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社員の給与の決め方は?給与決定の手順とコツ【経営の基礎知識をわかりやすく解説】

2022.06.21

会社が社員を雇い働いてもらうためには、当然ながら給与が発生します。この給与の金額は、低く設定しすぎると社員のモチベーションダウンや優秀な人材の流出危機を迎える可能性があり、高く設定しすぎると経営資金に影響を及ぼす可能性があるため、慎重に決定していかなければなりません。

今回は、給与体系の見直しなどを検討されている方やはじめて社員に給与を支払う経営者に向けて、給与決定の手順やコツについて順を追って解説していきます。記事の最後には、はじめて給与を支払う際に実施すべきことをまとめたチェックシートもあるので、ぜひ参考にしてみてください。

一般的な中小企業の給与体系とは

給与体系とは、給与の額をどのように決定し、支給するかをルール化した基準のことです。実際には、給与体系に沿った形で社員へ給与を支払っていくことになります。給与体系は、“基本給”と“手当”の2種に分類されます。基本給は、年齢や能力、役職、担う仕事の重要度などから総合的に決められます。手当には、任意の手当と法定の手当があり、うち任意の手当は、会社の実態に沿った形で役職手当や皆勤手当、通勤手当などを設けます。一方、法定手当は法律で支払が必須とされている手当で、残業手当や深夜残業手当、休日手当などが挙げられます。

大企業の場合は、雇う社員の人数や種別が多岐にわたるため、段階に応じた賃金テーブルを作成し、時代に沿った形で適用できるよう定期的に見直しながら運用を進めていく必要があります。一方、企業規模の小さい中小企業の場合は、雇用する社員の数にも限りがあります。給与体系を決定しやすい反面、慢性的な人手不足に悩む会社も多いことから、項目別に詳細を決定していく賃金テーブルを作成する時間を確保することが難しいケースもあります。よりシンプルに分かりやすく、社員に不満を抱かせないような給与体系をどのように整えていけばよいか、次の項目で見ていきましょう。

給与の決め方

ここからは、実際に給与を決めていく手順やポイントを紹介していきます。まず、給与の最も核となる“基本給”について説明しましょう。

STEP1:基本給の決定

基本給の金額は、厚生労働省より毎年提示される“最低賃金”を遵守する必要がありますが(「最低賃金制度の概要」/ 厚生労働省)、その他には決まったルールは設けられておらず、会社が任意で決定することができます。ただ、あてずっぽうな金額で定めるわけにもいかないことから、主に次の内容を参考にしながら決定するパターンが多いようです。

■同業他社の水準

国税庁のホームページでは、業種別の平均給与や給与階級別分布の内容が掲載されていますので、参考にしてみてください(民間給与統計調査結果の概要「平均給与」「給与階級別分布」/ 国税庁)。ポイントは水準を下回らないこと。インターネットが普及している昨今では、社員側も簡単に他社の給与情報を得られる状況にあります。「この会社は他社より給与額が低い」という思いを抱かれたり、噂を広められたりするリスクを考えると、水準より少し上回る程度の内容にとどめておく方法が効果的でしょう。

■労働分配率

労働分配率とは、企業が作り上げた粗利益(付加価値)のうち人件費が占める割合のことで、「人件費÷粗利益×100」という式で算出されます。この労働分配率は、大企業では低くなる傾向がある一方で、中小企業では高くなる傾向が多くみられます。その要因は、中小企業の粗利益が大企業よりも少ないことが挙げられます。業種別の労働分配率は、経済産業省のホームページで調査結果が掲載されているため、利益に対してどの程度の水準の給与を設定するか参考にしてみてはいかがでしょうか(「経済産業省企業活動基本調査速報 2021年経済産業省企業活動基本調査(2020年度実績)」/ 経済産業省)。

■自社の状況に応じた社員の評価基準

“年齢給”や“職能給”“職務給”“成果給”などと呼ばれる部分は、自社の状況に応じて設定をする必要があります。たとえば、中途採用社員が多く活躍する社員の場合、勤続年数を重視した評価基準はそぐわないといえるでしょう。専門知識が必要な業種の場合は、資格やスキルに応じた評価にする、内容や難易度が異なる複数の仕事が混在する会社の場合は、成果に応じた評価にするなど、会社が今後売り上げを伸ばしていくためにはどのような社員が必要かを勘案した上で、基準を決定していく方法が求められます。

【こちらの記事も】給与引き上げで節税効果を狙う?中小企業向け「賃上げ税制」の見直し【わかりやすく解説】

STEP2:各種手当の設定

基本給の内容を決定したところで、次の段階では“手当”項目の設定をしていきます。主な手当としては、次の内容が挙げられます。

・仕事の内容に応じた手当(役職手当・インセンティブ手当など)
・社員の能力に応じた手当(資格手当・技術手当・専門手当など)
・社員の状況に応じた手当(扶養手当・家族手当・住宅手当・地域手当など)
・社員の実費を弁償する際の手当(通勤手当・ガソリン手当・マイカー手当など)

上記の内容を参考にした上で、会社に必要な手当の内容を取捨選択していきます。手当を定める際に検討すべきポイントは、法定手当を除く、任意手当として支払われる金額を昇給などの対象にするのか、という点です。手当を昇給・減給の対象に含めるかどうかは法律による定めがなく、会社が状況に応じて決定することができます。手当の内容を決める際にあわせて検討しましょう。

STEP3:就業規則や賃金規程に定める

基本給や手当に関する内容が定まったところで、次はその内容をルール化し、社員へ周知させるために就業規則へ規定していきます。定まった内容のボリュームが大きくなってしまった場合は、就業規則とは別に“賃金規程”を別規程として設ける方法が分かりやすく効果的です。定めた規則については、会社の規模に応じて労働基準監督署への届出を行う必要があるため注意しましょう。

STEP4:給与の支払い

STEP1~3の内容に沿って設定された給与は、毎月の期日に社員へ支払われるように支払処理を行います。これを、給与計算といいます。給与計算は、毎月必ず行わなければならない非常に重要な処理となります。対応の抜け漏れがないように、チェックシートなどを用いて管理していく方法が有効です。

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給与額の決定から支払いまでの流れについて、お分かりいただけましたでしょうか。会社の発展のためには、社員に高い意識をもって働いてもらうことが必須となり、そのためには適切な給与の支払いが欠かせません。自社の内容や将来の展望もふまえた上で、慎重に給与額の決定を検討してみてください。

【こちらの記事も】給与計算の手抜きで労使関係に亀裂が…「外注しているからOK」は危険

【参考】
『最低賃金制度の概要』/ 厚生労働省
『平均給与』/ 国税庁
『給与階級別分布』/ 国税庁
『経済産業省企業活動基本調査速報 2021年経済産業省企業活動基本調査(2020年度実績)』/ 経済産業省

*freeangle、たっきー、CORA、カッペリーニ / PIXTA(ピクスタ)