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中小企業の管理業務をデジタルトランスフォーメーションする(1)~DXの定義と中小企業のDX化を阻む課題とは~

2020.08.26

このごろ聞くことが多くなった言葉のひとつにDX(デジタルトランスフォーメンション)があります。これは業務を単にデジタル化する以上の意味をもつ言葉です。

コロナ禍でこれまでの現場を中心とした業務、対面重視のコミュニケーションが急速にオンライン化する中で、一段と注目されるキーワードになってきています。DXという言葉が世の中に浸透していく中で、自社において、どのようにその概念を捉えたらよいのか。なにをしなければならないのか。中小企業経営者の方にとって、本稿がそのヒントとなれば幸いです。

中小企業もDXとは切っても切り離せない関係にある

DXという言葉がクローズアップされるようになったのは、今回のような緊急事態でもリモートワーク(在宅勤務)などを駆使し、いかにして従業員を業務に従事させるかという問題が起点でした。つまり事業継続の必要に迫られ、そのための社内ITシステムの状況に焦点が当たったのが、大きな理由と考えられます。

職場から離れ、在宅でPC一台を使ってどのように業務を完結させるか、頭を悩ませた経営者や従業員の方は少なくないと思います。
その際、ポイントとなったのが、業務に必要な情報がすべて手元にそろっていたか、必要な意思疎通が、意思決定も含めて迅速かつ効率的に可能であったか、という観点です。

その意味では、情報入手・蓄積・意思疎通・社内決裁がデジタルで処理できている(デジタル化できている)大企業やIT企業は、リモートワークを展開するにあたり大きなアドバンテージを有していました。一方で、苦戦を強いられた中小企業も多くありました。

今回、デジタル化の恩恵をうけられたかどうかは、企業規模や業種によっても、また職種によっても明暗がわかれたと思われますが、そもそもデジタル化とデジタルトランスフォーメンション(DX)とはどのように違うのでしょうか。

DXの定義とは

DXの定義は経済産業省が平成30年9月に発表したDXレポート(※1)によれば、以下のように表現されています。

「既存のビジネスから脱却して、新しいデジタル技術を活用することによって、新たな価値を生み出していくこと」。

また同時に、DXの“デジタル”と馴染みがあり、関連が深い言葉として容易に想起される「IT」(情報技術)という言葉ですが、そのITを使用した業務システムに関わる企画や開発・運用において抱える課題を解消し、いかに変化を実現していくかも、広義ではDXに含まれるとされています。

このふたつの側面からDXを少し見ておきたいと思います。

DXによる新たな価値の提供

まずひとつ目の側面、新たな価値(事業価値)の提供では、以下のような取組みが挙げられます。

  • ビジネスモデルの変革
  • 既存製品・サービスの付加価値向上
  • 新製品・サービスの提供
  • 顧客満足度、維持率の向上
  • 業務効率化による生産性向上

新しい事業価値の提供には、全体的視点を持った経営判断のもとでITを活用して、会社全体にわたって改革や改善を行うレベルのものが多いといえます。

DX実現に当たって解消が必要なシステム課題

経済産業省のDXレポートにおいてITシステム“2025年の崖”とも称され、DXの実現を阻む課題として、あげられているもう一方の側面は、要約すれば以下の3点です。

  • ブラックボックス化した既存システム
  • 資金・人材の不足
  • ITに関する戦略の不存在、不備

これらは、DXという言葉が現れるよりも前から、まさにユーザー企業のITシステムが抱える問題として、長年認識されてきているものです。

経済産業省のDXレポート※1において、DXという言葉には「ビジネスをどう変えるかといった経営戦略の方向性を定めていくという課題」があるとされています。一方で「既存システムが老朽化・複雑化・ブラックボックス化する中では、データを十分に活用しきれず、新しいデジタル技術を導入したとしても、データの利活用・連携が限定的であるため、その効果も限定的となってしまう」と、対応すべき二種の課題があると指摘されています。

“DXによる新しい事業価値の提供”において直面する課題を積極的課題とすれば、長年抱えたITシステムの課題は消極的課題と呼べそうです。

また、ビジネス環境の変化に対応して、動的変化を求められるのが会社のフロント側業務であったとすれば、どちらかといえば静的ともいえるのが経理業務をはじめとする社内管理業務となります。こうした社内管理部門のサービス対象は社内ユーザーが大半であり、基本的には、一旦作った業務プロセスの変更が起きることは少なく、その業務自体から変化のニースが発生することは、法令変更などによる要求がない限り、あまりないでしょう。それだけに社内管理業務のITシステムは、フロント業務のITシステムに比べて消極的課題であるために、これまで長らえてきたものが多くあるようです。

ただし今回の事態において、各企業でのリモートワークの導入の成否を分けたのは、この社内管理システムの整備状況であることは疑いないところです。

中小企業におけるDX実現課題の具体的内容

本稿の主題である中小企業の管理業務のDXといえば、この消極的課題の解消に尽きるともいえます。たとえば以下のようなケースに遭遇していないでしょうか。

ブラックボックス化した既存ITシステム

  • 社内で自社開発・導入を行ったITシステムだが、当時の社内担当者がすでに離職しており、自社ではITシステムの中身がわからず、普段使わない機能について、誰も使い方がわからない。また入力されている業務データがどのように使われているか不明な部分が多く、活用が困難
  • ITシステムのトラブルが頻繁に発生する

資金・人材の不足

  • ITシステムが業務プロセスと乖離しており、改修あるいは新しいシステムを導入したいが、予算が確保できない
  • ITシステムを導入するに当たり、社内のユーザーの要望をとりまとめ、経営者の意向をくんだシステム導入ができる適任者がおらず、ベンダーに任せきりとなってしまう

ITに関する戦略の不存在、不備

  • 経営者がITに疎く、ITシステムの活用が遅れている。手作業による業務が多い
  • 部分最適化されたシステムが多く、ITシステムが対象とする業務範囲に重複や漏れがあり、業務上非効率となっている

次回は上記の中小企業におけるDXの実現すべき課題について、より業務的な視点で説明していきます。

【参考】

※1 DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~

 

※Graphs / PIXTA(ピクスタ)