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TOP > 用語解説 > 【用語】人事・労務 > 年5日の年次有給休暇の取得義務【用語解説】
有給休暇 

年5日の年次有給休暇の取得義務【用語解説】

2021.01.15

労働基準法が改正されたことにより、労働者に年5日の年次有給休暇を取得させる義務が雇用側に課されるようになりました。単純なようで意外と落とし穴が多いこの規定の詳細を解説します。

休日と休暇の違い

年5日の年次有給休暇の取得義務を理解するために必要な知識として、休日と休暇の違いがあります。休日とは、労働義務のない日です。休暇とは、本来労働義務のある日に労働義務が免除された日です。感覚的には「休日も休暇も出社しなくてもいい日」なので混同されがちですが、この違いを理解しましょう。

休日と休暇の具体例

具体例
休日 所定休日、法定休日
休暇 年次有給休暇、慶弔休暇、特別休暇

休暇は労働義務のある日に対して使用することができます。このため、労働義務のない休日に対して年次有給休暇を使用することができません。

年次有給休暇とは?

年次有給休暇とは、一定期間勤続した労働者に対して与えられる心身のリフレッシュを図ることを目的とした休暇です。

年次有給休暇が付与される条件は次のふたつです。

年次有給休暇が付与される2つの条件
条件1:雇入れの日から6か月継続して雇われている
条件2:全労働日の8割以上を出勤している

このふたつの条件を満たしている労働者には年次有給休暇が付与されます。付与日数等は次のとおりです。フルタイムなど週の所定労働時間が30時間以上の場合、「(1)原則となる付与日数」となります。

(1)原則となる付与日数(=週の所定労働時間が30時間以上の場合)

継続勤務年数 6ヶ月 1年6ヶ月 2年6ヶ月 3年6ヶ月 4年6ヶ月 5年6ヶ月 6年6ヶ月
付与日数 10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日

パートタイム労働者など週の所定労働時間が30時間未満の場合、「(2)パートタイム労働者等所定労働日が少ない場合」の付与日数となります。パートタイム労働者等の所定労働日数が少ない労働者は所定労働日数に応じて、比例付与されます。比例付与の対象となるのは、所定労働時間が週30時間未満で、かつ、週所定労働日数が4日以下または年間の所定労働日数が216日以下の労働者となります。

(2)パートタイム労働者等、所定労働日が少ない場合

週所定労働日数 1年間の所定労働日数 継続勤務年数
6ヶ月 1年6ヶ月 2年6ヶ月 3年6ヶ月 4年6ヶ月 5年6ヶ月 6年6ヶ月
4日 169日~216日 付与日数 7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日
3日 121日~168日 5日 6日 6日 8日 9日 10日 11日
2日 73日~120日 3日 4日 4日 5日 6日 6日 7日
1日 48日~72日 1日 2日 2日 2日 3日 3日 3日

年5日の年次有給休暇の取得義務とは?

年5日の年次有給休暇の取得義務とは、2019年4月の労働基準法改正によって、使用者に課せられた義務です。2019年4月以降、使用者は一定の要件を満たす労働者ごとに付与日から1年の間に5日間の年次有給休暇を取得させる必要があります。

年5日の取得義務の対象となる労働者は、年10日以上の年次有給休暇を付与される労働者です。フルタイムなど週の所定労働時間が30時間以上の労働者は、入社6ヶ月後の年次有給休暇の付与から取得義務の対象となります。

実務上見落としが多い点は、パートタイム労働者等の比例付与の場合です。例えば、所定労働日数が4日の労働者の場合、年次有給休暇の付与日数が10日となる入社から3年6ヶ月経過したときから、年5日の年次有給休暇の取得義務の対象となります。

人事総務担当者に言わせれば、「忘れた頃に取得義務が発生する」という感覚でしょう。取得義務に漏れがないように注意しましょう。

年次有給休暇のよくある誤解と正しい理解

筆者のこれまでの実務経験上、年次有給休暇は誤解が多いという印象です。よくある誤解と正しい理解を整理していきます。

誤解1:うちの会社には年次有給休暇がない!
正しい理解:どんな会社にも年次有給休暇はある

今は珍しくなってきましたが、「うちの会社には年次有給休暇がない!」と言う経営者がいます。話を聞くと、雇用契約書に「年次有給休暇なし」と書いてあるから、年次有給休暇がないと言います。

たとえ雇用契約書にそのような記載があっても、年次有給休暇は発生します。労働基準法は強行法規となるため、使用者と労働者の当事者間の合意などの特約によって排除できないためです。

誤解2:パートタイム労働者には年次有給休暇がない
正しい理解:パートタイム労働者にも年次有給休暇はある

パートタイム労働者には年次有給休暇がないと思っている方は経営者でも労働者でも珍しくありません。パートタイム労働者や派遣労働者など正社員の以外の雇用形態でも、条件を満たせば、年次有給休暇は付与されます。雇用形態によって、年次有給休暇が付与されないということはありません。

誤解3:年5日の年次有給休暇の取得義務は年度単位である
正しい理解:年5日の年次有給休暇の取得義務は労働者ごとに付与日から1年間である

「年5日の年次有給休暇の取得義務は年度単位、つまり4月1日から翌年の3月31日までに年5日取得させればよい」というのは誤解です。正しくは労働者ごとに付与日から1年間に5日取得させる必要があります。

中小企業の場合、入社半年後から有給休暇付与というケースが多いでしょう。すなわち、労働者ごとに年次有給休暇の付与日が異なることが一般的です。この場合、労働者ごとに異なる付与日から1年間に年5日の年次有給休暇を取得させる必要があります。

管理が大変な場合、年次有給休暇の付与日を会社で統一するなど方法がありますが、従業員同士の不公平など不満が発生しやすいため、統一する場合社労士など専門家に相談することをおすすめします。

年5日の年次有給休暇の取得義務 忘れやすい3つのポイントとは?

「労働者に年5日年次有給休暇を取得させなければならない」という話が注目を集めますが、書類の整備なども必要です。忘れやすい3つのポイントをお伝えします。

・忘れやすいポイント1:労働者に対する意見聴取
使用者から年次有給休暇の取得時季を指定する場合、使用者は労働者に対して年次有給休暇の取得時季に対する意見を聴取する義務があります。意見を聴取した上で、できる限り労働者の希望に沿った取得時季になるよう、聴取した意見を尊重するように努める必要があります。

・忘れやすいポイント2:年次有給休暇管理簿の作成
2019年4月の労働基準法改正によって、使用者は年次有給休暇管理簿を作成する義務ができました。年次有給休暇管理簿の書式は自由ですが、労働者ごとに「年次有給休暇を取得した日(=時季)、日数、年次有給休暇が付与する日(=基準日)」を記載した年次有給休暇管理簿を作成し、3年間保存する必要があります。

・忘れやすいポイント3:就業規則の変更
年次有給休暇は文字どおり「休暇」の一種となります。就業規則を作成した場合、必ず記載しなければならない事項があります。これを絶対的必要記載事項といいます。

就業規則の絶対的必要記載事項
1 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに交替制の場合には就業時転換に関する事項
2 賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の 締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
3 退職に関する事項(解雇の事由を含む)

絶対的必要記載事項には休暇が含まれます。使用者から5日の時季指定をする場合、就業規則の年次有給休暇の条文には時季指定の方法について記載する必要があります。厚生労働省のモデル就業規則などを参考にしつつ、会社の実態にあった条文に変更しましょう。

※kuro / PIXTA(ピクスタ)