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経営者

孤軍奮闘には限界が!経営コンサルタントが教える「経営相談の活用のコツ」

2022.11.21

経営者は、企業の中ではトップの権限を持ってはいますが、決して万能な人間ではありません。専門家や有識者、果ては市場をダイレクトに教えてくれる消費者までアンテナを伸ばして判断に必要な情報を集める必要がありますが、そのすべてを一人で担うことは現実的ではないでしょう。しかしながら、一人孤独に戦っている経営者も見受けられます。

今回は、経営コンサルタントである筆者が、経営相談の必要性や相談相手ごとの特徴や活用法を解説します。

経営相談が必要な理由

経営相談の必要性を経営コンサルタントの筆者が述べるのは我田引水であるような気がしますが、筆者自身、経営者として事業経営をしていた経験があります。今回は、経営コンサルタントの目線に経営者の目線を加えて整理してみます。

まず、経営者が他の立場と異なる点は、事業の最高責任者として、すべての最終意思決定を行ない、すべての責任を負わねばならないことです。組織内で権限委譲を行っていたとしても、最終責任者が自分であることは変わりません。経営者はどの従業員・関係者よりも合理的・客観的に適切な判断を下し続けることが求められるのです。

意思決定を行うためには、事業が置かれた環境や市場動向、行政施策、法制度、果ては国際情勢まで幅広く知識・情報を持っていなければなりません。合理的な判断を下すためには、自分一人ですべてを行うのではなく、場合によっては議論・相談が必要です。

こういったお話をすると「困ったら“相談”するなんて当たり前のことでは?」と思われるのですが、経営者は組織のトップという立場上、すべての論点を同じ目線で考えてくれる相手を見つけることはなかなか難しいです。ゆえに、論点に応じた適切な相談者を得て、自らも理解・納得を深めながら一つひとつの経営課題に取り組み、判断の的確性を高めていかねばならないのです。

経営相談の種類分け

経営相談には、大きく2つの種類あります。わかりやすいのは、専門知識をもった専門家への相談です。知識・経験が及ばない特定の領域について専門家の知識・見識・アドバイスをもらうためのものです。もう一つは、事業の方向性や戦略を定めるための総合的な経営相談です。専門家への相談よりも、より戦略的かつ合理的な判断をするための議論の相手になってもらうものです。事業の方向性や強み・弱みなどを理解した上で、一緒に議論してくれる見識をもった人物が必要になります。

相談相手によって、相談の内容や利活用の仕方が異なります。経営相談の2つの種類を、以下のようにさらに6種類に分けるとわかりやすいでしょう。

①特定の専門性を頼る相談相手
(1)士業先生

②総合的な経営相談を行える相談相手
(2)無料で利用可能な相談窓口
(3)有料専門サービス
(4)金融機関
(5)地元または同業者の経営者団体
(6)組織内での育成

では、それぞれの利用のコツや注意点を解説していきます。

①特定の専門性を頼る相談相手

(1)士業の先生:弁護士・税理士・社会保険労務士・司法書士

弁護士・税理士・社会保険労務士・司法書士といった士業の先生たちに、専門領域について相談します。基本的に、経営者自身は多忙で業務領域も多岐にわたります。専門家が存在する領域は、すべて自らでこなそうとせず、積極的に相談先として利用し、自らの時間と労力を営業の拡大や社内制度整備に専心させるべきです。

士業の先生たちとは定期的に相談の時間を設けておくことをおすすめします。法律・行政の仕組みや制約を知らず無為にリスクを増やしてしまったり、有用な制度などを逃してしまわないように、常に情報をアップデートしておく必要があるのです。定期的に情報を共有することで、自社の戦略や方針および現状などを理解してもらえます。そうしておくと、各士業の先生側から能動的なアドバイスがもらえることも少なくありません。

顧問契約までするかどうかは、自社の状況と照らし合わせた判断が必要ですが、継続的に信頼できる先生との関係性は築いておくと良いでしょう。そうすることで専門家筋の有用な情報を適切なタイミングで入手でき、経営判断的に無為な機会ロスなどの予防につながります。

