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TOP > 記事一覧 > 人事・労務 > 中堅・リーダー社員のモチベーションを上向きにするための3つのヒント

中堅・リーダー社員のモチベーションを上向きにするための3つのヒント

~中堅ハウスメーカーのとある営業会議~

入社9年目のAさん。営業部長に淡々と今月のチームの目標進捗と、来月の予定を報告している。新卒で営業部門に配属されて以来異動もないため、この領域の営業活動は安心して任せておける。

Aさんは31歳で、チームの中ではキャリアは上から3番目のベテランクラスだ。それでもAさんには「チームを引っ張るリーダー」という存在感がない。決して成績は悪くはない。ここがダメだという具体的な改善ポイントもない。しかし、どことなく「一皮むけない」という印象が否めない。

いかにしてAさんを、チームを引っ張るリーダーに脱皮させるか。それが現在の営業部長の悩みの種なのです……。

業種・規模を問わず、会社の要となる存在の「中堅・リーダーシップ層」社員。

上にとっても下にとっても、また左右の他職場に対するハブとしても、重要な位置付け です。この重要な中堅社員層のモチベーションは、会社全体の業績や風土を左右するといっても過言ではありません。

今回は、中堅・リーダー社員のモチベーションを向上させるポイントについて紹介します。

中堅社員を取り巻く現状

一般的には、中堅社員とは入社3~4年目以降で、係長や課長などの役職についていない社員をさします。年齢や役割もさまざまなため、画一的な人材開発の施策が施しにくい層といえます。

新入社員のスキル研修や管理職層のマネジメント教育の狭間で、会社の人事育成から放置されがちなゾーンなのです。

そんな取り残された状況で、中堅社員は自分自身でモチベーションを保つことを強いられています。

25歳~34歳の中堅社員の「成長志向」と「仕事への自信」に関する意識調査データによると、この層は「現状に満足せずもっと成長したい」という成長志向に対しては5割以上がYESと答えています。また、「仕事に自信がついてきた」という質問にも5割以上が肯定的意見です。【2017年富士ゼロックス総合教育研究所(現パーソルラーニング)人材開発白書】

このデータをどう読み取れば良いのでしょうか。

半数は今後も自家発電をして、モチベーションを保ち仕事に取組むだろうという楽観的な見方もできます。一方、半数は仕事に前向きさも自信もない状態で放置される可能性があります。後者の層は思わぬ離職やメンタルヘルスなどの事態に陥りかねません。

いずれにしても、全社的な施策が施せない状況があるならば、職場単位で中堅社員のケアを行わないと、今後の会社を担う大事な戦力を失いかねないのです。

中堅社員のモチベーション課題とは

まず、中堅社員のモチベーションを上げにくくしている現状課題を整理してみます。

(1)役割を自覚しにくい人員構成

2000年以降、多くの会社で組織のフラット化が進みました。また、不況での新卒採用減などが影響し、年齢構成がいびつになっている職場も多いようです。

このような人員構成の変化は、中堅社員のモチベーションにも大きな影響を与えています。

かつてのピラミッド型組織では、中堅になれば自然と後輩の面倒を見る、リーダーに昇格すればチームを率いる責任を担うなど、組織内での立ち位置と役割が密接に結びついていました。しかし、現在の多くの職場は、指導する後輩がいなかったり、同じ役職の先輩やシニア社員がいたりと、誰がリーダーかも不明確なことがあります。結果、中堅社員が組織内での役割を自覚しにくい状況になっています。

(2)小粒化しやすい業務の専門化・分業化

バブル崩壊後の不況を受けて、多くの企業が業務効率化を推進したことも、中堅社員の意識に影響を与えています。業務のアウトソーシングや専門分化が進んだことで、仕事全体の流れを広い視野で眺める力や、別部署の担当者を巻き込む力が養われにくくなっています。

