要求されています。
(労働条件の明示)
第15条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法(書面ということです。)により明示しなければならない。
2 前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。

労働基準法労働条件の最低基準として定められ強行法規といって守らなければならないものです。とりわけ賃金は最も重要な条件ですから、労働基準法第24条で規制され、また最低賃金法により最低賃金が定められています。現在の地域最低賃金では608円、609円、610円という県があります。それ以外の県では610円以下の契約はできません。

会社の所在地を管轄する労働基準監督署に相談することをお勧めします。



Re: 使用者側が設ける労働条件に制限はないのでしょうか?

著者SENNAさん

2006年02月16日 00:26

先日は、ご教授いただきまして大変ありがとうございました。

本件については、関係文献等の調査・検討を行い、当方もご教授いただいたように賠償予定の禁止に抵触するものと考えておりました。

念のため、本件について所轄の労働基準監督署に電話で確認したところ、労働者側から退職の申し出をしたことによる時給の減額精算(時給1,000円のところを時給610円にて精算すること)は労基法16条に定める賠償予定の禁止にはあたらない、という回答でした。なお、最低賃金である610円もクリアしているので問題ないとのことでした。
当方は、労働者側の申し出による退職の場合に、1時間あたり390円減額されてしまうということは、違約金または賠償額の予定に相当する性質を持つものであって、明らかに同条の規定に抵触しているのではないかと確認したのですが、労働基準監督署の考え方に変化はありませんでした。

私は労働基準監督署の回答にまったく納得できません。
どうか本件につきまして再度ご教授いただきますようお願いいたします。

ここで、前回不明だった知人の労働契約が2週間単位のものだったことが判ったのですが、2週間目の最終日終業前に、会社側から知人に対して次回の契約更新についての意思確認があったそうです。知人は仕事が自分に適していないことを理由に次回更新を断ったのですが、会社側は、これを理由として、役務を提供した2週間分の賃金を時給610円に減額するという説明をしたそうです。(これって会社側の契約違反なのではないでしょうか?)
そこで、知人は減額されることを知ったため、もう少し頑張ってみる旨を会社側に申し出たところ、会社側は、そのような中途半端な気持ちで働いてもらっては困ると言って拒否しました。

このような会社側の対応に憤りを憶え、なんらかの対応ができないものかと思案しております。
ぜひとも、この件の対応についてご教授いただきますようお願い申しあげます。

Re: 使用者側が設ける労働条件に制限はないのでしょうか?

著者神戸元町労務管理サポートさん (専門家)

2006年02月16日 16:44

> 本件については、関係文献等の調査・検討を行い、当方もご教授いただいたように賠償予定の禁止に抵触するものと考えておりました。
>
> 念のため、本件について所轄の労働基準監督署に電話で確認したところ、労働者側から退職の申し出をしたことによる時給の減額精算(時給1,000円のところを時給610円にて精算すること)は労基法16条に定める賠償予定の禁止にはあたらない、という回答でした。なお、最低賃金である610円もクリアしているので問題ないとのことでした。
> 当方は、労働者側の申し出による退職の場合に、1時間あたり390円減額されてしまうということは、違約金または賠償額の予定に相当する性質を持つものであって、明らかに同条の規定に抵触しているのではないかと確認したのですが、労働基準監督署の考え方に変化はありませんでした。

 返事
 
 判例検索をしてみたところ、「東箱根開発事件」というのがありました。東高裁判決1977.3.31事件番号昭和50年(ネ)1801、昭和50年(ネ)2475
事案の概要は「一年間一年間勤続した場合に支給される勤続奨励手当につき、希望者には手当の月割り額を前渡し、年次途中で退職する場合には当該年度中に前貸しされた勤続奨励手当を返還する旨の制度の効力が争われた事例」です。労働基準判例検索http://www.zenkiren.or.jp/asli/owa/hanr02.p_bcall
判決理由の抜粋
右勤続手当の月割額の交付をその額面どおりに一定期間勤続した者に対して給付されるべき報奨金の前渡しとみるのが事の実相に適合するものでないことは明らかであり、実質的には正規の給与と同じく労務の対価として支払われるもの、その意味において賃金の一部たる実質をもち、前貸形式でされる右月割金額の給付は賃金の支払に相当するものとみるのが相当である・・・。そして右勤続手当の月割額の交付がこのような性質のものと解される以上、さらに進んで、被控訴人らは、控訴人(使用者)に対し、雇用契約上(該契約の形式的文言にかかわらず)自己の給付した労務の対価として正規の給与に右月割給付金額を加えたものを請求する権利を有するものと解すべく、また、勤続期間一年未満で退職し、または解雇された場合にすでに給付を受けた賃金の一部である月割給付金相当額を控訴人に返還する旨の約定部分は無効で、被控訴人らはかかる返還義務を負うものではないと解すべきである。
 けだし、実質賃金の一部を一定期間の勤続を条件として給付される勤続手当の前貸という形式で交付する前記給与方式は、さきにも指摘したように、勤続一年に満たない中途退職者(または被解雇者)に対しては賃金の一部を支給せず、またすでに支給した賃金の一部を返還する義務を負わしめるというのとその実質的内容を同じくするものであり、後者のような約定が、あるいは一定期間の就労を強制するもの、あるいは契約履行に対する制裁約定であるとして、労働基準法五条または一六条に違反し、その効力を否定されるべきものである以上、前者の給与方式についても、上記のような解釈をとらない限り、結局において使用者賃金の一部の支払義務をまぬかれ、労働基準法の右規定の趣旨を潜脱する結果となるのであって、その不当なことは明らかだからである。

 控除する理由は違っているけれど、意図は同じだと思います。誰が聞いてもわかるような「途中で辞めたら○○万円払うこと」というような単純な契約使用者もしないということだと思います。

> ここで、前回不明だった知人の労働契約が2週間単位のものだったことが判ったのですが、2週間目の最終日終業前に、会社側から知人に対して次回の契約更新についての意思確認があったそうです。知人は仕事が自分に適していないことを理由に次回更新を断ったのですが、会社側は、これを理由として、役務を提供した2週間分の賃金を時給610円に減額するという説明をしたそうです。(これって会社側の契約違反なのではないでしょうか?)

 返事
 
 2週間の労働契約期間で2週間働いたのなら、「契約期間の途中で辞めた」というこではないので、なおさら1時間につき390円控除される理由はないということではないでしょうか。単純な賃金不払ということになると思います。

 まず、使用者と交渉してみて、どうしても控除されてしまう、されてしまったということなら、再度監督署へ賃金不払ということで申告してみたらどうでしょうか。

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