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中小企業向け「設備投資」に役立つ支援制度を一挙解説【税制度・補助金・助成金】

中小企業向け「設備投資」に役立つ支援制度を一挙解説【税制度・補助金・助成金】

2021.06.16

設備投資には多額の費用を必要とするため、銀行融資を受けることが大半です。しかしその場合、金利負担がかさみ減価償却も要するため、節税効果は限定的になりキャッシュフローが悪くなってしまいます。

コロナ禍になってから、低利融資なども充実してきましたが、やはり足下の経営環境が悪い中で借入だけで設備投資をするにはリスクが高いといえます。そこで今回は、そのような中小企業経営者の皆様の設備投資に役立つ支援制度をご紹介します。

役立つ制度1:事業再構築補助金(経済産業省)

『事業再構築補助金』は、2021年度、国が行う支援策の中で最大の目玉といえるものです。予算はこれまでの設備投資系の補助金では圧倒的に巨額な1兆円を超えるものとなっています。補助額は100万円から6,000万円(通常枠)、補助率は投資額の3分の2であり、機械設備の新規導入だけでなく建物の建築費用にも補助される可能性もあり、これまでにない投資が期待できます。

『事業再構築補助金』は事業再構築指針に基づいた事業計画を審査し、採択がなされた後に事業遂行を行い補助が行われます。したがって、事業再構築指針の要件に合致した事業計画の策定が必要です。

事業再構築指針における事業再構築の累計は5種類あり、

(ア)新たな製品等で新たな市場に進出する新分野展開
(イ)主な“事業”を転換する事業転換
(ウ)主な“業種”を転換する業種転換
(エ)製造方法等を転換する業態転換
(オ)事業再編を通じて(ア)~(エ)のいずれかを行う事業再編

となっています。

このようにアフターコロナに向けて、大胆な事業転換や新分野進出に伴う設備投資を行った企業を強力に支援する制度です。公募も4回程度(1回目は終了、2回目は2021年5月26日より公募開始)行われる予定ですので、事業再構築に向けた大きな設備投資を必要とする企業経営者の方々にとって、注目の補助金であるといえます。

なお、『事業再構築補助金』の申請には、経済産業省から認定を受けた認定支援機関(税理士・中小企業診断士等)の支援が必要で、単独申請はできないのでご注意ください。

役立つ制度2:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(経済産業省)

『ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(以下、ものづくり補助金)』は、2014年から行われている歴史のある補助金です。製造業をはじめ、小売業やサービス業等の幅広い業種の設備投資の支援をしてきました。補助額は100万円から1,000万円(一般型)、補助率は投資額の業態によって2分の1から3分の1です。制度発足当時から基本は変わりませんが、“低感染リスク型ビジネス特別枠”というコロナ禍独特の申請枠も新設されています。こちらの補助率は3分の2となっています。

『ものづくり補助金』では、事業計画の内容、特に新規性が重要なポイントとなり、これまでも新規性を図表やガントチャートを用いるなどして、うまく説明できた企業が採択(複数回採択されているところもあります)を勝ち取っています。

『ものづくり補助金』の申請に関しても、事業計画を審査し、採択がなされた後に事業遂行を行い、補助が行われます。また、経済産業省の認定を受けた認定支援機関の支援も必要です。歴史が長い補助金のため、多くのノウハウを持った認定支援機関から支援を受けることが重要なポイントとなります。

その他、経済産業省の補助金としては、IT導入補助金や小規模事業者持続化補助金がありますが、これらは主にソフトウェアやクラウドサービスの導入、販路開拓に向けたものですので今回は説明を省略させていただきます。

役立つ制度3:業務改善助成金(厚生労働省)

『業務改善助成金』は、厚生労働省の助成金(国の支援制度については、一般的には経済産業省では主に補助金、厚生労働省では主に助成金といいます)としては珍しく、中小企業の設備投資に特化した助成金です。

事業場内最低賃金を引き上げ、生産性向上のための設備投資を行った場合、その設備投資に対して最大450万円、助成率10分の9の助成金が受け取れるものです。ただし、事業場最低賃金900円未満で7人以上1人当たり90円以上引き上げ、かつ生産性要件を満たした場合に限ります。設備投資の内容は審査されますが、経済産業省の補助金のように、テクニカルな事業計画を策定する必要はなく、比較的使いやすい制度です。

『業務改善助成金』は厚生労働省の助成金であり、『労働条件等関係助成金』の一種であるため、労働保険に加入し、就業規則(常時10人未満の事業所は就業規則に準ずるもの)を作成していなければなりません。また、申請の代行は社会保険労務士(弁護士も含む)でなければ行うことはできません。労働保険の加入や就業規則の整備も社会保険労務士の業務ですから、申請に興味のある方はお近くの社会保険労務士に相談することをおすすめします。

役立つ制度4:働き方改革推進支援助成金(厚生労働省)

『働き方改革推進支援助成金』は、業務改善助成金と同じように、厚生労働省の設備投資等に関する助成金で、現在の労働条件の改善(労働時間の短縮や休暇制度の導入等)を行い、生産性向上の設備投資等(労務管理に関する研修や人材確保に向けた取組等も含む)を行った場合、一定額の助成が得られるものです。例えば、休暇制度の導入は最大50万円、助成率4分の3、複数の取り組みをした場合は助成額の上限が加算されます。

基本的に『業務改善助成金』と同じような申請方法となりますが、こちらは賃金引上げだけでなく労働条件の改善に取り組む中小企業におすすめの助成金です。

役立つ制度5:中小企業投資促進税制(中小企業庁)

大きな設備投資をしても減価償却をしなければならないため、十分な節税効果が得られずキャッシュフローが悪くなります。中小企業が設備投資を躊躇する大きな要因ですね。

そこで、中小企業の設備投資を促進できるような税制が期限付きで設けられています。それが『中小企業投資促進税制』です。『中小企業投資促進税制』とは、中小企業における生産性向上等を図るため、一定の設備投資を行った場合に、特別償却30%または税額控除7%のいずれかの適用を認める制度です。

『特別償却制度』は通常の減価償却費とは別に設備投資経費を追加計上でき、投資年度に大きな節税効果が得られるため、投資直後のキャッシュフローが著しく改善します。

ただし、『特別償却制度』は、設備投資直後の納税を将来に先延ばしにするだけで、トータルで支払う税金は変わりません。しかし、『税額控除制度』は投資直後の税額から控除を行うことによって、トータルの税金を減らすことができます。足下のキャッシュフローの改善を考えるのか、それとも真水の節税効果を得るのかによって、これらの制度を選択することになります。

 

今回ご紹介した中小企業の設備投資に役立つ支援制度は、期限付きのものや単年度の予算措置によるものであり、毎年変わっていく可能性がありますので、常に情報収集に努めてください。本稿をお読みの中小企業経営者の皆様のご発展を心よりお祈り申し上げます。

中小企業を陥れる!隠れた3つの「資金繰り」リスクとは?(経営ノウハウの泉・特別ウェビナーより)』では、中小事業再建のスペシャリストである山下昌彦弁護士(光麗法律事務所)に、資金繰りの観点から設備投資計画について教えていただいたウェビナーの内容をご紹介しています。ぜひあわせてご覧ください。

* Fast&Slow / PIXTA(ピクスタ)