
投資家や重要なステークホルダーをオフィスで迎えるときの心がけとは?
先日、筆者が訪問した企業様は、ビジネスモデルは非常に有望で、代表者の弁舌も朗々たるもの、スタートの立ち上げも好評でした。しかし筆者は、投資先としてはおすすめできないと感じたのです。事業説明のプレゼン進行自体はスムーズに行われたのですが、それ以上に引っかかる点が多々ありました。
本記事では、ステークホルダーを社内に迎える際に、気をつけねばならない点をご紹介します。経営者にとって 、投資家や金融機関を含む重要なステークホルダーとの関係構築は、事業の成長や信頼性の確保において欠かせません。どのように迎えるかが企業の印象を大きく左右するので、ぜひ参考にしてください。
目次
ステークホルダーの対応が重要である理由
言うまでもなく、企業経営には資金繰りやリレーション拡大のために、外部の支援や協力を得ることはとても重要です。特に中小企業では、資金調達や市場での認知度向上において、投資家やステークホルダーが果たす役割は極めて大きいといえるでしょう。
訪問いただく際は、プレゼンテーションや打ち合わせの場として考えるのではなく、企業としての“人となり”を観察されるという意識で、しっかりとした信頼関係構築の機会と捉えねばなりません。ここで不備があると、貴重な機会であったはずが信頼を損なうきっかけになる恐れがあります。準備を怠らず、戦略的に臨むようにしましょう。
重要なステークホルダーをオフィスに招くタイミング
投資家を含む重要なステークホルダーをオフィスに招く機会を、戦略的に計画している経営者は少ないです。しかし、自社の状況や検討中の計画などを共有することは、単なる報告責任を果たすだけでなく、さまざまなビジネスにつながるチャンスにもなります。以下のようなタイミングを自ら設定し、イベントとして計画的に行うことができたら、とても理想的です。
業績報告や経営状況の説明
定期的に業績報告を行うことで、経営における透明性のアピールにつながり、投資家をはじめとしたステークホルダーとの信頼関係を強化できるでしょう。また、企業のビジョンや戦略を説明したり、再確認する機会としたりすることから、新たなリレーションや商流の紹介、協業の可能性のある事業者などの紹介を得ることもできます。
投資誘致のプレゼンテーション
新規プロジェクトの立ち上げや事業拡大のための資金調達を行うときに、金融機関からの融資を第一に考えている経営者は多いでしょう。
一方で、近年は地域の中小企業を主なターゲットとしたファンドなども増えてきています。株式公開をせずとも、融資ではなく投資を募ることが可能な環境が整ってきているのです。そのようなファンドに挑戦することで、企業戦略のブラッシュアップにつながったり、外部からの目線でリスクの掘り起こしをしたりすることなども、副産物的効果として期待できます。
もちろん、金融機関からの融資を目指して行うプレゼンテーションも有用ですが、投資家へのアピールにも視野を広げて、自社を目利きしてもらいましょう。このようなプレゼンテーションを行う際には、相手を直接オフィスに招くことで、企業の規模感や雰囲気、まさに企業としての“人となり”を感じてもらえます。
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特別イベントや節目の報告
企業の記念日や大きな成果の報告など、特別な節目のイベントにステークホルダーを招待することで、より親密な関係を築けることがあります。これは懇親的な目的なので、前段でご紹介した内容の追加的な位置づけと考えてください。
ステークホルダーをオフィスに招く際の注意点・心得
受付やエントランスの清潔さ
最初に訪問者がオフィスで目にする場所は、受付やエントランスです。ここが整然としていないと、企業全体の印象を下げる可能性があります。清掃を徹底し、必要に応じて植物や企業ロゴを用いた装飾を加え、歓迎の意を示しましょう。同じ意味で、会議室に至るまでの動線、およびお手洗いに行く際の動線も、同様の心配りが必要です。
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業績が堅調そうに見える雰囲気づくり
オフィスの内装や、配置にも気を配りましょう。たとえば、社員の活気が感じられるレイアウトや、整然とした見栄えなども非常に重要です。
社員の私物が乱雑に放置されていることはもってのほかですが、書類やパソコンのモニターなどにも配慮し、個人情報や取引先の情報が見えてしまうことがないように気をつけましょう。情報セキュリティが甘い企業だと思われては、どんなに業績が好調だとしても関わりを忌避されてしまう可能性があります。
時間に余裕を持った準備
当たり前のことですが、約束の時間を過ぎるなどして来客を待たせることは、計画的に活動できていない印象を与えてしまいます。歓迎の意を強く表現する必要はないですが、周到な準備をしている印象を持ってもらうことが大切です。
同様に、お茶などの用意や、プレゼンテーション用のスクリーン・プロジェクターなどの設置、配布する資料がある場合のデスク上への事前配布など、全ての準備が整って滞りなくプレゼンテーション・討議に入れるようにしておきましょう。
スムーズな資料投影と技術的サポート
意外と見落としてしまいがちですが、プレゼンテーションが円滑に進むよう、IT周りの設備点検を忘れずに行っておきましょう。技術トラブルが起きると、いろいろな意味で訪問者に不安を与えてしまいかねません。設備の不具合がないかを前日のうちに動作確認を済ませておき、来社時間前にも動作確認レベルのリハーサルを行うなど、全ての準備が整っているかを入念にチェックするくらいの周到さが必要です。
まとめ
投資家をはじめとした重要なステークホルダーとの信頼関係構築は、企業の未来を大きく左右する重要な要素です。特に中小企業の経営者にとって、これらの訪問者に対する心のこもった対応は、事業の信頼性や魅力を高めるための有効な手段であり、さらにリレーションを広げるためのきっかけになります。
ただし、最も大切なことは、重要なステークホルダーのときだけの心がけとしないことです。取り繕った対応はどうしても、うっかりミスや全体的な品質が行き届かない事態が起こってしまいます。常に訪問客を迎え入れる習慣をつけ、通常の練度を高くしておくことこそが、最も重要なことと筆者は考えます。「近くに寄ったので」といった重要なステークホルダーの不意な訪問が実際に起こったときに、“備えあれば患いなし”となるでしょう。
*TetianaKtv / shutterstock