②総合的な経営相談を行える相談相手

(2)無料で利用可能な相談窓口:商工会議所・中小企業基盤整備機構・よろず支援拠点

商工会議所・中小企業基盤整備機構・国が設置している中小企業・小規模事業者向けの経営相談所『よろず支援拠点』などは、総合的な経営相談を無料で受け付けています。無料なので肩ひじ張らずに相談できます。これらの窓口の相談対応担当者は、地域の経営相談に広く対応しているため、他社対応や地域でサポートを得られそうな専業サービス・士業の先生などもよく知っています。個別の課題に応じて、専門性が深い相談相手を紹介してもらうことも可能です。

『よろず支援拠点』は各都道府県に窓口がありますが、場合によってはジャンルごとの専門家を派遣する『中小企業119』(初回無料、2回目以降有料)が活用されることが多いです。特定の相談したいテーマがある場合に有力で、例えば「ウェブでのマーケティング・販売を開始したい」「経理作業を軽減化したい」などの具体的な相談に向いています。小回りの効く相談対応が行われているため、状況によっては非常におすすめです。

(3)有料専門サービス:中小企業診断士・経営コンサルタント(専門・総合)

いわゆる“コンサルティング”は千差万別です。筆者が経営コンサルタントとして発言するのもおこがましいですが、“コンサルタント”という肩書は、資格試験があるわけではなく、誰でも名乗ることができます。一方で、中小企業診断士は、試験に合格しているため一定の知識を備えていると考えられます。しかし、“知識を備えているから経営相談の相手として優れている”とは言い切れません。コンサルタントの能力は、知識だけで測ることは難しく、現場での経験量や論理的思考力などがバランスよく備わっている必要があるのです。

先述した無料相談窓口は、組織として見識・経験が蓄積しているため、公的な組織として安定した対応が期待できますが、独立したコンサルタントは実力を見極めるのが大変難しいです。この不安点を払拭するためには、まず実績を確認しましょう。一番安心なのは、実際に利用した経営者から話を聞いて、自分が相談したい内容に期待通りのアドバイス・対応をしてくれそうかを見極めることです。まったくの手がかりがない場合は、これまでの実績を入念に質疑し、納得の上で具体的な相談をするようにしましょう。ちなみに筆者の場合は、ご縁をいただいた当初はコンサルティングを無償で提供しています。そこで実力や経験をクライアント候補の方に測っていただき、そのうえでご判断いただいています。

(4)金融機関:銀行・信用金庫などの市中金融機関、信用保証協会

金融機関は、相談相手として大変有用です。過去の記事で金融機関とのお付き合いの仕方についてご紹介いたしました。ぜひ参考にしてください。

【こちらの記事も】できる経営者はどうしてる?金融機関との上手な付き合い方【事業コンサルが解説】

今回は、上記と重複しない点をご案内します。金融機関への経営相談で重要なのは、担当者が信頼のおける人物かどうかです。もちろん大半は誠実な対応をしていることが前提ですが、実は銀行などの営利法人が、自社利益誘導や優先的地位の濫用としか言いようの無いやり方をしているケースがあります。異動で担当者が変わった途端に手のひらを返されたという話を伺うことも決して稀ではありません。

こういった事態をできるだけ防ぐためには、周りの経営者の評判やご自身の目利きを最大限使って、担当者を見極めることです。信頼できる担当者かどうかをしっかりと見極められていれば、銀行・信用金庫などの市中金融機関は地域へのネットワークも広く、資金繰りについて強い味方になります。多方面に渡って強力な支援を得ることも可能です。ここは、見極め力とリスクとの兼ね合いです。盲信だけはくれぐれもお気をつけください。

