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若者の離職

スグやめる理由は…?若手社員の離職率が高い会社が行うべき3つのこと

2022.06.06

生き方や働き方に対する価値観の変化、会社への愛着や貢献意識の低下により、若手人材の定着がこれまでよりも一層難しくなっています。このような状況の中で、優秀な若手人材の離職を防ぐことは、会社の競争力強化のための重要なポイントです。

当記事では、人材の流動化が進む昨今において、貴重な人材を自社につなぎとめ、人材定着を成功に導くための施策についてご紹介します。

人材採用・定着の難化

少子高齢化社会の到来により労働力が不足し、人材の確保がより難化し各企業が人材の争奪戦を繰り広げている状況です。終身雇用や定期昇給の機能を失った現在の日本企業には、長期継続勤務をすることで得られる恩恵が以前に比べて少なくなっていることに加え、SNSの発展や転職サイト・転職エージェントなどのサービスが拡大により、人材の流動性が高くなっていると言えます。

若手人材の傾向

1997年に厚生労働省が実施した「若年就業実態調査」では、「初めて勤務した会社で現在勤務していない」と回答したのが約28%だったのに対し、執筆時点での最新データ(平成30年集計結果)では、約47%が勤務していないと答えており、若手人材の転職が増えていることが分かります。ベテラン人材の方は、若手の転職といえば、ワガママで自分勝手、忍耐力がなく下積み経験を毛嫌いしていると思われるケースがあると思いますが、社会構造の変化に目を向けると違う理由が見えてきます。

*若年就業者・・・調査基準日現在で満15~34歳の労働者をいう。

今の若手人材が以前より早期に転職するようになったのは、“スキル社会が到来したこと”が一つの要因です。経済のグローバル化やデジタル化によって、ビジネスの経営環境が短期間で変わっていく昨今、企業の寿命が短命化し、企業の平均寿命が20年を下回る傾向にあることが明らかになっています。その一方で、日本人の平均寿命は確実に伸び続け、70歳を超えても働くのが当たり前の時代になっていきます。この2つの流れが意味しているのは、会社員生活は企業寿命の2.5倍を超える長さになり、計算上いかなる人でも人生で3つの仕事や会社を経験しなければならなくなるということです。1つの仕事に従事する期間を長くても15年で区切って自らのキャリアを見直し、必要に応じたスキルアップを図っていくことが必要になります。

しかし一方で、企業の平均寿命が短期化する時代に、会社が主導で行う定期的な研修やジョブローテーションなどによる従来型の人材育成が難しくなりました。よって、これからは会社が社員のキャリア形成やスキルアップを図るのではなく、各々が自らの責任においてキャリアを形成し、スキルを身に着けようとする訓練が求められるようになります。

さらには、長時間労働の規制や有給休暇の取得義務化をはじめとする働き方改革関連法の整備により、半ば強制的に時間の余裕が生まれ、従来型の仕事量をこなすことで成長に繋げる事が困難になり、自ら主体的に成長機会を作ることが求められるようになりました。また、働き方の多様化やワークライフバランスへの意識の高まりなどの背景もあり、若手人材にとって会社に属することは、自身の成長・自己実現のための数ある選択肢の一つであるという意識が高まっています。

つまり、若手人材は会社に属することで、どのようなスキルや経験を得ることができ、その先にどのようなキャリアを歩むことができるかを真剣に考え、今の会社や仕事で学べることが少ない、あるいは、ある程度学べたと判断した時には、たとえその仕事に従事した期間が1~2年であっても退職する可能性が高いということです。

【こちらの記事も】なぜ辞める?離職率の計算方法と人材流出を防ぐ「リテンション施策」とは

会社がとるべき対策は?

では、優秀な若手人材の定着にはどのような施策を講じていけば良いのでしょうか。それは“主体的に成長を志向する人材が活躍しやすいES(人間性尊重経営)を軸にした組織開発を行うこと”だと筆者は考えます。具体的には、以下の3つの退職理由を解消することです。

1つ目の退職理由は「新しい提案をできる風土がない」ことです。優秀な若手人材は、新しい試みや問題を発見し改善案を考え、実行する能力を持っており、業務の中でその能力を発揮していきたいと考えています。新しい試みや改善案の提案や実施が認められない状況が続けば、成長の実感を得ることができず窮屈さを感じます。そのため、新しい提案ができる風土や経営への参加意識を持つことができる風土作りが求められます。具体的な施策としては、経営者と対話する機会や若手からの提案機会の創出、階層の少ないフラットな組織、下位者への権限委譲、社内情報の積極的公開などが効果的です。

2つ目の退職理由は「会社の目指している方向が見えない」ことです。会社の目指す姿が示されず、何を目標に仕事をすればいいのか分からないような状態では、この先何が得られるのか不明瞭で、会社を魅力的に思えず退職に繋がります。優秀な若手人材は自身で目標設定を行い、目標達成のために情熱を注ぐので、会社が掲げたビジョンと自身の目標が同じ方向を向いている時には自発的に会社で能力を発揮します。会社は優秀人材が共感し、ワクワクするようなビジョンを作り、優秀な若手人材に共感してもらえるよう働きかけることが効果的です。

3つ目の退職理由は「キャリアの選択肢の幅が狭い」ことです。優秀な若手人材は主体的にチャレンジングな仕事を志向します。そのため、能力開発にも熱心です。しかし、新しい職務や昇進など、能力開発の機会そのものが与えられない場合、会社に魅力を感じなくなり退職に繋がります。なので、会社は「多様なキャリアプランを提示する」ことが求められます。今の業務が将来のなりたい姿にどうつながるのか、身につけておきたいスキル・経験がいつ得られるのかなどを明確にし、その道筋として多様なキャリアプランを用意します。具体的には、Off-JT*の実施、ジョブローテーション、社内公募、社内外の自己啓発の場の提供などが効果的です。

*Off-JT・・・Off-the-Job-Trainingの略称。職場や通常業務から離れ行う教育・学習のことを指す。

若手人材が求めるやりがいとは

チャレンジ精神が旺盛な若手人材は、身に着けたスキルや業務の合間を縫って勉強した経験を活かすために、早い段階で転職を検討する傾向にあります。そして、会社の中で出世することよりも、興味がわいたものを学べる場所へ、学んだことを活かせる場所へ転職を繰り返していると考えられます。それも、幅広い分野に関心を持ち、自身の興味やキャリア形成に役立つ最新の情報に敏感です。だからこそ、自身の成長のためにチャレンジできる環境を会社に求めるのでしょう。会社としては、まず機会や場所を与え、会社が若手人材から学ぶという姿勢も必要だと考えます。

【こちらの記事も】人材流出が止まらない!社員が次々と辞めていく中小企業の3つの特徴と改善策

【参考】
平成30年若年者雇用実態調査の概況 – 個人調査 3 これまでの就業状況 / 厚生労働省

*Luce、マハロ、metamorworks / PIXTA(ピクスタ)