
急成長のリーガルテック企業も創業当初は破産の危機!? 株式会社LegalOn Technologies代表取締役・角田望氏にインタビュー
時代の最先端をひた走る経営者にインタビューし、その成功の秘訣を探る本連載「成功を掴んだターニングポイント」。
今回は、株式会社LegalOn Technologies代表取締役 執行役員・CEO 角田望氏にお話を伺いました。
株式会社LegalOn Technologiesは、「法とテクノロジーの力で、安心して前進できる社会を創る。」 というパーパスのもと、最先端の技術と弁護士の法務知見を組み合わせ、契約書の審査や締結済みの契約書の管理といった契約業務だけでなく、法務相談やリサーチなど法務業務全般を支援するAIプラットフォーム『LegalOn Cloud』などを開発・運営しています。
今回は、株式会社LegalOn Technologiesのターニングポイントから今後の展望に関して、経営の本質に直結する“問い”を投げかけてみました。
株式会社LegalOn Technologies
代表取締役 執行役員・CEO
角田 望
2010年京都大学法学部卒業、旧司法試験合格(論文全国1位)。2012年弁護士登録(第二東京弁護士会所属)。2013年森・濱田松本法律事務所入所、企業法務における訴訟・紛争解決、M&A、コーポレートガバナンス関連業務などを担う。2017年法律事務所ZeLoと株式会社LegalForce(現:株式会社LegalOn Technologies)を創業、現在は同社の代表取締役を務めている。
度重なる改善で得た、お客さまからの喜びの声

出典: 経営ノウハウの泉
――最も印象に残っているターニングポイントを教えてください
角田:最初に展開したサービスであるAIレビューサービス『LegalForce』を提供開始してから約1年後、更新のタイミングでお客さまに引き続きサービスを使っていただけたことが、一番のターニングポイントだったと思います。
『LegalForce』は2018年にβ版を発表した当初から反響が大きく、多くの問い合わせをいただきました。しかし、プロダクトが未熟で、そのままではお客さまの役に立つのが難しい状態でした。改良に改良を重ね、お客さまに満足いただけたときは、本当に嬉しかったです。
――プロダクトが未熟な状態でもリリースせざる得なかった事情などはありますか?
角田:スタートアップは、完全な完成を待っていたら資金が先にショートしてしまいます。2割3割の完成度でもまずは出してみて、そこからひたすら改善を重ねていき、いかに早く70点まで持っていくかが勝負です。
――改善の際、施策で一番効果的なものはなんでしたか?
角田:正式版リリースから半年くらい経った頃、AIエンジニアのチームにより行われた、「どの部分に対する指摘なのかを、マーカーで線を引くようにハイライトをつける」という機能の改修です。今では当たり前の機能ですが、β版では契約書内の項目ごとに指摘コメントを出す形式だったので、項目内のどの部分に対する指摘なのかが一目で分かりませんでした。この改修によってお客さまの反応が大きく変わりました。
――凄まじいスピードで急成長されていると思うのですが、危機はありましたか?
角田:正直に言うと、創業初期は毎日潰れると思っていました。私の場合、倒産して破産すると弁護士免許も失ってしまいます。お客さまに買っていただけなければ倒産しますし、購入後も継続していただけなければ倒産します。毎日が不安と隣り合わせでした。
契約書の見落としを防ぎ、契約リスクから守る

出典: 経営ノウハウの泉
――サービスが選ばれた理由はなんだと思いますか?
角田:やはり“便利である”という点が評価されたのだと思います。契約書に見落としがあると、企業にとっては重大なリスクとなり得ますが、見落としなくチェックするのは非常に難しいです。法務や総務の担当者にとって、このサービスが役立つことが選ばれた大きな理由だと思います。
――契約書の審査に費やす時間が短くなったということでしょうか?
角田:単純にかかる時間が短くなるだけでなく、見落としが減ることで契約に関する法的リスクを最小限に抑えられることが利点かと思います。さらに、契約書内に見落としや抜け漏れがある場合、弁護士が監修した参考情報や修正案が瞬時に横に表示されるため、よりクオリティの高い修正が行えます。このような部分も支持されている理由なのではないでしょうか。
移転で社内コミュニケーションの活性化を
――オフィス移転を決断した背景について教えてください
角田:事業拡大や従業員数の増加に伴い、渋谷駅直結の複合施設である「Shibuya Sakura Stage(渋谷サクラステージ)」へ本社を移転しました。
以前は開発部門と営業・コーポレート部門が別のビルでしたが、今回の移転により本社が1,600坪へ拡張され、開発部門を本社に集約しました。これにより、業務の効率化だけでなく、コミュニケーションの活性化や異部門同士によるイノベーションの創出も図っています。
社内・社外ともに好評の、こだわりのオフィスアイデア
――オフィス移転をする際、とくに留意したことがあれば教えてください
角田:今回のオフィスは、「融合と加速」をコンセプトにしていました。イノベーションを生むには、人が一つの場所に集まり、さまざまなコミュニケーションをとることが重要です。それがゆくゆくは社員一人ひとりの成長につながり、組織の成長につながっていくと考えています。
今回の移転では、オフィスがその一助を担えるよう、人が集まる場を多く設けたり、コミュニケーションの発端となるデザインを諸所に施したりしました。これによりコミュニケーションが自然と発生し、意見交換や情報共有が活発化することも期待していました。
角田:会議室の名前は、弊社の事業にちなんで契約書で使用される“甲・乙・丙”としました。これが弁護士の先生方に好評で、お客様との会話のきっかけにもなっています。また、高層階ならではの景観を生かしたオフィスレイアウトになったので、メンバー同士で窓際を歩きながら会話している姿をよく見かけるようになりました。
角田:メンバーがリラックスした状態で集まれる人工芝のフリースペースも設置しました。壁面には弊社のMVVの浸透を目的に、6つのバリューを施しています。ランチタイムや休憩での使用だけでなく、業務後には部署をまたいだ懇親会の開催や、海外からのお客様を招いたイベントなどでもこの場所を活用しています。オフィスから渋谷スクランブル交差点を眺めることができ、海外からのお客様にも大変好評でした。
社員のパフォーマンスがさらに上がるように、継続してオフィス環境の整備にも力を入れていきたいですね。
今後は企業規模や国内外を問わないサービス展開を

出典: 経営ノウハウの泉
――今後の展望(挑戦していくこと、目指す方向性など)を教えてください
角田:法務・契約業務を支えるサービスとしては、これまでの概念を大きく変える『LegalOn Cloud』をリリースしました。
リーガルテックの分野では特定の業務に特化したプロダクトが主流ですが、『LegalOn Cloud』は法務や総務の業務全般を支援します。従業員何万人規模の複雑な業務もカバーするだけでなく、一人でさまざまな業務をされている方の支援もできるプラットフォームです。
現在はグローバルで5,500社ほどの企業さまにご利用をいただいていますが、“社会を支える”という意味ではまだまだ足りません。日本だけではなく、世界の法務業務を支えていきたいです。
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自社を守るために法務業務は重要ですが、中小企業は人員を割けないことが実情でしょう。安心できるサービスが味方してくれれば、果敢にチャレンジを続けられるのではないでしょうか。株式会社LegalOn Technologiesではコンプライアンスに関して学べるオンライン学習システム『Legal Learning』も提供しています。管理職向けの研修や、経営者自ら学ぶ機会をつくるツールとしても最適だと感じました。
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