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青の背景に見積もりと計算。

見積書の書き方と注意点を解説|よくあるトラブル事例も紹介

見積書は、取引内容と価格を事前に提示する重要な書類です。見積書の書き方一つで受注率にも影響を及ぼします。本記事では、見積書の基本的な役割から作成手順、記載項目、トラブル防止策、法改正への対応まで、ポイントを網羅的に解説。スムーズなビジネスコミュニケーションと信頼関係構築に役立てていただければ幸いです。

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目次

見積書とは

見積書とは、商品やサービスの提供者が顧客に対して、取引内容や金額を事前に提示する文書です。主に、商品の販売やサービスの提供を行う前に、その内容と価格を明確にするために使用されます。

見積書は、取り引きの詳細を明確にし、双方の合意を得るための重要な役割を果たします。一般的に、大規模な取り引きや複雑なサービス提供の際に必要となりますが、法律上の発行義務はありません。ただし、取り引きの透明性を確保し、後のトラブルを防ぐために、多くの会社や個人事業主が自主的に発行しています。見積書は、顧客との信頼関係を構築し、スムーズな取り引きを実現するための重要なツールです。

見積書を書く目的

見積書には主に2つの目的があります。

1, 契約のトラブルを防ぐ

見積書を作成する1つ目の目的は、契約におけるトラブルを未然に防ぐことです。

見積書には、提供する商品やサービスの内容、価格、納期などの重要な情報が明記されています。見積もり内容を書面に残しておかないと、後々「言った」「言わない」のトラブルになるかもしれません。見積書は法的に義務のある書類ではありませんが、やり取りがあったことを証明することはできます。見積書は取り引きの透明性を高め、スムーズな契約履行を促進する重要なツールなのです。

2, 発注を検討してもらう

見積書の2つ目の目的は、顧客に商品やサービスの内容と価格を明確に示し、発注の検討を促すことです。

見積内容を詳細にわかりやすく提示することで、顧客は予算や要望と照らし合わせて検討できます。特にBtoBの取り引きでは、担当者と決裁権者が別であることがほとんど。見積書は稟議書に添付され、決裁権者が直接目を通す書類であるため、適切に記載することが受注率にも関わってきます。

見積書を作成するタイミング

見積書を作成するタイミングは、主に顧客から商品やサービスの提供について問い合わせがあったときです。具体的には、初回打ち合わせ後や、商品・サービスの詳細が決まった段階で作成します。長期的な取引関係にある顧客の場合、定期的に見積書を発行することもあるでしょう。

見積書は契約前の重要な書類であるため、顧客の要望を十分に理解し、正確な情報を記載することが大切です。迅速に対応することで、ビジネスチャンスを逃さないようにしましょう。

見積書の書き方を簡単3ステップで解説

見積書の作成は複雑に思えるかもしれませんが、実は3つのステップで完成させることができます。慣れれば簡単なので、まずは各ステップを1つずつこなしていきましょう。

1, 商品やサービスの内容と料金の概算を計算する(仮見積もり)

見積書作成の最初のステップは、提供する商品やサービスの内容を明確にし、それに対する料金の概算を計算することです。この段階では、仮の見積もりとなります。

まず、提供する商品やサービスのリストを作成し、それぞれの原価や必要な労働時間の見積もりを出しましょう。次に、適切な利益率を考慮して、各項目の料金を算出します。この際、市場価格や競合他社の料金も参考にしながら、競争力のある価格設定を心がけましょう。また、追加で発生する可能性のある費用(例:交通費、材料費など)も忘れずに計上します。

この仮見積もりは、顧客との初期交渉の基礎となるため、できるだけ正確かつ詳細に作成することが重要です。

2, 内容と金額を顧客とすり合わせる

仮見積もりを作成したら、次は顧客との交渉です。内容と金額について詳細に説明し、顧客の要望や疑問点を丁寧に聞き取りましょう。この段階で、追加のサービスや変更点が出てくることもあります。それらを反映させ、見積もりを調整しましょう。

顧客の予算や期待と合致しているか確認し、必要に応じて代替案を提示することも大切です。このプロセスを通じて、顧客との信頼関係を築きながら、最終的な見積もりに向けて内容を固めます。双方が納得できる内容になるまで、丁寧に話し合いを重ねることが重要です。

3, 金額を確定させ、見積書を作成する

顧客とのすり合わせが完了したら、最終的な金額を確定し、正式な見積書を作成します。この段階ではすべての詳細が決まっているため、正確な情報を記載することが重要です。見積書の体裁や形式は自社の規定に従いつつ、顧客にとって分かりやすいものを心がけましょう。最後に、誤字脱字や計算ミスがないかを、複数回チェックしてから発行することが大切です。