信用保証協会は、しっかりと味方につけておくことをおすすめします。地域の金融機関にはそれぞれ得意・不得意な分野がありますが、信用保証協会は、横串で地域の金融機関の情報を持っています。また、銀行などとは損金の計上の仕方が異なるため、自組織への利益誘導的な動きはほとんどなく、協力してもらえることが多いです。

(5)地元または同業者の経営者団体

同じ市場で経験を積んでいる経営者は、相談相手として抜きん出て頼もしい存在になることが多くあります。筆者は“地方創生”というテーマで各地にお邪魔している立場なのですが、ご縁をいただく経営者の方々の中には、地域経営者団体で粉骨砕身の貢献をしている方が大変多いです。ぜひ同じ地域を発展させる仲間として頼ってみてはいかがでしょうか。ご自身の地域貢献へのモティベーションを高めることもでき、メンタル面でもプラスに働くことが多いと思います。

【参考】リンク集:経営者団体等 / 独立行政法人労働政策研究・研修機構

(6)組織内での育成

最後に、組織内での相談相手育成についてです。「社内に相談相手となる人材がいない」と嘆く経営者は多いです。これができていないことが、事業展開のボトルネックになっているケースもまた多く見受けられます。課題になりやすい部分ですが、強く意識することで事業の伸び方が劇的に変わることも期待できるでしょう。

共同経営者や長年の同輩が社内にいて、相談相手になっている場合は大変に幸運です。しかしほとんどの場合は社内の相談者を確保する必要があります。その手段は大きくわけて、社内で育成するか、社外から招くかの2つです。

社内で育成をする場合、まずは普段から、自らの経営方針・事業計画について社内で理解を深めてもらうための努力・施策を継続的に実施しましょう。積極的に後継者候補を巻き込み、課題の炙り出し方、意思決定のプロセス・判断基準、事業品質の評価方法などの経営者としての役割・責任について継続的なOJTを行います。後継者の育成と相談相手の確保の両方を目指すことで、目線のあった人材を育成することが可能になります。

【こちらの記事も】まだまだ先と思ってない?事業承継を今すぐ考えるべき理由と支援制度まとめ

経営相談のお作法

最後に、相談を行うお作法についてです。相談相手には、それぞれわかること/わからないこと、知っていること/知らないこと、得意なこと/不得意なこと、できること/できないことがあります。相談をする前には、「何を課題と考えているのか」「どのような方向で解決したいと考えているのか」をできるだけ説明できるようにしておいてください。

筆者が経営相談を受ける際、「何をお答えしてあげたらいいんだろう?」ということが判然とせず、最初に「何を求めているのか?」をカウンセリングのように発掘するコミュニケーションが必要な場面が稀にあります。これは、実は大変な問題です。経営者が現在の状況が良くないことは感じているものの、具体的に何が課題で、それに対して求める解決の方向性も選択肢も検討されていないということだからです(中にはそういった曖昧な質問を故意にすることで我々コンサルタントの力量を推し量ろうとする難敵なお客様もいらっしゃいますが、その場合筆者はその会話を楽しんでお相手します)。

事前に課題や解決の方向性を整理しておくことで相談相手は、自分の知識・技術・経験からどの引き出しを提供することが効果的かを判断できます。また、総合的な経営相談の場面では、その方向性自体に修正が必要な場合、方向性修正に踏み込んだ議論まで行うことが可能になるでしょう。

 

三人寄れば文殊の知恵です。当たり前のことを敢えてここで言うのかと思われそうですが、何事も自分だけが頼りと考えずに適切に周囲の見識や経験を巻き込んで、事業に的確な相談を行えるチームを継続的に形成していくことを目指してください。

また、経営相談とは別にご自身の悩みを相談する場やストレス緩和のために、メンターやコーチを相談相手にする選択肢もあります。以下の記事も参考にしていただければ幸いです。

【もっと詳しく】まさか自分がうつに?孤独を感じる経営者に今すぐ試してほしい「セルフケアの方法」

*amadank、nonpii、yamahide、YUJI、アン・デオール、しろくま工作室 / PIXTA(ピクスタ)

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