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ネット経由で仕事を受ける「ギグワーカー」を中小企業が利用するメリット・デメリット

2020.08.26

国が働き方改革や新しい生活様式を提唱する中、これまでの働き方を見直し、時代に沿った形での雇用を求める労働者が増加しています。たとえば、育児や介護生活との両立を図るための時短やフレックスタイムでの勤務形態、通勤ラッシュや密を避けるためのリモートワークなど、労働者が求める働き方は多種多様です。

このような労働者の希望に応えるため、各企業はダイバーシティ(多様性)の推進や希望する時間や場所で働くことのできる体制を整えることが急務とされています。

しかし、昨今ではひとつの企業に所属せず、フリーランスや副業・兼業という道を選ぶ労働者も少なくなく、「ギグワーカー」という存在が新たに注目されています。

今回は、ギグワーカーとはどのような人をいうのか、また実際に中小企業がギグワーカーを活用した場合のメリットやデメリット、効果的な活用法などについて、順を追って解説をしていきます。

ギグワーカーとは?

ギグワーカーとは、インターネットを通じて仕事を受ける人のことです。具体的には、不特定多数の者向けにさまざまな業務を行ってくれる者を募り、条件が合った者に発注依頼をするクラウドソーシングサービス(『クラウドワークス』や『ランサーズ』など)などを通じて単発仕事を受け、その都度契約をした上で仕事を行い、報酬を受け取ります。

ギグワーカーの行う仕事には、まず接客業や配達業、講師業などが挙げられます。企業と雇用契約を交わした上で働く通常の社員と異なるポイントとしては、ギグワーカーの場合はひとつの仕事に応じて単発で報酬が支払われることにあります。

その他には、商品デザイン業務やプログラミング業務、ホームページや動画制作など、パソコンを活用した業務の依頼も急増しています。これらの業務はパソコンがあれば受注から納品までを済ませることができるため、在宅ワーカーや決まった時間に働くことができない人に注目されています。

また、コンサルティング業務や経理業務のアウトソーシングなど、企業経営のサポートをギグワーカーに依頼するケースも増加しています。

ギグワーカー活用におけるメリットとは

ギグワーカーを利用することのメリットには、まず社員を雇用する際の手間を省くことができるという点が挙げられます。

企業が社員を雇用する場合、ある程度のコストや時間が必要になります。まず行うべきことは、優秀な人材に入社してもらうための採用活動です。企業説明会や試験、面接などを実施した上で採用を行い、実際に社員として入社してもらう際の手続きへと進みます。特に中小企業の場合は人事部が存在しないことも多いため、営業職を担う社員が採用活動を併用して行う場合もあるでしょう。

実際に入社したところから、さらに手間やコストがかかります。入社する社員の待遇を定めた上で税金や保険料の手続きを行い、その後も毎月の給料の支払いを初めとした間接部門の手間が、人件費となって継続的に必要になります。

また、自社の将来を担ってもらうためには、入社後の社員を計画的に育成する必要があります。他の社員が教育を担当する場合や外部の教育機関へ委託するなど、社員教育にはさまざまな方法がありますが、どの方法を採るにしてもそれなりの時間とコストがかかります。人材不足に悩まされる中小企業の場合、少ない社員間で教育に時間を取ることは死活問題になるでしょう。

一方、ギグワーカーは企業に所属せずに仕事を単発で請け負う者になるため、社員を雇用する際にかかる給料や保険料などの人件費を使わずに活用できます。また、採用活動や社員教育の時間をかける必要がないため、その分の時間を有効活用できます。

ほかにもギグワーカーを利用するメリットとして、専門性の高いスキルを持つ者に効果的に仕事を割り振ることができる、という点もあります。
企業が行なう業務の中には、時として高い専門知識を要するものがあります。通常は、自社の社員への教育や必要なスキルを持った人材の中途採用などによって専門スキルを擁する社員を雇用しますが、ギグワーカーに依頼をすれば、そういった時間と手間をかけずに、即時に難易度の高い仕事をこなしてもらえるのです。

特に、突発的に発生した専門知識を要する業務が発生した場合は、単発でスペシャリストを活用できるギグワーカーは、多くの社員を抱える余力のない中小企業にとって非常にありがたい存在となるでしょう。

ギグワーカー活用におけるデメリットとは

ここまでの項目で、ギグワーカーとはどのような人を指すのか、またギグワーカーの効果的な活用法などについて説明をしてきました。しかし、ギグワーカーを活用する際には、同時に注意しなければならない点があります。

通常の場合、社員を採用する際には履歴書の送付や面接による対面など、応募者の人となりや背景などを事前に調査した上で入社可否を決定します。しかし、ギグワーカーは、企業に所属せずに仕事を請け負う者になるため、どのような人物なのか、どのような環境で生活しているのかを判断する手段がありません。

更に例を挙げると、企業が別企業と新たに取引を開始する場合は、企業を守る手段のひとつとして、必ず事前にその別企業の事前調査を行うはずです。しかし、ギグワーカーは自身のスキルのみを武器にしたいわば一匹狼です。よほど知名度のある人なら別ですが、それはレアケースでしょう。

これらを踏まえた上で、企業はギグワーカーの人物像や性格、スキルを事前にできる限り把握した上で、仕事を依頼しなければなりません。さらに、機密情報を守るためのセキュリティ対策や、質の高い仕事をしてもらえるかどうかの判断基準設定をあらかじめ実施しておく必要もあります。

ギグワーカーも人間である

ギグワーカーは、効果的に活用すれば企業にとってかなりの戦力になります。一方で、単なる便利人として扱う危険性についても知っておかなければなりません。ギグワーカーとてひとりの人間です。無理のある業務内容や納期設定などを行えば、当然ながら企業に対する不満を抱えることになるため、モチベーションや生産性も低下します。

また、ギグワーカーは単発で仕事を請け負うため、継続的に給料を受け取ることができる企業社員とは異なり、常に不安定な収入に悩まされている人が多くみられます。あまりに低すぎる報酬設定などをすれば、仕事自体を拒否されたり、途中で業務を投げ出されたりする可能性もあるため、注意しましょう。

企業の成長には、労働者の存在は欠かせません。これは、社員であってもギグワーカーであってもまったく同じだということを認識した上で、企業のニーズに沿った形で活用する方法が有効になるはずです。

 

※xiangtao / PIXTA(ピクスタ)