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研究・調査報告

「診療所」の倒産、前年比1.8倍に急増 2021年の医療機関の倒産33件

  • 最終更新日
    2022年01月14日 18:12
TDB
医療機関の倒産動向調査(2021年)

コロナ禍で感染リスク回避に伴う患者減少や感染者増加に伴う労働環境の悪化などで経営動向が注目されてきた医療機関。近時はオミクロン株拡大を背景とした医療従事者の休職増加が大きな問題となっている。そうしたなか、2021年の倒産動向はどのように推移したのだろうか。2021年の医療機関の倒産(法的整理、負債1000万円以上)について調査した。


<調査結果(要旨)>

2021年の医療機関(病院、診療所、歯科医院)の倒産は33件、負債総額は94億300万円
「病院」の件数が2000年以降、2015年と並び最低水準、「診療所」は2009年(27件)に次ぐ高水準
負債額最大の倒産は医療法人友愛会(社団)で約52億円
2021年の新型コロナウイルス関連倒産は13件で前年比3倍超


「診療所」の倒産が前年比1.8倍に急増
2021年の医療機関(病院=病床数20以上、診療所=病床数20未満、歯科医院)の倒産は33件、負債総額は94億300万円となり、前年比で件数は6件増、負債総額は22億4700万円増となった。

業態別では「病院」が1件(負債総額52億円)、「診療所」が22件(同38億7700万円)、「歯科医院」が10件(同3億2600万円)となり、「病院」の件数は2015年と並んで2000年以降で最少となった一方、「診療所」の件数は2009年(27件)に次ぐ高水準となり、前年比1.8倍に急増した。  また、都道府県別では東京都が7件で最も多く、以下、大阪府(6件)、北海道、神奈川県、埼玉県、京都府(各2件)と続き、17都道府県で発生した。態様別では「破産」が4件、「民事再生法」が29件となった。  

新型コロナが医療機関に及ぼす影響が注目されるなか、新型コロナが倒産の主因または一要因になったことが確認された「新型コロナウイルス関連倒産」(法的整理のみ)は、2021年は15件確認され、前年(4件)の3倍超となった。

2年9カ月ぶりに負債50億円超の大型倒産が発生
2021年で最大の倒産となったのは「松本病院」を運営していた大阪府の医療法人友愛会(社団)で負債は約52億円。8月26日に大阪地裁へ民事再生法の適用を申請した。病院の倒産は2020年10月以来10カ月ぶりとなったほか、負債50億円を超える医療機関は医療法人翔洋会(福島県、2018年11月民事再生法、負債61億6400万円)以来2年9カ月ぶり。2番目に大きかったのは医療法人クラルス(眼科医院、埼玉県、11月破産)で負債は約12億円。負債が10億円以上の倒産は同2件で、それ以外の分布は、1億円~5億円が9件(構成比27.3%)、1億円未満が22件(同66.7%)となった。

コロナ支援策で倒産は抑制状態
2017年に25件だった医療機関の倒産は2018年に40件、2019年には2010年以降の10年間で最多となる45件を記録、2020年も高水準で推移する可能性が高いとみられていた。 しかし、2020年に入ると新型コロナの感染が拡大しはじめ、外出自粛やテレワークの浸透に伴う患者減少、感染リスク回避に伴う患者減少や感染者増加に伴う労働環境の悪化など、病院をはじめとする医療機関の経営動向が注目されるようになった。実際、「令和2年度の調剤医療費」(電算処理分)は7兆4987億円となり前年度比2.6%減少、処方箋枚数は前年度比9.2%減少となった。子供の感染を警戒した親が通院を控えさせた影響が大きく、0歳以上15歳未満の層を中心とした減少が目立った。また、小児科だけでなく重症患者の少ない耳鼻咽喉科でも減少率が目立った。  

しかし、倒産動向に目を向けると、一般企業と同様、コロナ対策の緊急融資や既存融資のリスケジュールなどの支援を受けた事業者は相当数存在し、2020年以降、倒産は抑制状態にあるが2020年(27件)→2021年(33件)と抑制効果が弱まっている印象が強い。なかにはコロナ関連の補助金によって黒字決算となる事業者もみられるが、引き続き厳しい経営を強いられる医療機関は多く、断続的に給与・賞与の遅配・カット、従業員の退職、支払い遅延といった信用不安情報が帝国データバンクに寄せられている。  

病院と比べ経営規模の小さな診療所の倒産が増加している背景には経営者の高齢化や休廃業・解散件数の増加が潜んでおり、3業態の中で最も動向に注意が必要だ。感染第6波の拡大は今後の医療機関の経営や倒産動向に大きな影響をもたらす可能性がある。
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