見積書に記載すべき項目

見積書に記載すべき項目は多岐にわたりますが、適切に記入することで取り引きの透明性と信頼性を高められるでしょう。ここでは、見積書に必ず含めるべき重要な項目について詳しく解説します。

  1. 発行日
  2. 見積書番号
  3. 有効期限
  4. 発行者情報
  5. 取引先情報
  6. 商品またはサービスの詳細
  7. 税金の詳細
  8. 支払条件
  9. 納品条件
  10. その他特記事項
  11. 署名欄(必要に応じて)

1, 発行日

見積書の発行日は、文書の作成日を示す重要な項目です。通常、見積書を作成した当日の日付を記入します。この日付は、見積書の有効期限や支払い条件の起点となるため、正確に記載してください。

2, 見積書番号

通常、見積書番号は会社ごとに独自の番号付けシステムを採用しています。たとえば、年月日と連番を組み合わせた「20230601-001」のような形式が一般的です。この番号を記載することで、後々の参照や管理が容易になります。

3, 有効期限

市場の変動に対応するため、見積書の有効期限も書いた方がよいでしょう。通常、30日から90日程度の期間を設定することが一般的です。この期間内であれば、見積書に記載された金額や条件で取り引きを行うことができます。有効期限を過ぎると、再度見積もりを取り直す必要があります。

4, 発行者情報

見積書には、発行者の情報を正確に書きましょう。会社名、住所、電話番号、メールアドレスなどの基本的な連絡先情報を明記します。また、消費税の適格請求書発行事業者として登録されている場合は、登録番号も忘れずに記載しましょう。

5, 取引先情報

見積書には取引先の情報も記載します。通常、取引先の会社名、住所、担当者名などが必要です。これらの情報は、取り引きの正確性を確保し、後々の連絡や確認に不可欠です。特に、大規模な会社の場合は、部署名も含めるとよいでしょう。

6, 商品またはサービスの詳細

提供する商品やサービスの詳細も、明確に記載しましょう。たとえば、商品名またはサービスの名称、数量、単価、合計金額などを明記します。解釈の違いが生じないように、誰が見ても一意に定まるように書くことが重要です。

7, 税金の詳細

見積書に書く必要がある最も重要な情報に、税金の情報があります。税抜金額、消費税額、税込金額を明記しましょう。また、軽減税率の対象となる商品やサービスがある場合は、その旨を明示します。税率が異なる項目がある場合は、それぞれの税率と金額を個別に記載しましょう。

8, 支払条件

支払条件は見積書の重要な項目の一つです。ここには支払期限と支払方法を明確に記載します。たとえば、「月末締め翌月末払い」などと具体的な表記が必要です。支払期限は取り引きの性質や業界の慣習に応じて設定しましょう。支払方法は取引先の希望も考慮しつつ、自社にとって最適な方法を選択することが大切です。

9, 納品条件

納品はトラブルになりやすい部分のため、条件を必ず記載しましょう。ここには、納品日、納品場所、配送方法などを明確に記載します。たとえば、「納品日:契約締結後30日以内」「納品場所:○○株式会社本社」「配送方法:当社指定の運送会社による配送」など、具体的な情報を記載します。これにより、取引先との間で納品に関する認識の齟齬を防ぎ、スムーズな取り引きを実現できます。

10, その他特記事項

その他特記事項には、契約条件、特別な注意事項、返品条件、キャンセルポリシーなどを記載します。たとえば、「納品後の返品は原則として受け付けません」「キャンセルは納品日の1週間前まで可能です」といった内容を明記します。

特殊な取り扱いが必要な商品の場合は、その注意点を記載することも重要です。加えて、追加料金が発生する可能性がある場合や、保証内容についても明確に記述しておくとよいでしょう。これらの情報を明確に記載することで、取り引きの透明性が高まり、後々のトラブルを防ぐことができます。

11, 署名欄(必要に応じて)

見積書に署名欄を設ける場合、通常は発行者側の署名欄を用意します。これにより、見積書の正式性や信頼性が高まりやすいです。取引先の署名欄を設けることもあり、これは見積内容の確認や合意を示す目的で使用されます。また、発行者の社印やロゴを押印または印刷することで、文書の公式性をさらに高められるでしょう。

見積書を書く時の注意点

見積書を作成する際には、いくつかの注意点があります。

1, 見積書の発行日を明記する

発行日は、見積書の有効期限や支払い条件の起点となります。通常、発行日は見積書の右上や左上に記入することが多いです。発行日を明記することで、見積内容の有効期限や支払い条件が明確になり、取り引きの透明性が高まります。また、複数の見積書を発行する場合、発行日によって最新のものを識別できることもメリットです。

