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あなたの会社の休職制度は大丈夫? 休職トラブルを防止する4つのコツ

2020.08.26

「うちの会社の休職制度は大丈夫なのか?」「休職させたけど対応がわからない」など休職制度に対する会社の経営者の不安や悩みは多いようです。

休職は日常的に発生することではなく、休職させる会社も、休職する労働者もどのように対応していいかわからず、トラブルになるケースがあります。

今回は、休職トラブルを防止する4つのコツをお伝えします。

(1)休職についての理解を深める

休職トラブルを防止するにはまず休職に対する理解を深めましょう。多くの会社には休職制度があります。なぜ休職制度があるのでしょうか? それは「解雇を猶予するため」です。もしかしたらこれは意外かも知れません。休職制度に関する理解として一番多いものが「会社を休むため」という理解です。それはそれで正しい理解ですが、十分な理解とはいえません。

労働契約とは、使用者が賃金を支払い、労働者が労務提供するという契約です。よって、労働者が労務提供できない場合、一般的には契約違反となるため解雇されます。例えば、ある労働者が病気によって働けなくなったら、この労働者は解雇されます。

ですが、病気になったらすぐ解雇されてしまうのでは、労働者は安心して働くことができません。労働者が安心して働けない場合、「人材募集をしても人が集まらない」や「労働者が早期に退職してしまう」などの事態になり、長期的に見て会社は発展しません。

そこで休職制度を作って、使用者が解雇を一定期間猶予することを可能にすることで職場復帰が目指せるようし、労働者に安心して働いてもらう。これが休職制度の正しい理解です。

(2)就業規則に休職規定を定める

休職に関する規定を就業規則に定めましょう。どのような条件で休職できるのかなどの休職制度の詳細がわからないと労使間でのトラブルの原因となります。

休職規定の重要ポイント

確認事項 ポイント
休職させる条件 ・欠勤がどの程度継続したら休職させるのか
・復職の可能性がない場合は休職を認めない規定になっているか?
休職期間 ・会社の状況(企業規模や財務状況)とつり合った休職期間、給与金額になっているか?
・同一または類似の傷病による休職の場合、通算できる規定になっているか?
復職条件 ・復職の際には診断書を提出させているか?
・十分な労務提供ができない場合、再休職の規定があるか?
退職条件 ・復職できない場合の退職規定が定められているか?

休職に関するルールは労働基準法や民法等に定められていないため、会社ごとに自由に規定することができます。企業規模が大きくなればなるほど、休職時の待遇等が手厚くなる傾向です。

よくある失敗例として、中小零細企業が大企業の就業規則の譲り受け、そのまま使用していたら、休職規定が手厚く自社に合わなかったという話を聞きます。自社の企業規模や財務状況などを考えて、実態に適した休職規定にしましょう。

(3)休職辞令を作る

労働者を休職させる場合、必ず休職辞令を作り、休職する労働者に渡しましょう。休職辞令を作る目的は、労使間での休職に対する認識のギャップをなくすことです。よくある認識のギャップは次のとおりです。

労使間の休職に対するよくある認識のギャップ

認識のギャップ 会社側の認識 労働者側の認識
(1)休職中の行動 休職中は治療に専念する 休職中は旅行など自由に行動していい
(2)休職期間満了時の取り扱い 休職期間が満了したら退職となる 休職期間が満了しても、引き続き在職できる
(3)復職時の体調 100%に近い体調でないと復職させられない 十分な体調でなくても復職できる

認識のギャップが起こりそうなポイントは3つあります。まずひとつ目は休職期間中の行動です。会社としては「治療に専念するのが当たり前」という感覚かもしれませんが、労働者が休日や休暇と同じ感覚で旅行するようなケースもあるようです。酷いケースでは旅行の写真をSNSにアップして、他の労働者から反感を買うケースもあります。このような事態を避けるために、休職は治療に専念するように伝えましょう。

2つ目は休職期間満了時の取り扱いです。休職期間満了したら、就業規則の規定に基づき自然退職となるケースが一般的です。労働者は休職期間満了までに復職できない場合、退職になることをあまり理解していないことがあります。そして、休職の残り期間が少なくなってきた時に退職の可能性が現実的になり、無理に復職してトラブルになります。休職期間までに復帰にできない場合、自然退職となることを伝えておきましょう。

3つ目は復職時の体調です。リハビリ勤務などの特殊な復職を認めていない場合、復職は原則として労働契約で定められた本来の労務に服することができる体調、すなわち100%に近い体調に戻っていることが復職の条件となります。労働者がこのことを理解しておらず、「会社の業務のどれかができれば復職できる」などと勘違いしているかも知れません。会社と労働者に認識のギャップがあるとトラブルの原因になるので、どのような健康状態ならば復職できるのか確認しておきましょう。

(4)定期的に連絡もしくは面談をする

休職中は定期的に連絡もしくは面談をするようにしましょう。休職中に会社から何も連絡がないと、「私は会社から見捨てられた」など思ってしまう可能性があります。そのまま労働者と連絡が取れなくなったというケースもあります。

メンタル不調者など対応が難しいケースもあります。メンタル不調者の場合、「連絡をしても電話に出ない」「定期面談の場に来てもらえない」ということが珍しくありません。そのようなケースで電話応答の催促や面談出席の要求をおこなうと、症状が悪化する可能性があります。一方で会社として「何もしない」というわけにもいきません。個人ごとに症状が異なるため、必ずうまくいく方法というのはありませんが、次の点に気をつけるとうまくいくことが多いです。

■面談には家族など労働者の理解者に同席してもらう

労働者一人で面談の場に来るのは精神的負荷が高い場合、家族など労働者の理解者に同席してもらえないか提案してみましょう。

■電話など会社からの連絡は一定時期に決める

メンタル不調者の場合、「会社からいつ電話がかかってくるのかわからない」ということがプレッシャーになることがあります。「毎月◯日に連絡」と一定時期に連絡するように提案をしてみましょう。

■会社の連絡窓口はひとつに絞る

会社には所属部署、人事部などさまざまな窓口があります。いろいろな窓口と連絡をとっていると、会社はメンタル不調者の状態把握が難しくなります。またいろいろな人がメンタル不調者に連絡をするのは、精神的負荷が高いと感じるケースもあるので、連絡窓口は一本化したほうがよいでしょう。

今回は休職トラブルを防止する4つのコツを紹介しました。ぜひ参考にしてみてください。

 

※polkadot / PIXTA(ピクスタ)