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派遣社員の在宅ワークは可能?問題点や会社で必要な対応策とは

2020.08.26

ワーク・ライフ・バランスの提唱や働き方改革の流れから、テレワーク(リモートワーク)の一種である“在宅ワーク”に注目する企業は以前から増加していました。そして、2020年春頃からの新型コロナウイルス感染症の拡大を防止する一環として、在宅ワークが新たな働き方の一種として、またたく間に脚光を浴びることとなりました。現在では、テレワーク(リモートワーク)と在宅ワークはほぼ同義となっています。

これまでとは異なる点として、ウイルスから自身や他人を守るため、在宅ワークを“選択せざるを得ない”企業が増えているということが挙げられます。また、正社員のみならず、パートやアルバイトなどの非正規雇用者についても、在宅勤務の必要性が問われています。

それでは、一般的な雇用形態とは異なる“派遣社員”の場合はどうなるのでしょうか? 今回は、派遣社員にとっての在宅ワークに関する動きから、実際に在宅ワークを導入する場合の問題点について、順を追って解説をしていきましょう。

派遣社員と在宅ワークをとりまく環境とは?

派遣社員とは、人材派遣会社に雇用されており、人材派遣会社が派遣契約を交わしている他の会社へ派遣され、その派遣先で働く社員のことです。派遣社員が所属しているのは派遣元となる人材派遣会社ですが、実際に仕事を行う際は、派遣先の会社から指示を受けることになります。したがって、派遣社員が在宅ワークをすることができるかどうかは、派遣先である会社の意向に左右されるのです。

新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、政府は2020年の4月、自社で勤める社員と同じく、派遣社員に対しても在宅ワーク制度を導入するよう求めています。人と人が密な状態で接触することがウイルス感染拡大の一因となることから、社員か派遣社員かにかかわらず、すべての社員を密な状態から遠ざけることは、会社が社員とその会社に関わる者を守るために必要なこととされています。

つまり、派遣社員に対して在宅ワークの環境を整えることは、今後も適切に経営を実施していくために重要な対応であるといえるでしょう。

ただし、気をつけなければならない点があります。先に述べたように、派遣社員は、雇用者と実務命令者が異なる環境で働く者になります。したがって、実際に派遣社員が在宅ワークを行う環境を整えるためには、派遣元となる人材派遣会社と、派遣先となる会社との連携した対応が欠かせません。

導入コストの問題

在宅ワークを実施するためには、当然ながら環境を整えるためのコストが発生します。たとえば、会社からパソコンを貸し与える場合には、そのパソコン費用がかかります。また、自宅のパソコンやタブレット、スマートフォンから遠隔で業務を行う場合には、そのために必要なシステム導入費用がかかります。

これまでに、リモートワーク環境を整備していた会社の場合は、新たに派遣社員にかかるコストを捻出することで在宅ワークが実現できますが、自社の社員の在宅ワーク環境の整備から始める必要がある場合は、そこに派遣社員も加えた形で検討をする必要があるでしょう。

なお、会社が安心してテレワーク環境を導入することができるよう、国では在宅ワークに関するさまざまな補助金や支援金を打ち出しています。すべての制度が対象となるとは限りませんが、コスト対策のひとつとして検討してみる方法も有効となるでしょう。

セキュリティ面の問題

派遣社員は、自社のために働く者ではあるものの、実際は他社である人材派遣会社に所属する者になります。したがって、社内の情報が不必要に外部へ漏れることがないよう、留意をする必要があります。

当然ながら、人材派遣会社と派遣契約を交わす際に、秘密保持に関する内容も盛り込んでいると思いますが、何か不測の事態が発生した際の対策や責任の所在についてあらかじめ定めておくことで、より安心して派遣社員に在宅ワーク制度を導入することができるはずです。また、これまでにセキュリティ対策として、“派遣社員にはパソコン等の備品を貸し出さない”などの取り決めをしていた場合は、これらの取り決めを見直すことから開始する必要があるでしょう。

派遣契約の変更問題

続いて、派遣元となる人材派遣会社と連携して行う必要のある“派遣契約内容の変更”について解説をしましょう。

派遣社員を受け入れる場合、派遣先の会社は派遣元の人材派遣会社と“派遣契約”を交わし、派遣社員が実際に働く場所や仕事の内容、働く時間について定めます。派遣社員が在宅ワークを行う場合、当然ながら働く場所は“自宅”です。また、仕事の内容も在宅で実施できるものに限定され、中には勤務時間も変更になる可能性があります。

これは、派遣先の会社だけで一方的に変更できるものではなく、あくまでも派遣元の会社と話し合いの上、内容をすり合わせる必要性が生じます。派遣元の会社が、派遣社員の労務管理を行うにあたり、在宅ワークに対応し切れていない場合は、早急に対策を進めるよう依頼する、などの対応が求められます。

在宅ワークの流れに対応するために

2020年4月の派遣法改正により、派遣社員と一般社員との賃金をはじめとした待遇格差をなくすように定められたことで、派遣社員を自社社員と同様の待遇で業務をさせるための対応が必須となりました。

また、新型コロナウイルス感染症の第二派襲来の可能性など、今後もいつ緊急事態宣言が発令されるか不明瞭な現在、社員が安心して働くことのできる在宅ワーク導入の流れはますます加速することが予想されています。派遣社員に対して在宅ワークの環境を整えることは、会社の今後に影響する重要な施策のひとつといえるでしょう。

【参考】

テレワークに関する助成、補助 – 一般社団法人 日本テレワーク協会

※pearlinheart / PIXTA(ピクスタ)