2, 税金や手数料を明記する

消費税や源泉所得税などを正確に記載しないと、実際に入金する金額を勘違いする可能性があります。もちろん、実際の入金額は請求書に書かれますが、請求の段階になって見積もりと異なる金額が記載されていた場合、トラブルになりかねません。特に消費税については、税込み価格なのか税抜き価格なのかを明確にし、税率も明記する必要があります。

手数料についても、配送料や設置費用、保険料など、発生する可能性のあるものはすべて明記するようにしましょう。

3, 支払い条件を明示する

支払い方法、支払い期日、分割払いの有無などを具体的に記載します。料金の支払いは、後々に揉めることが多い部分です。明朗で、誰が読んでも解釈が一意に定まる料金体系でなければ、お互いの認識の齟齬が生じたまま契約が遂行され、支払いの段階でトラブルになりかねません。不明確な点があれば、取引先と十分に協議して決定しましょう。

4, 誤字脱字をチェックする

見積書を作成する際は、誤字脱字のチェックを必ず行いましょう。些細なミスでも、取引先に対して不信感を与えたり、内容の誤解を招いたりする可能性があります。特に金額や数量、商品名などの重要な情報は慎重に確認してください。作成した担当者とは別に、上司や他のスタッフなどのチェックと承認を入れることをおすすめします。

誤字脱字のない正確な見積書は、プロフェッショナルな印象を与え、取引先との良好な関係構築にも役立ちます。最終提出前に、必ず全体を丁寧に見直し、ミスのない完璧な見積書を作成するよう心がけましょう。

5, 電子帳簿保存法の改正で見積書の保存方法に注意

2024年1月から完全義務化された電子帳簿保存法により、見積書の保存方法に注意が必要になりました。この改正では、一定の要件を満たす電子データでの保存が義務付けられます。具体的には、改ざん防止措置が施された形式で、7年間の保存が求められます。紙の見積書をスキャンしただけでは不十分で、電子署名やタイムスタンプなどの追加措置が必要です。

また、検索機能を備えたシステムでの管理も求められます。この法改正に対応するため、クラウド型の文書管理システムの導入を検討するなど、早めの対策が重要です。コンプライアンス違反を避けるためにも、新しい保存方法への移行を計画的に進めることをおすすめします。
【参考】電子帳簿保存法一問一答/国税庁
【参考】No.5930 帳簿書類等の保存期間/国税庁

見積もりで起こるトラブル事例5選

見積書の作成は慎重に行う必要がありますが、時として思わぬトラブルが発生することがあります。ここでは、見積書作成時によく起こる5つのトラブル事例をご紹介します。

1, 商品またはサービスの誤記入

商品やサービスの内容を誤記入でのトラブルは、見積書作成時によく発生します。たとえば、数量や単価の入力ミス、商品名や仕様の間違いなどです。このようなミスは、顧客との信頼関係を損なう可能性があるだけでなく、実際の取り引き時に大きな問題を引き起こす恐れがあります。

誤記入を防ぐためには、見積書作成時に複数人でチェックを行うことが重要です。また、顧客との事前の打ち合わせ内容を正確に反映させ、不明点があれば必ず確認するようにしましょう。商品やサービスの誤記入は、単純なミスでも大きな影響を及ぼす可能性があるため、細心の注意を払って見積書を作成することが求められます。

2, 税金の計算ミス

税金の計算ミスは、見積書作成時に頻繁に発生するトラブルの一つです。特に、消費税率の変更時期や、軽減税率の適用対象となる商品・サービスの判断に迷ってミスをするケースが多いでしょう。また、税抜価格と税込価格の混同や、端数処理の誤りも見られます。

このようなミスは、最終的な請求額に大きな影響を与え、顧客との信頼関係を損ないかねません。税務署からの指摘を受ける恐れもあるため、細心の注意が必要です。会計ソフトには見積書作成機能も付いていることが多く、税金は自動で計算されるため、人為的ミスを減らすことができます。ツールの導入を検討してもよいかもしれません。

3, 有効期限の記載漏れ

見積書の有効期限を記載し忘れることは、意外と多く発生するトラブルの一つです。有効期限が明記されていないと、顧客が長期間経過後に見積書の内容で発注を希望する可能性があります。その間に原材料費や人件費が上昇していた場合、会社側は損失を被る恐れがあるでしょう。また、顧客との間で「いつまで有効なのか」という認識の食い違いが生じ、トラブルに発展する可能性もあります。

