意外と見られているポイントって?金融機関の融資面談マニュアル
わが国では大多数の中小企業が金融機関からの借入で資金を調達しているのが現状です。今回は、融資面談にあまり慣れていない経営者の方、とくに会社を引き継がれて間もない後継社長に向けて、金融機関との融資面談のコツ、良く聞かれること、準備しておくべきことなどを具体的に解説します。
目次
融資のための3種の神器
融資に際して、金融機関が重視する視点は、「貸したお金がちゃんと返済されるか」という1点につきます。そのために金融機関は、次の3つの材料から、融資先の会社を評価します。
① 過去の決算書(通常は3期分)
② 今後の事業計画書
③ 社長面談
①と➁は、定量性の評価になります。決算書で過去の実績を、事業計画書で未来像を評価します。新しくつくった事業計画書がどんなに立派でも、過去の業績が悪ければ、「信用してくれ」と言っても難しいと言わざるを得ません。そして➂で定性評価が行われます。社長面談でチェックされるのは、あなたに経営者としての器量があるか、事業にかける本気度はどの程度かなどです。とくに中小企業の場合は、社長の人柄や能力、本気度が会社の命運を握っていると言っても過言ではないからです。金融機関は、これらを総合的に判断して、後継社長の場合は先代社長と同じように付き合いを続けてよい相手か、融資の申込金額の全額を貸し出せるか、何年間で返済してもらえそうか、金利はいくらに設定すべきかなど、融資の可否と融資の条件を決定することになります。
社長面談で気をつけること
金融機関にとって、融資は利息という収入源を獲得するための大事な事業活動です。中小企業の社長は、”お金を貸してあげる”相手ではなく、”お金を借りてくれる”大切なお客様です。借りる側の社長が、緊張したり、卑屈になったりする必要は全くありません。ビジネスにおける通常の打ち合わせと同じだという気持ちでのぞみましょう。
気をつけておきたいのは、金融機関の担当者は、あなたの人となりを、まだ把握していないと言うことです。人は見た目で9割が決まるといっても過言ではありません。もしあなたが、カジュアルなTシャツを着て、ラフなスタイルで面談の場所に現れたら、面談担当者でなくても好印象は持たないでしょう。ブランド物のスーツを着用する必要はありませんが、ジャケットを羽織るなど、きちんとした服装で出かけるのが、社会人として最低限度のルールでありマナーと言えます。
また面談には、会社の規模にもよりますが、原則として社長が1人で対応しましょう。お金のことはすべて古くからいる経理に任せているので、よく把握していないという人もいるでしょう。もしくは金融機関に勤めている知り合いや経営コンサルタントに同行してもらえば、安心だと思う人がいるかもしれません。
しかし、社長以外の人が雄弁に会社の将来展望や今後の資金調達の必要性を説いても意味がありません。何故なら中小企業の場合、事業の成否を決めるのは社長自身の情熱に負うところが大きいからです。社長自身がしっかり経営方針や会社の将来像を把握していないと、「この会社にお金を貸しても大丈夫なのか?」と、むしろ不安に思われかねません。
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社長面談で聞かれること
社長面談で質問される内容は、以下のようなものです。
資金使途を明確にしよう
面談で最も大切なのは、希望の借入金額とその使い道をはっきりと伝えることです。事業計画に自信がないと、つい「いくらなら、借りられますか」と聞きたくなってしまいます。しかし、融資金額は金融機関がいくら融資できるかではなく、会社がいくら必要としているかによって決まるのです。「今回は、800万円の融資を受けたいと思っています。なぜなら、○○のために800万円が必要だからです」など、自信を持って、希望金額とその根拠を述べましょう。
金融機関は、貸した資金がどのように使われるのかについて、重大な関心を持っています。その事業と関係のないほかの事業に流用されたり、個人で持っている借金返済に充てられたりすることを最も嫌います。そのため、資金使途がはっきりしないと融資を受けることができません。
資金使途は、設備資金と運転資金に分けて説明します。運転資金については、なぜ資金が不足するのか、いくら不足するのかを、事業計画書をもとにその根拠を示します。設備資金については、設備の購入計画だけでなく、その事業を遂行していくうえで、なぜその設備が必要なのか、売上にどのような効果をもたらすのかについて、話すとよいでしょう。
何年間で返済できるのか、返済計画についても質問されます。月々の返済予定額と、いくらぐらいの利益が見込めるのかを予測し、この位なら返済できそうだという金額を事前に計算しておきましょう。
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面談に持参した方がよいもの
(1)事業計画書
面談となると緊張して頭が真っ白になってしまうかもしれません。そんなときでも、売上予測や経費といった数字の根拠をきちんと事業計画書に書いておけば、書類を見ながら説明することができます。事業計画書は、先代の経営方針を引き継ぐのか、または変更するのかなど、「今後の事業戦略や、利益予測とその根拠がわかる」というレベルまでつくり込んでおけば、安心です。
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(2)売上の見込みがたつもの(注文書や見込み客リストなど)
事業計画書の信憑性を保管するための資料として、売上の実現性を証明できる資料を持参します。
(3)設備資金の場合は、相見積書など
設備資金を借りたいときは、相見積もりを2~3社からとっておきます。
(4)個人のメイン通帳(給料振込用)
役員報酬がきちんと入金されているか、個人的な借入の有無や家賃の支払がちゃんとされているかなどを確認するため、金融機関から提示を求められる可能性があります。
社長面談にあたって大切な心構え
面談の席では、事業の見とおしなど、自社の現状と社長としての思いを正直にありのままに説明する姿勢が大切です。背伸びをして実現不可能な売上予測をしたり、よくわからない業界用語を並べたりする必要はありません。相手は、中小企業の社長を何百人と面談しているプロですから、無理をして取り繕っても、すぐにバレてしまいます。夢を語るだけで、話しに信ぴょう性がないと判断されたら、どんなに立派な事業計画書をつくっても、逆効果になってしまいます。
面談では、社長の人柄や経済状況を把握するために、一見事業とは関係のないプライベートな質問をされることもあります。社長になる以前のキャリアや今の会社を引き継ぐにいたった経緯だけでなく、たとえば家族構成や配偶者の年収、役員報酬以外の収入はあるか、個人的な借金はないか、不動産を持っているかなどです。中小企業の場合、社長と会社は経済的に一体の場合が多いからです。
そういう場合でも、担当者は融資を断るために面談を行うのではなく、稟議が通るよう一生懸命質問してくるのだと思ってください。会社と担当者は、融資の成功という共通の目的に向かって力をあわせている仲間だと思って臨めば、面談もスムーズに運びます。
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