加えて、特に氷河期入社世代は人数が少ないため、異動や配置転換の経験があまりないという傾向があります。結果として、所属部署内の小さな世界に長く留まり、視野が狭くなってしまうケースが見られます。

(3)キャリア不安を招く経済・労働環境

かつての終身雇用が崩れ、老後や年金問題が表層化している状況も、中堅社員のモチベーションに影響を与えています。会社の上層部はポスト不足ということもあり、この先の自身の明確なキャリアプランを描きにくい状況があります。シニア社員の会社へのぶら下がり的依存が問題視されるなか、中堅社員は目指すべきロールモデルも見出せないまま、漠然としたキャリア不安を抱えてしまいがちです。

中堅社員のモチベーション対策への3つのヒント

このような状況のなかで、中堅社員がモチベーションを保ちながら、将来のミドルマネジメントや事業を牽引する存在になっていくためには、何が必要なのでしょうか。

すぐに実践ができ、効果を生みやすい対策としては、次の3点が挙げられます。

(1)人材指導の場数を踏ませる

いびつな人員構成上、自分が新人時代に先輩から手厚い指導を受けた経験が少ないという中堅社員も存在します。また、中堅社員に人材指導を任せたくても、職場に新人や若手社員が存在しないケースもあるでしょう。

そんな際は、派遣社員やアルバイトなど「程よいサイズの指導ができる」場を用意すると効果的でしょう。人が人を指導するという構造は、雇用形態にそこまで影響を受けません。大事なのは「あなたが教育係だ」と明確に中堅社員に伝えることで、人材指導の意識を芽生えさせることです。

ただし、人の指導育成に慣れていない中堅社員が戸惑うことも多いため、決して丸投げをしてはいけません。指導ミッションを担わせたあとは、きちんと「うまく行っている?」「困っていることはない?」とフォローをするようにしてください。

(2)現場の中核としての意識を芽生えさせる

前述した現状課題を考えると、自発的に中堅社員に「現場の中核」としての意識転換を求めるのは難しいといえます。したがって、何か新しい仕事を任せるなど、本人にとって「特別感のあるタイミング」をうまく使うと良いでしょう。

具体的には、「これは若手には担えない重要なミッションだ」や「チームとしてもう一伸びするために」など、中核としての期待を匂わすようなアサインを行ってください。「もっと成長したい」と望んでいる中堅社員は、「よし、自分が頑張らねば」という意識が芽生えるはずです。

(3)キャリア・貢献領域をクリアにさせる

中堅社員のモチベーション低下には、同じ業務のマンネリ感、先行き不透明な環境など、漠然とした不安が関係していることが多いです。漠然とした不安は、なかなか自律的な解決は難しいです。こんなときは、中堅社員自身に考えるきっかけとなる質問を投げかけると良いでしょう。

具体的には「管理職になりたいのか?」「何のプロになりたいのか?」などとメッシュを細かくして、中堅社員にヒアリングをしてみてください。その際、「どんな働き方が希望なのか? プライベートと仕事の望ましい関係は?」など、ワークライフバランスを意識した目線でヒアリングを行うと、今の中堅社員の価値観にフィットしやすいでしょう。対話を通じて、中堅社員自身が「自分はどうありたいのか」ということを考えるきっかけになるはずです。

まとめ

今回は、中堅社員の定義や求められる役割・立場について紹介しました。

中堅社員が、粛々とプレーヤーとして業務を遂行するだけの立場に留まるか、あるいは主体的にチームを動かす立場になるかで、組織全体に大きな違いが生まれます。

会社として一斉施策が打ちにくい層だからこそ、ちょっとした日常的な仕掛けが明暗を分けるのです。中堅社員のモチベーションを刺激するようなコミュニケーションを少しだけ心がけるだけで、思わぬ効果が生まれることでしょう。ぜひ試してみてください。

【参考】
2017年富士ゼロックス総合教育研究所(現パーソルラーニング)人材開発白書

※ kikuo / PIXTA(ピクスタ)