このような事態を避けるためにも、見積書には必ず有効期限を明記し、期限が過ぎた場合は再見積もりが必要であることを顧客に伝えましょう。

4, 見積番号の重複

見積番号の重複は、取り引きの追跡が困難になり、会計処理や税務申告に混乱をもたらす恐れがあります。見積番号の重複を防ぐためには、一貫した番号付けシステムを導入し、定期的にチェックを行うことが重要です。会計ソフトを利用すれば、自動的に一意の番号を割り当てられ、人為的なミスを大幅に減らすことができます。

5, 顧客情報の誤記入

顧客情報の誤記入は絶対に避けるべきですが、残念ながら起こりがちなトラブルの一つです。会社名や担当者名、住所などを間違えるのは取引先に対して失礼であり、見積書の送付先や商品の納品先を間違ってしまう原因にもなります。また、誤って別の顧客の情報を記載してしまった場合には、個人情報の流出にもつながりかねません。

特に、大企業や複数の支社を持つ会社との取り引きでは、正確な部署名や担当者名を記入しましょう。顧客情報管理システムを導入するなど、組織的な対策を講じることも効果的です。

見積りの書き方でよくあるQ&A

見積書の作成に関して、多くの方が疑問を抱えています。ここでは、よくある質問とその回答をまとめました。これらの Q&A を参考にすることで、より適切な見積書の作成が可能になるでしょう。

Q1, 見積書は消費税込みの金額にすべきですか?

見積書には消費税込みの金額を記載するか、税抜き価格との併記が必要です。一般的には、税抜き価格を記載し、別途消費税額と消費税を含めた合計金額を明記する方法が多く採用されています。

法律的には不特定多数に対する値段表示は総額表示(税込価格表示)が義務付けられていますが、BtoBの見積書ではその義務はありません。しかし、誤解が生じるとトラブルの元になるので、BtoBの場合も税抜き価格と税込み価格を併記するなど、わかりやすい記載を心がけましょう。
【参考】No.6902「総額表示」の義務付け/国税庁

Q2, 見積書の有効期限はいつに設定すればいいですか?

見積書の有効期限は、一般的に1ヶ月から3ヶ月程度に設定することが多いです。

ただし、業界の慣習や取引内容によって適切な期間は異なります。たとえば、原材料価格の変動が激しい業界では短めに、大型プロジェクトでは長めに設定することがあります。また、季節性のある商品やサービスの場合は、その季節内に収まるように設定するのがよいでしょう。重要なのは、顧客との交渉や自社の状況を考慮して、適切な期間を設定することです。

Q3, 見積内容に変更があった場合、再発行してもいいですか?

見積内容に変更があった場合は、再発行して構いません。むしろ、必ず再発行するべきです。見積内容の変更は、価格や数量、納期などさまざまな要因で発生する可能性があります。そのような変更があった場合、最新の情報を反映した新しい見積書を作成し、顧客に提出しましょう。

再発行の際は、以前の見積書と区別するために、見積番号や発行日を更新したり、「改訂版」などの表記を加えたりすることをおすすめします。これにより、顧客との間で最新の合意内容を明確にし、トラブルを防ぐことができます。

Q4, 見積書に記載された納品日は確定ですか?

見積書はあくまでも契約前の書類であり、記載された情報は確定事項ではありません。通常は予定日として扱われます。確定ではなく、あくまでも目安となる日程です。ただし、顧客との合意によっては確定日となる場合もあります。納品日に変更が生じる可能性がある場合は、その旨を見積書に明記しておくことが望ましいでしょう。

また、納品日が確定している場合は、その旨を明確に記載することで、顧客との認識の齟齬を防げます。納品日に関しては、顧客とよく相談し、双方が納得できる日程を設定することが重要です。

Q5, 支払い期日はいつにすべきですか?

支払い期日は、業界の慣習や取引先との関係性、商品やサービスの特性などを考慮して設定します。通常は、納品後30日以内や月末締め翌月末払いなどが多く見られます。ただし、高額な取り引きや長期プロジェクトの場合は、マイルストーン払いや前受金を設定することもあるでしょう。

重要なのは、取引先と事前に十分な協議を行い、双方が納得できる期日を設定することです。

見積書の書き方を学び、スムーズな取引を実現しよう!

見積書は取り引きの基礎となる重要な書類です。正確な情報を記載し、誤解のないよう明確に作成しましょう。本記事では、見積書の目的や作成のタイミング、記載すべき項目、注意点などを詳しく解説しました。また、よくあるトラブル事例やQ&Aも紹介しましたので、参考にしてください。適切な見積書を作成することで、スムーズな取り引きと良好な取引先との関係構築につながります。

* years44 / shutterstock

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