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経営者の意識が変わるだけじゃダメ。従業員の意識改革を成功させるポイント4つ

2022.12.13

先日、中小企業におけるDX推進をテーマに記事を執筆しました(「IT人材がいない、採用も難しい」中小企業が低コストでDXを進めるためには)。DXとはデジタルのツールを利用した変革を意味しています。DXや働き方改革など、社内に変化をもたらそうとする場合、効果をしっかり引き出すためには現場の従業員と経営者の両方が同じ意識の変革を共有して目標へ向かう状況を作ることが重要です。

経営コンサルタントである筆者がしばしば相談を受けるのは、「現場が協力的でない」「現場の意識がついてこない」といった経営者・リーダーの皆様のお悩みです。今回は社内の意識改革に向け改革現場でとるべき対応をご紹介します。

意識改革を導くということの難しさ

「従業員の意識がなかなか変わってくれない」というお悩みをお伺いして筆者が最初にお伝えすることは、「意識改革は最も難しい取り組みであり、なかなか変わってくれなくて当然である」ということです。経営者の皆様もご自身のことを振り返っていただければおわかりいただけると思いますが、自身がそれなりに影響の大きな出来事を体験しないと、これまでの思考や行動を変容させることは難しいのではないでしょうか。ましてそれを能動的にではなく、他者からの期待や依頼で起こそうというのですからそもそも困難な取り組みなのです。

人には自分の考えや思いがあって、それを尊重されたい生き物です。その気持ちと折り合いをつけながら、これまでの考え方や働き方を自主的に変えてもらえるようになるためには、時間をかけて理解と納得を丁寧に醸成していくことが必要になります。

意識改革を起こすために必要な取り組み

Web上や雑誌でも意識改革の方法やコツについては多く語られています。従業員を巻き込む、経営者自らが率先垂範する、経営理念と合致した改革を示すなどといったものです。筆者の目線からするとこれらは当然のことですので、ここで改めて説明することは控えます。当記事では、あまり丁寧に語られない改革現場での進め方のコツをご紹介します。今回ご紹介するポイントは以下です。

①改革のゴール(目的)を明示する
②取り組みとゴールの論理的繋がりを説明する
③インセンティブを共有する
④必要な勉強の機会を提供する

以下、順番に各ポイントについて解説致します。

①改革のゴール(目的)を明示する

「意識改革」と唐突に言われ、「考え方や行動を変容しなさい」と言われても、正直なかなか前向きになれないものです。変化を楽しめる人も稀にいますが、責任や義務が生じる場面ではこれまで踏襲してきたやり方を変えることは、なかなか受け入れがたいことです。もちろんこれまでが苦痛だった場合は例外ですが。

大切なことは、組織としてどのような目的で変革が必要とされているのか、そして目指すゴールの姿はどのようなものかを具体的に指し示すことです。概念論や感情論ではなく、経営として具体的な目標を明示しなければなりません。筆者が存じ上げている例ですと、以下のようなものがありましたが、その内容は多岐にわたって構いません。

・社員数や残業時間を増やさずに売上を15%上げる
・イレギュラー発生時の平均対応時間を20分以内に収める
・離職率を20%以下に低減する

そして”③インセンティブを共有する”項目で補足しますが、ゴールは従業員にとってもメリットが感じられるものを設定しましょう。「自分たちに関係ない」と思われるゴールは、どんな工夫をしようとも共感は得られないものです。本来であれば、事業のために良い結果をもたらす改革の目的は従業員にとっても意義・メリットを感じられるものであるはずです。もしもそれが合致しない場合は、社内の評価、報酬などの制度に改善が必要な場合が多いです。

②取り組みとゴールの論理的繋がりを説明する

意識改革が必要とされる状況は、並行して業務的な改革を伴う場合がほとんどです。その際に単に「業務命令だから取り組んでください」という依頼だけだと、盲目的に言われた通りに実施するという事態を招きかねません。ここで大切なのは、たとえ仮説の段階だとしても、取り組みの目標と、別個の活動がどう連鎖し最終的なゴールを達成するのかというロジック・ストーリーをしっかりかつ丁寧に説明することです。これは、理解を得て実行してもらうことに加えて、現在の仮説や計画に軌道修正や補足が必要な場合、現場側から仮説どおりに物事が進まないことに理由を添えて報告してもらうことができるという効果も期待できます。現場での検証が同時に行われた場合、改善策を提示してもらえる可能性もあるのです。

③インセンティブを共有する

最も欠かしてはいけないのはこの点ではないでしょうか。事業のゴール(目的)が、従業員にとってインセンティブになるようしっかり設計しましょう。そのうえで、“達成 =(イコール)自分たちのメリット”であることをしっかりと受け取ってもらいましょう。もちろん事業の意義や達成感を支えに頑張ってくれる従業員もいるでしょうが、やはり仕事に対する評価はしっかりと対価で表すべきです。筆者がご一緒した企業様の取り組みでは、財務的な目標を達成した際には、一定の応分を従業員賞与に供与することを約束したり、場合によってはベースアップすらもインセンティブに組み込まれていることがありました。この点を最初にしっかり説明すると、参加者の聞く姿勢が強く前向き度を増す場面を筆者も何度も見ています。「良いことだから進めよう」だけではなく、「達成したら皆で喜びを形で分かちあおう」というスタンスの方が共感も得やすく、従業員から得られる自主的な貢献も引き出せます。

筆者が現在お手伝いしているプロジェクトを一つご紹介します。株式会社秋田スズキ様では、従業員皆で業務効率を改善し、一人あたりの売上を向上させ、収入をあげようという取り組みを進めておられます。経営者が目指す社内の改革に、従業員が一緒に共感の幅を広げながら改革の波を広げて行くプロジェクトの好例です。

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④必要な勉強の機会を提供する

最後のポイントは、意外と忘れられがちですが非常に重要です。経営者自身が知った・学んだことで改革の必要性を感じるようになった見識は従業員の皆さんにも共有しましょう。変革を導くために必要な参考事例や、新しいIT・技術・ツール、法令・制度など、いろいろな知識があると無いとでは考え方も変わってきます。新しい学びが事業の変革に役に立ち、そしてその結果が自分たちのメリットに繋がる、この連鎖が従業員皆さんに浸透していけば、会社の変革は徐々に加速していくはずです。

最後に、性急に結果を求めない

目的地と目的地までのルートを設計し、社内に展開したら、早く結果を見たくなってしまうのは人の性だと思います。しかし、従業員の皆さんは、今の業務とこれからのことを咀嚼しながら少しずつ変わってくるはずです。経営者自身がいろいろな経験・思考を経て、変革を成し遂げたからと言って「皆も今すぐそうなるべきだ」という態度は絶対に見せてはいけません。日々の仕事の中で従業員が見せた変化・進化にしっかりと気づき・発見して称賛し感謝することを心がけましょう。そうすることで確信を強めて会社の変革プロセスを応援してくれるようになってくるでしょう。

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*Mills、tiquitaca / PIXTA(ピクスタ)

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