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TOP > 記事一覧 > 人事・労務 > 2022年4月に中小企業に完全義務化!「パワハラ防止」で押さえておくべき対策まとめ
パワハラまとめ

2022年4月に中小企業に完全義務化!「パワハラ防止」で押さえておくべき対策まとめ

2021.11.02

2020年6月より『ハラスメント関連法』が改正され、従来より規定のあったセクシャルハラスメントなどについては事業主への義務を強化、さらに、これまで規定の無かった『パワハラ防止法』が新たに施行されました。

『パワハラ防止法』では、パワーハラスメント(以下、パワハラ)に該当する行為の概要や、社内でのパワハラを防ぐために企業側がすべきことについて定められています。

この記事では、パワハラ防止法で定められた企業の義務や、パワハラの定義、対策などをまとめて紹介します。

※最終更新:2021年10月


パワハラ防止法で定められた企業の義務

パワハラのない職場づくりのために、法律で定められた企業側が守るべきルールについて説明をします。

(1)「パワハラ防止に関する社内方針」の明確化、周知・啓発

社員にパワハラに該当する行為について研修などで正しく周知させ、これらの行為を禁止することを明確にします。また、パワハラを起こした社員に対する処罰の内容などもあわせて就業規則などでルール付けをします。

(2)苦情相談窓口などの設置

パワハラ被害を受けた社員が安心して相談できるような窓口担当を設け、その相談内容に応じて対応するための体制を整えます。

(3)再発防止策の実施

二度と同様のパワハラが起こらないような対策措置を講じます。

(4)パワハラ被害者に対するアフターケアなどの対応

パワハラ被害者が安心して職場に復帰できるようなアフターケアや、プライバシー保護に関する対策を実施します。また、パワハラ被害を訴えたことによる不利益取扱いを禁止するなどのルールも設ける必要があります。

「パワハラ防止法」に関する罰則

パワハラ防止法で定められたルールが“義務”づけられているのは、2020年6月の法律施行時点では大企業のみで、中小企業などは“努力義務”とされています。2022年4月以降には、中小企業等に対しても義務づけられる点に注意が必要です。

また、この法律を遵守しなかった際の具体的な罰則は施行時点では設けられていませんが、問題の企業に対して助言、指導、勧告の実施がなされる可能性があります。

【もっと詳しく】2020年6月に新施行!パワハラ防止法について徹底解説

パワハラの定義とは

パワハラとはどのような行為を指すのか。厚生労働省では次の3つの基準すべてを満たす職場内での行為として定義づけています。

(1)職場内での立場が上であることを盾に取った行為

社内で優位な立場にある者が、抵抗や拒絶をすることが難しい下の立場の者に対して強いる行為です。優位な立場というのは、年齢や地位の上下に加え、持っているスキルの高さを笠に着た態度も含まれます。また、集団で威圧をすることも同様です。

(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの

職場内では、業務を的確に進めるために様々な指示や指導が飛び交うものです。中にはその指示・指導を不満に思う社員がいる可能性もありますが、その指示や指導が“業務上必要であり、適正範囲内”であれば、これらはパワハラには該当しません。

企業側の対応としては、日頃の指示や指導がパワハラに該当していないことを証明するためにも、業務上で必要な内容や適正とみなされる範囲を明確にしておくことが必要となります。

(3)相手の身体・精神に圧力を加え、苦痛を与える、もしくは職場環境を悪化させる行為(労働者の就業環境が害されるもの)

暴力行為や身体の拘束、暴言や侮辱により相手の名誉を傷つけること、相手のプライバシーを侵害する行為などがこれにあたります。

具体的には、社内で嫌がらせ行為やいじめを受けることで、社員が精神的苦痛を受けて休職するなど、安心して業務を進めることができない立場に置かれる状態をいいます。なお、特定の社員に対する嫌がらせ行為を正当化するため、たまたまそばにいた別の社員に「お前もいけない」などと、いわば見せしめのような行為として叱責を加えた場合などは、その別の社員に対する行為もパワハラの要素として扱われます。

パワハラの具体例

パワハラの少し具体的な例を見てみましょう。主なパワハラ行為には、次の内容が挙げられます。

・身体的な攻撃:殴る蹴るなどの暴力や、物品を投げつける
・精神的な攻撃:大勢の前での長期にわたる叱責や威圧、人格否定の言動
・人間関係からの切り離し:集団での無視行為、別室での隔離
・過大な要求:社員教育や指示をおろそかにした上での業務付与、理不尽な課題業務の指示
・過小な要求:わざと業務を与えない、能力や経験に見合わない業務の強要
・個の侵害:プライベートの暴露、職場外での監視行為

【もっと詳しく】【パワハラ事例集】そのやり方、パワハラかも!?

企業が行うべき「パワハラ防止」対策とは

パワハラについて、厚生労働省が推進している予防策が5項目あります。

(1)トップのメッセージ
企業(職場)のトップがパワハラの防止の重要性を発信して方針を全従業員に広めていきましょう。書面・広報誌・社内メールなど、どのような形であっても全従業員に伝わる手段であれば抑止力があります。

(2)ルールの決定
使用者・労働者双方で取り組みを進めるために、労働協約や労使協定などでルールを明確にし、わかりやすいように具体的な内容を示します。就業規則に盛り込む場合には、事前に労働組合や労働者代表の意見を聴くことが必要です。

そして、就業規則を変更した場合には、その内容を全従業員に周知しなければなりません。 就業規則に規定する際には本文に追加して作成、または、委任規定を設け、別規定として定めることもできます。

(3)実態把握
職場でのアンケートなどを実施して実態を把握しましょう。対象は全従業員でも対象者を絞っても構いません。アンケートは、実態を把握しやすくするために、匿名での提出が効果的です。例えばGoogle フォームなどを利用すれば、匿名のアンケートを手軽に実施できます。アンケート以外の方法としては、産業医や安全管理者とのヒアリングや評価面接の際に、自己申告項目として設けることも有効です。

(4)教育
予防対策で効果が大きいと考えられる方法が、ハラスメント予防研修の実施です。研修を実施する際は、管理監督者と一般従業員では伝えたい内容が違うので別々に行う方が効果的です。研修は一度ではなく、定期的に行うことで認識をより深めます。また中途入社の社員などには別途研修を設けるなど、周知を徹底することも必要です。

(5)周知
経営トップからの社員向けメッセージや研修などで、ハラスメント予防を行っていることを、会社全体に周知していきます。またポスターを掲示することも効果的です。その際、大事なことは定期的に行うことと、相談窓口の連絡先を周知することです。相談窓口は、ハラスメント専門ではなく幅広い内容に対応することで相談しやすく、また実態を把握しやすくなるでしょう。

【もっと詳しく】脱パワハラ!職場におけるハラスメント対策とは

 

『パワハラ防止法』の概要や、企業が行うべきパワハラ防止対策についてご紹介しました。

ハラスメントが発生して適切な措置を実施していないと、職場が働く場所として適切な環境でないとされ、安全配慮義務違反として責任を問われることにもなりかねません。まずは企業側・社員ともにパワハラについて正しく理解をし、研修教育や周知を定期的に行うことで、ハラスメントの意識付けを職場に働く人々に広めるように対策を講じていきましょう。

また、ハラスメント対策の総合情報サイト『あかるい職場応援団』など、国が提供する情報サイトも活用しましょう。ハラスメントの基本情報から他社事例など、状況に合わせた参考情報を探すことができます。

* Mills、freeangle、kai、プラナ / PIXTA(ピクスタ)

※この記事は『経営ノウハウの泉』の過去掲載記事をもとに作成しています。