登録

会員登録いただけると、

  • メールマガジンの受け取り
  • 相談の広場への投稿 等

会員限定のサービスが利用できます

登録(無料)を続ける
TOP > 記事一覧 > 人事・労務 > 中小企業も賃上げするべき?しない場合の影響・その他対応策を解説【補助金も】
賃上げ

中小企業も賃上げするべき?しない場合の影響・その他対応策を解説【補助金も】

歴史的な物価高に伴って、日本政府は企業の賃上げを後押ししています。物価高は従業員の生活に影響を及ぼし、実質賃金を低下させるため、賃上げが喫緊の課題となっているのです。国を挙げた賃上げの後押しもあり、企業からは賃上げの声が続々と聞かれるようになってきました。しかし、未だ賃上げに踏み込めない企業もあるため、代替策が必要です。

物価高騰の影響とは

過去1年間の物価上昇は、家計に大きな影響を与えています。

東京都統計局が発表している消費者物価指数は前年同月と比較して3.4%上昇し、日常生活に必要なさまざまな商品が値上がりしました。大まかな値上がり品目を一覧にすると以下の通りです。

  • 家具・家事用品・・・8.9%
  • 食料・・・7.4%
  • 光熱・水道・・・4.9%
  • 被服及び履物・・・4.3%
  • 交通・通信・・・2.6%
  • 諸雑費・・・1.8%
  • 教養娯楽・・・1.3%
  • 保健医療と教育・・・0.8%
  • 住居・・・0.6%

一方、値下がりした商品も存在し、”みかん”は27.1%値下がり、”たまねぎ”は34.1%値下がりしています。また、昨年末から今年初頭にかけて話題となった電気代の高騰も政府の対策が項を奏し、前年同月に比べ7.6%値下がりしました。しかし依然として消費者物価全体で見ると3.4%上昇しており、また電力各社が規制料金のさらなる値上げを申請するなど、今後も物価が上がっていく可能性のほうが高いといえるでしょう。

【参考】生活関連商品等の価格動向/東京都

【こちらもおすすめ】「給料が低いので辞めます」どう対応する?給与を理由に退職する社員への接し方と注意点

中小企業経営者は賃上げをどう考えているのか?

物価上昇に伴って、企業も続々と賃上げに乗り出しており、話題になっています。岸田総理大臣が年頭会見や自民党大会などで企業の賃上げに言及するなど、国を挙げて賃上げを後押しする空気が醸成されつつあるのです。連合の集計によると、2023年の春闘での正社員の賃上げ率は3.8%でした。これは前年同月と比べて1.99%上回る大幅な賃上げです。ただし、連合は大企業労組の集まりであり、中小企業はこの数字には含まれていません。

中小企業の賃上げは現在どうなっているのでしょうか。

日本商工会議所と東京商工会議所が2023年2月に実施した調査によると、全国の中小企業うち2023年に賃上げ予定だと答えた企業は6割に上りました。賃上げ率については2%以上と答えた企業が6割となっています。また「最低賃金を引き上げるべき」と回答した企業が4割以上に上り、「引き下げるべき」「現状維持が良い」という回答を上回りました。この調査結果を見る限り、大企業の賃上げムードが中小企業まで波及しつつあるといえるでしょう。

しかし、中小企業の賃上げ率の幅は依然として大企業よりも小さく、4割は賃上げしない、あるいは未定です。この4割の企業は賃上げしたくないわけではなく、賃上げしたくともできない企業が多いのだと考えられます。けれども、賃上げする予定のある企業が多数派である以上、賃上げしないことによってさまざまな悪影響が出てくるかもしれません。

【参考】2023 春季生活闘争 第 3 回回答集計結果について/連合
【参考】「最低賃金および中小企業の賃金・雇用に関する調査」の集計結果について/日本商工会議所

【給与設定についてもっと詳しく】給与設定や改定…基準が難しいから困る給与のお悩みまとめ

賃上げをしないことの影響3つ

賃上げしないことによる影響は主に3つ考えられます。

①人材確保が難しくなる

現在は人手不足が深刻化しており、賃上げがない企業は優秀な人材が他社へ流れ、人手不足がさらに加速する恐れがあります。競合他社よりも待遇面で劣る場合、どうしても応募者は競合他社に流れてしまいます。競合他社に応募して、採用されなかった応募者が自社に入ってくるようになるのです。その場合、人材面で常に競合他社に遅れを取っていることになり、収益性や成長性の面に影響が出るでしょう。

