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役員社宅の増改築について

著者 m-junpei さん

最終更新日:2013年07月05日 14:04

役員が自由に役員社宅の増改築(個人負担にて)を行えるような契約形態にすることは可能でしょうか?

役員の自宅を会社で買い上げ、社宅にする予定です。
そして、この自宅建物が大分古くなってきているため、近い将来、増改築を予定しているのですが、その増改築を、役員費用負担で自由に行えるかを検討しております。

通常の賃貸借契約の場合、大家(会社)が負担し、店子は、勝手に改築してはいけない規定になっているかと思います。少なくとも、店子が改築する際は、大家の承諾が必要と・・・。

なお、実際、税務上の役員社宅としてのメリットを享受するために社宅にしているため、都合の良いところだけ、社宅と言っているだけではないの・・・?と言われるのを危惧しています。

分かる方いらっしゃいましたら、教えてください。よろしくお願いします。

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Re: 役員社宅の増改築について

著者多湖・岩田・田村法律事務所さん (専門家)

2013年07月06日 12:09

1,会社(建物所有者)を貸主,役員を借主とする貸借契約において,「借主が自己の費用負担で自由に増改築できる」とする契約条項を設けることは基本的には可能です(この点は,賃貸契約でも社宅契約でも同様です)。

*賃貸契約と社宅契約の違いについては↓を参照願います。
http://www.tago-law.com/syakuchi.html

2,但し,契約段階で細かい取り決めをしておかないと,後々トラブルになるケースが多々あります。一例をあげると以下のとおりです。

(1)当該条項が借主に不利に作用するケース
・地震で雨漏りが生じた場合,通常は貸主には修繕義務(無過失責任)がありますが,「借主が自己の費用負担で自由に増改築できる」との条項を盾に「修繕工事も借主の費用負担でやるべきだ」と言ってくるケース。

*一般的には,大修繕(躯体部分に係る箇所等)と小修繕とを分けて,大修繕は貸主が行い,小修繕は借主が行うとしている例が多いです(尚,とりわけ貸主が事業者で借主が個人の場合,大修繕についてまで借主負担とする条項は消費者契約法等で無効とされる可能性があります)。また,マンションのような共同住宅の場合,管理組合の決議を経ずに躯体部分を改装することはマンション管理規約等で禁止されているのが通常です。

・借主が修繕・改装など必要ないと思っている箇所について,貸主が「借主は積極的に修繕・改装を行って建物の価値を維持保存すべきだ」と言ってくるケース(但し,これについては下級審レベルの裁判例では否定されています)。

・退去に際し,貸主が「借主が増改築した部分をすべて元に戻せ」(原状回復請求)と言ってくるケース。

*借主は,原則として入居時の原状に戻して貸主に返還しなければいけませんので,増改築部分についていかなる範囲で原状回復義務を負うのか予め契約で明確に定めておくべきでしょう。

(2)当該条項が貸主に不利に作用するケース
・退去に際し,借主が,「増改築により建物の価値が向上したのだから,その分を支払え」(有益費償還請求)あるいは,「高価なシャンデリアをリビングに取り付けたが,もう不要なので買い取ってくれ」(造作造作買取請求)と言ってくるケース。
*有益費償還請求や造作買取請求は,契約で予め放棄させることができるので(但し,造作買取請求は平成4年以降の賃貸借契約についてのみ放棄可),貸主側としては,しっかりとこれらの請求放棄条項を設けておく必要があります。

3,以上より,増改築を役員個人(借主)が自由に行えるとする条項を設けることは可能ですが,後々のトラブルを防ぐために,最低限

(1)増改築を認める範囲
(2)修繕義務の範囲
(3)費用負担の区分け(借主負担とする部分と貸主負担とする部分の区分け)
(4)原状回復義務の範囲

について,契約でしっかりと定めておくべきでしょう。


多湖・岩田・田村法律事務所
弁護士 多湖章
http://www.tago-law.com/

Re: 役員社宅の増改築について

著者m-junpeiさん

2013年09月06日 13:51

返信大変遅くなり失礼しました。
質の高いご回答ありがとうございました。
大変参考になりました。

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