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助成金の落とし穴と、それより大切な社員の育成と定着のススメ

2020.08.26

『助成金』とは、主に厚生労働省が雇用の増加や人材育成のために企業に給付している返済不要のお金を指します。人を採用したり社員を研修するなど会社が何かアクションを起こすときに助成金を受給できる場合がいろいろあります。

助成金を受給することは、会社にとっては売上を上げることと同じです。売上利益率10%の会社が仮に助成金を50万円受給すると500万円の売上に相当します。

会社にとってはかなりのインパクトがあるお金であるため、助成金を取りたいと思うのは当然です。しかし中には、助成金を受給したいがために経営内容を変えてしまったり不正受給までしたりと、“助成金を取ること”が目的となってしまう場合もあります。

また、助成金を狙うあまりに、経営がおかしくなることもあります。今回はこれらについて説明していきます。

助成金を目的にすると経営がおかしくなる

助成金の主な目的は雇用の創出と維持であるため、社員を解雇した場合には、6ヶ月間は雇用関係助成金を受給できません。そのために問題社員がいたとしても解雇できないまま雇用し続ける必要があります。会社は問題社員をかかえることになり、会社の雰囲気が悪くなって最悪の場合、ほかの社員が辞めていくこともありえます。

助成金を取るために問題社員を残すことに何の意味があるのでしょうか? このように助成金が足かせになって会社の判断を狂わせることもあり得るのです。また、いくつかの助成金は受給するために就業規則の変更が必要になります。例えば定年を延長もしくは廃止したときに助成金が出ますが、それに合わせて就業規則を変更する必要があります。

助成金は一度きりしか受給できませんが、変更した制度はずっと会社の規定として残ります。定年延長を廃止したいと思っても、その制度を廃止したり変更したりすることはできないのです。

助成金を取ることが目的となると、会社経営がおかしくなるのです。

会社は採用と定着に力を入れた方がいい

助成金を受給するためにはかなりの期間を要します。キャリアアップ助成金の正社員化コースを例にあげると、入社して半年してから正社員転換をし、それから半年正社員として雇用してから初めて助成金の申請ができます。その申請が終わったとしても審査に何ヶ月もかかり、採用から助成金を受給できるまでは1年半ぐらい必要となります。

キャリアアップ助成金を貰うためだけに、その人を半年間正社員にしないで契約社員の地位のままでずっと雇用していたらどうなるでしょう? その社員が“できる社員”であるほど早めに正社員にしてもらいたいのに、会社が助成金のために正社員化しないようでは、その社員は会社に未来がないと思い退職してしまうかもしれません。

会社が採用と定着に力を入れていかないと、良い社員は辞めていってしまいます。

利益を出すためには売上をあげるかコストを削減する

会社が利益を出すためには、(1)売上を上げること、(2)コストを削減すること、の2つしかありません。助成金をもらうことは、冒頭で説明したとおり売上を上げるのと同じ効果があるので、(1)にあたります。助成金はお金が会社に直接入るために目に見える効果がわかりやすく、企業は助成金を目的にしがちです。

一部の企業は、助成金を取るために優秀な社員を不安定な契約社員のままにしてしまい、その結果として、せっかく採用した社員が退職することによるコストのことを考えていません。ここで言う“コスト”とは次のようなものです。

採用してから社員が一人前になるまでに発生するコスト
・採用するためにかかった採用費
・人件費(給料や賞与)
・福利厚生費(社会保険料)
・教育費(その人を教えるための教育コスト)

そういう企業は、「退職して助成金は貰えなかったけど、次の社員を雇えばいい」と、また新しい社員を雇おうとします。しかし、採用から退職までの間に上記のようなコストがかかっています。このコストについてこの会社は考慮していません。

(1)の売上を上げるために助成金を活用としているのですが、(2)のコストのことを考えていなくてかえって会社の利益を減らす結果になってしまうのです。

せっかく採用した社員が退職してしまうと、社員にかけていたコストがすべて無駄になります。それどころか、その社員が優秀なほど、これから会社のために働いて利益を出してくれるのに、その利益も失う“機会損失”も発生します。

助成金を取ることは会社の利益になりますが、過度に助成金を取ろうとすると結果として利益が下がるということになりかねないのです。

助成金よりも採用と定着に力を入れる

会社を構成する要素としては「ヒト、モノ、カネ、情報」と4つあります。一番最初にヒトがあるように、一番大事なのは“ヒト”です。

しかし、助成金を取ろうとすると、どうしても“カネ”が一番になってしまいます。そうなると助成金が足かせになり会社経営がおかしくなるのです。

会社にいくら良い建物や機械があったとしても、それを使うヒトがいなければ利益を出せません。会社にどれだけ良いヒトがいるかが、会社の売上を支えるのです。カネは確かに大事ですがそれはヒトが動いて売上を出した結果です。

会社が発展するためには、いかに良い人を採用してその人が定着して会社に貢献するかにかかっています。採用と定着がうまくいっている会社は、社員の離職率も下がります。

良い人が定着するためには、そのための仕組みが必要です。普段からの労務管理や勤怠管理が正しく運用されているかどうかだけでなく、社員を正当に評価できる仕組みも必要です。それがないと、できる社員は「この会社にいても給料が上がらない」と判断して退職してしまいます。

労務管理=労働基準法を遵守して労務管理できているか
勤怠管理=抜け漏れなく勤怠管理できているか
給料計算=間違えなく給料計算できているか
就業規則=社員を守り、問題社員を罰する仕組みがあるか
評価制度=社員を正当に評価できる仕組みがあるか

正当な評価があると、頑張れば給料に反映するため、社員が頑張って会社の売上が上がります。売上が上がると、頑張っている社員に対して正当な分配(給料や賞与)を行えるため、さらに社員が頑張るようになります。

そうなれば会社の売上はどんどん上がり、さらに会社は新しい良い人を採用できるようになります。

離職率↓ 定着率↑ 生産性↑ やる気↑ 売上↑ 給料↑

ここで考えて欲しいのが助成金の存在です。“良い会社”にするためには“良い人”を採用しなければなりません。良い人を採用するためには、その人が頑張れる定着の仕組みを作らなければなりません。良い人が定着する仕組みと、助成金の獲得が相反する場合、どちらを優先すべきでしょうか?

もうおわかりと思いますが、良い人が定着して売上を上げてくれる方が、単発の助成金を取るよりもはるかに良い結果となるはずです。

助成金を目的とせず社員のために使う

ここで勘違いしないでいただきたいのは、助成金を取ることが悪いことではない、ということです。私の事務所も助成金を取っています。

助成金は受給できれば、使用目的は何でもかまいません。助成金をどのように使うかは会社の判断になります。私の事務所はすべて社員に還元しています。それは社員がいるから助成金を受給できたので、そのお金は社員のために使うのが当然だと思っているからです。助成金の使い道としては、事務所の備品購入や賞与の原資、そしてランチミーティングの費用などです。

助成金を取ることは悪いことではありませんが、それを目的にしてはいけません。会社を良くするために制度を変えたりするときに助成金を得られるなら、それをうまく活用します。逆に助成金ありきで制度を変えないようにします。助成金はあくまで副次的なものとして捉えて、それよりも採用と定着に力を入れて会社経営をしていく方が正しい判断だと思います。

 

※ocsa / PIXTA(ピクスタ)