②離職率があがる

賃上げがない場合、従業員のモチベーション低下や不満の蓄積が起こり、離職率が上昇するかもしれません。人材の流動化により、企業は採用コストや教育コストが増える一方、経験や知識が蓄積されず業績にも悪影響が出ると予想されます。物価が上昇しているにもかかわらず賃上げがないことで、実質賃金は減っていくのです。すると、従業員は残業代や副業で収入を補おうとするでしょう。労働時間が長くなりすぎたり、労働力が副業に分散されることで、本業の生産性が低下する可能性があります。従業員のストレスが増加し、職場の雰囲気が悪化することで、業務効率の低下や従業員の健康への悪影響も考えられます。

③会社の評判が落ちる

昨今は就活口コミサイトが普及しました。就活口コミサイトとは、社員や就活生たちが企業について情報交換を行えるサイトです。就活生たちはみんなこのようなサイトを参考にしています。他にもSNSなどもあるため、企業の評判は容易に広がります。賃上げがない企業は、待遇面での評判が悪化するリスクが高まるのです。企業イメージの悪化は、採用に影響を与えるだけでなく、取引先や顧客に対しても信頼を損なうことがあります。その結果、新規事業の取引先開拓が困難になることや、顧客が競合他社に取られる可能性もあるかもしれません。

【人材が定着しないという悩みについてもっと詳しく】中途社員が定着しない…見落としがちな中小企業の人材確保のワナ

賃上げができない中小企業でもできる代替策は?

①一時金の支給

賃上げが難しい中小企業でも、一時金の支給を検討することで従業員のモチベーション向上や報酬の充実が図られます。物価上昇手当(インフレ手当)という名目で支給する企業も増えているようです。一時金の支給方法は複数考えられますが、最も事務処理負担が少ないのは賞与に上乗せする方法でしょう。毎月の手当として継続して支給する場合は、就業規則や残業代の計算方法まで影響が及ぶため、手間がかかります。

②補助金や助成金の活用

政府が賃上げを後押しする補助金制度をいくつか作っています。たとえば以下のような補助金が使えます。

  • 事業再構築補助金・・・生産性向上を支援する補助金。賃上げ達成で補助率が増える。
  • ものづくり補助金・・・新商品・新サービスの開発を支援する補助金。一定の賃上げで上限金額が増える。

賃上げに関連する助成金や補助金を活用することで、生産性向上や価格転嫁が促進され、従業員の賃上げが可能となります。国も賃上げを後押ししていますので、積極的に活用しましょう。

【参考】事業再構築補助金/経済産業省
【参考】ものづくり補助金総合サイト/全国中小企業団体中央会

③生産性向上と価格転嫁

生産性を向上させて製品の付加価値を増大させ、販売価格に賃上げ分のコスト増を転嫁しましょう。なかなか簡単にできることではありませんが、やはり王道の施策なので、意識的に取り組むことが必要です。企業の生産性は資本装備率と相関があることが知られています。資本装備率とは、従業者一人当たりの設備保有状況のことであり、この指標が高いほど、生産現場の機械化が進んでいることを示しています。先述した助成金や補助金などを活用しつつ、ITツールの導入などDXを促進し、資本装備率を高めましょう。業務プロセスの見直しや労働時間の削減を合わせて行うことで、生産性を高めつつ、従業員の負担を軽減することも期待できます。

【コスト削減についてこちらもおすすめ】コスト削減アイディア&やってはいけないNGポイント3つ

まとめ

賃上げを行わないことの影響は、人手不足の加速、企業の評判の悪化などが挙げられます。企業の成長や競争力に大きな影響を与えるため、対策が必要です。賃上げが難しい中小企業でも、一時金の支給、助成金の活用、生産性向上といった代替策を検討することで、従業員の待遇改善に繋げられます。

【こちらもおすすめ】社員の給与の決め方は?給与決定の手順とコツ【経営の基礎知識をわかりやすく解説】

*Ystudio, Yotsuba, metamorworks, nonpii, Luce / PIXTA(ピクスタ)

【まずはここから】はじめてのフリーアドレス導入ガイド