登録

会員登録いただけると、

  • メールマガジンの受け取り
  • 相談の広場への投稿 等

会員限定のサービスが利用できます

登録(無料)を続ける
TOP > 記事一覧 > 人事・労務 > 脱税との違いも!経営者が知るべき「中小企業の節税」の基礎【税理士が解説】
中小企業の節税

脱税との違いも!経営者が知るべき「中小企業の節税」の基礎【税理士が解説】

2022.04.07

会社が年間を通じて得た利益には法人税が課されます。ほとんどの経営者は少しでも税金を減らしたいと考えるでしょう。適切な“節税”を行うことができれば、何もしない場合と比較すると余計な税金を支払わらなくて済みます。では、どのような節税対策があるでしょうか? 本稿では代表的な節税対策とその注意点について解説します。

節税と脱税の違い

“節税”とは、税法上のルールに従って有利な選択肢を選ぶことで合法的に税金を減らす行為をいいます。一方“脱税”とは、故意に売上を除外したり架空の経費を計上したりするなど、税法上のルールから逸脱した処理をすることにより、不当に納税を免れようとする違法行為です。

脱税が発覚した場合、延滞税や加算税などの追徴課税、さらに悪質である場合には罰金刑や刑事罰にまで処せられる可能性があります。社会的に厳しい制裁を受けることになりますので十分に気をつけましょう。

節税対策には2種類ある

法人税は法人の益金(収益)から損金(費用)を差し引いた所得(いわゆる利益)に法人税率を乗じて算出します。つまり、この所得を減らせば支払うべき税金を減らすことができます。

益金(収益)を減らすには売上を減らさなければならないなど事業を継続していく上では現実的ではありませんので、実際には損金(費用)を増やすことが節税の基本になります。また、例外として税制上の優遇措置で直接税額を減らす方法なども考えられます。

節税には大きく分けて2つの種類があります。

1:お金をかけないで行える節税
2:お金はかかるが将来につながる節税

会社にとっては資金繰りが一番大事です。最適な節税を行うためには、当然、まず1を実施し、状況に応じて2を考える、という順番がベストです。

次に代表的な節税対策を紹介します。

※税法の用語上「益金」や「損金」という言葉を使いますので、慣れない場合は「益金」⇒「収益」、「損金」⇒「費用」と読み替えてください

1:お金をかけないで行える節税

●固定資産・棚卸資産の廃棄損・評価損

現在使用していない、または今後使用予定のない固定資産を処分することにより、廃棄損として損金に計上することができます。また、資産の種類によっては廃棄することで償却資産税を抑える効果もあります。決算時に固定資産台帳を見ながらチェックしましょう。あわせて棚卸資産についても売り物にならない古い在庫が無いかもチェックしましょう。その在庫を廃棄した場合も廃棄損として損金に計上することができます。

なお、廃棄処分をした際にはその証拠書類として「廃棄証明書」などの証拠書類を取るようにしてください。

●社長の自宅を社宅にする

社長が賃貸物件に住んでいたらその自宅を法人契約に切り替えて社宅として住まわせます。そうすることで会社はその社宅賃料を損金に計上することができます。また、社長が分譲物件に住んでいたら、会社がその建物を買い取って社長に社宅として住まわせます。そうすることで、会社はその建物について減価償却として損金に計上することができます。

ただし、いずれの場合も社長は賃貸料相当額を会社に支払うことが要件になります(全額会社負担にすると給与に認定されてしまいます)。

●出張旅費規程を作成する

出張経費は実費であるため旅費交通費として処理されますが、出張手当について出張旅費規定がない場合は給与認定され従業員の所得税や社会保険料に影響が出てきます。出張旅費規程を整備して出張手当についても旅費交通費として損金に計上できるようにしましょう。

●社用車に切り替える

業務で使用している社長個人所有の自家用車がある場合、会社名義に変更することでその車両に関係する費用(ガソリン代、ETC、自動車保険、車検、減価償却)を損金として計上することができます。

●税制の優遇措置を適用する(特別税額控除)

政府の投資促進や雇用促進など政策目的のため、臨時的に税額控除の規定を設けることがあります。税額控除はその年度の計算後の税金から直接控除することができるので効果は絶大です。よく使われる規定は以下の2つになります。

