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請求書のハンコはどこまで電子化、省力化できる?ハンコ電子化のメリット・デメリットと着目点

2020.08.26

世界的なIT化の流れを受け、さまざまな業務がインターネットを介して行われる機会が急激に増加しています。社外・社内における書類のやりとりも同様で、メールやクラウド上の受け渡しが増えたことで郵送にかかる手間やコスト、タイムラグが減少し、より効率化を図ることに成功しています。

この書類のやりとりに欠かせないのが、会社や自身の証明となる“ハンコ”です。昨今では、このハンコもIT化の影響により、“電子化”されたものが注目されています。

さらに、令和2年6月19日に、内閣府から「押印についてのQ&A」という文書が発表され、「特段の定めがある場合を除き、契約に当たり、押印をしなくても、契約の効力に影響は生じない」とされ、ハンコの電子化に関する状況は大きく動いています。(※1)

今回は、ハンコの電子化にまつわる状況やメリット・デメリット、今後の展望について順を追って解説していきます。

ハンコの電子化とは?

ハンコの電子化とは、その名の通りハンコを画像データなどで作成し、インターネット上で自由に押印することを可能とすることです。社内で使うハンコを電子化すると、パソコンやスマホから直接PDF化された請求書や契約書などの書面へ会社印を残すことができます。

電子化されたハンコには、普段活用しているハンコの印影を、画像作成ソフトなどを使用して画像化したものに加え、より信頼性の高い、電子契約や電子署名、電子サインなどと呼ばれる信頼性の証明や記録機能を持ったシステムと組み合わせて使う電子押印のシステムがあります。

ハンコの電子化によるメリット

新型コロナウイルスの流行の流れを受け、リモートワークを導入する企業が増加したことで、電子化されたハンコの存在はいっそう注目されることになりました。

紙媒体へ印鑑のやりとりを行う場合、普段はリモートワークで在宅勤務をしている社員でも、印鑑が必要な書類を取り扱う場合はわざわざ出社した上で押印をしなければならない、という手間が発生します。とくに請求書など、毎月定期的に発行が必要となる書類への押印にかなりの時間をかけている会社も少なくないはずです。

一方、電子化されたハンコを利用すれば、押印のために書類のプリントアウトや印鑑を取りに行く必要がなくなります。また、ハンコを扱う担当者が不在の場合でも、クラウド上で担当者へ書類の確認をしてもらい、電子ハンコを押印することで、そのまま先方へ書類を提出することができます。たとえ書類に不備が見つかったとしても、即座にハンコを押し直すことが可能になるため、速達便も社員が急遽書類を届けに行く必要もありません。

このように、ハンコを電子化することで、オンライン上での重要書類のやりとりが可能になるため、紙を主体としていた業務の効率化を図ることを実現するのです。

ハンコの電子化によるデメリット・注意点

ハンコを電子化する場合に気をつけなければならない点としては、セキュリティ面に関する問題が挙げられます。

ハンコは、会社の存在や意思を証明するものであるため、厳重に取り扱う必要があります。
銀行印や会社印、実印などを金庫や銀行などに預け、一部の人間しか取り扱うことを許していない会社の多々あるはずです。

電子化されたハンコは、インターネットという、全世界の人間が自由に活用することのできるツールを介して利用されます。したがって、不正やなりすましなどの犯罪から会社を守るため、ハンコの取扱いは慎重に行われなければなりません。

たとえば、多くの人が利用できるワードやエクセルやフリーソフトなどで簡単に印鑑の画像を作成した場合、容易に他者が模写できてしまう、という懸念点があることから、公文書で使うことには適していないので注意が必要です。また、作成する際にはある程度のパソコンやWebに関する知識が求められるため、どのような方法で電子化を導入するかについて、事前に検討を重ねる必要もあるでしょう。

実際にハンコの電子化を導入するために

電子化されたハンコを安心して活用するためには、セキュリティ面に対応したハンコを作成する方法が有効です。

ワードやエクセルの画像編集やフリーソフトを使用してハンコを作った場合、コストはかからないものの偽造の心配があり、重要な文書に押印する印鑑としては適していないといえます。

また、前出のように内閣府から「特段の定めがある場合を除き、契約に当たり、押印をしなくても、契約の効力に影響は生じない」と発表されたこともあり、中途半端な画像化印影は使わないという選択肢もあります。

ただし、裁判などで契約の成立の真正について証明しなければならない場合は、電子の場合でも実印の押印に相当する信頼性の高い根拠が必要になります。そのため、重要な契約書類の不正利用を防止するためには、電子契約や電子署名、それに類した電子ハンコのシステムを使用して、署名や押印を施しておくべきでしょう。

なお、このような電子契約や電子署名のシステムを導入するには、当然ながらある程度のコストがかかります。このような場合は、今後も実物のハンコを使い続けた場合にかかる社員の拘束時間やコストについて計算をしてみましょう。

ハンコの保管に必要なスペースや手間、社員が印鑑を取り扱う場合にかかる時間、書類を印刷するプリンタや用紙、郵送にかかる費用など、ハンコを押印するために必要な時間やコスト、手間はそれなりにかかるものです。

現在の業務を見直し、問題点を洗い出すことで、一時的なコストはやむを得ないものであると判断することができるはずです。あくまでも、将来の効率化を考えた上で検討しましょう。

ハンコの電子化で今後を見据えた運用を

ハンコの電子化は、働き方改革やワーク・ライフ・バランス、新しい生活様式に対応するために非常に効果的なツールであるといえます。いくら在宅勤務の環境を整え、リモートワークを進めたとしても、社員が印鑑を押すために出社していては元も子もありません。

昨今は、電子契約や電子署名、それに類した電子ハンコの数も増え、導入しやすい価格のサービスもあります。今後は電子化の流れが加速することが予想されるため、コストとセキュリティの両面で考えて、長期的に利用できそうなシステムを選ぶと良いでしょう。

【参考】

※1 「押印についてのQ&A」(2020年6月19日内閣府)

※masa / PIXTA(ピクスタ)