・「中小企業投資促進税制」…新品の機械を購入した場合に一定額を税額控除できる制度

・「所得拡大促進税制」…前年度より給与等の支給額を増加させた場合に一定額を税額控除できる制度

設備投資で高額な機械を購入したり、従業員が増えたりして前期より人件費が増加している場合は該当する可能性があります。

【こちらの記事も】節税につながる!中小企業が利用したい優遇税制を解説

●資本金を減らす(減資)

法人は申告時に法人住民税「均等割」という税金を納付します。これは赤字でも課税される税金で資本金等の額の大小で決まってきます。例えば、資本金等の額が1,000万円以下の場合は7万円ですが、1,000万円を超えると18万円に増加します。さらに1億円を超えると29万円にもなります。もし、特段の事情(例えば、許認可のため、融資のため等)が無いのにかかわらず資本金等の額を高額に設定しているのであれば過分に均等割を払っていることになります。登記料はかかりますが減資をして「均等割」を減らすことをおすすめします。

2:お金はかかるが将来につながる節税

●短期前払費用

会社の家賃、保険料、リース料など継続的にサービスを受けているものについて1年分の金額を前払(年払い)して一定の要件を満たした場合には、その年払いした全額を支払った年度の損金に計上することができます。ただし、会社側から一方的に年払いしても認められませんので、年払いをしてもよいか相手方に確認して支払方法を年払いとする契約に変更してもらいましょう。

●経営セーフティ共済、小規模企業共済への加入

経営セーフティ共済は、取引先事業者が倒産した際に、中小企業が連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐための制度で独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営しています。共済制度を受けられるようになるほか、その掛金を全額損金に計上することができます。年間最大240万円まで累計最大800万円まで積み立てることができます。決算月に年払いをすることができるので検討するとよいでしょう。

小規模企業共済も同独立行政法人が運営しており、経営者が加入できる退職金制度で、掛金は全額所得控除(最大年間84万円)することができます。役員個人の節税になりますが効果が非常に大きいです。

【こちらの記事も】小規模企業共済制度のメリットとデメリットを解説!iDeCoとの違いも

●決算賞与

従業員への決算賞与は損金に計上することができます。決算までに支払えなくても一定の要件を満たせば未払賞与として損金に計上することが可能です。従業員のモチベーションアップに繋がれば将来の収益増加に期待が持てます。

●会社の運営上、必要なものへの支出

1個当たり30万円未満の減価償却資産の購入(年間300万円まで)、1個当たり10万円未満の日用品・事務用品のまとめ買い、固定資産の修繕(原状回復)、ホームページの作成(複雑な仕様のものは除く)、広告宣伝、研修など、会社や社員の将来のために必要な支出がないか確認しましょう。

節税対策をする際の注意点

節税対策は計画的に

決算の数か月前から当期の業績の着地や資金の残高をシミュレーションして必要な節税対策を考えましょう。決算間際に慌てて対策を立てようとすると、節税対策漏れが起きたり資金繰りを無視した節税に走ったりしてしまいがちです。経費とは認められないような経費を入れようとする脱税行為はもってのほかです。そうならないためにも時間に余裕を持った節税対策をするよう心掛けましょう。クラウド会計ソフトを導入するなどしてリアルタイムな業績把握を図ることも一つの方法です。

資金繰りに気を付ける

極端な例ですが「利益100・税金30」とした場合、税金30を支払いたくないので100の支出をして税金0にするのか、それとも税金30を支払って残りの70を手元資金として残すのか。このように、会社にお金を貯めるためには税金を支払わないと貯まらない構造になっています。この構造を理解した上で、今期の節税のためにお金を使うのか、来期以降の事業拡大のためにお金を貯めておくのか検討しましょう。

“お金のかかる節税”で過度な節税を行うと資金繰りを悪化させます。税金は減ったが資金繰りが厳しくなった、では本末転倒です。

まとめ

経営で一番大切なことは資金繰りです。節税はまず“お金をかけないで行える節税”と“税制の優遇措置を適用した節税”を優先して実施します。それでも利益が出過ぎているようであれば“お金のかかる節税”を検討することになりますが、その支出が将来的に本当に必要かどうか、資金繰りに注意しながら慎重に判断しましょう。

節税対策漏れ、脱税、過度な節税を排除し、適切な節税を行うために必要なことは、時間的な余裕を持つことと正確な決算予測。顧問税理士の協力のもと、クラウド会計ソフトを導入するなどしてリアルタイムな業績把握が大切です。

【あわせて読みたい】中小企業を陥れる!隠れた3つの「資金繰り」リスクとは?

*ウーカ / PIXTA(ピクスタ)