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「補助金ぜんぶとるマン」になった元区役所職員である女性経営者に聞く必勝ノウハウとは?【インタビュー】

自身で女装写真スタジオを経営しながらも「補助金ぜんぶとるマン」としてFacebookで情報を発信している立花奈央子さん。なんと、条件にあう補助金や助成金を、専門家やコンサルタントの手を借りずに自力ですべて獲得しているというのです。

コロナ禍でニーズが高まってきた補助金や助成金について、個人だけではなく中小企業へのアドバイスもおこなっています。経営者になる前は区役所職員として事務をしていた経験から得たノウハウを教えていただきました。

——立花さんが「補助金ぜんぶとるマン」として活動を始めたのはなぜですか?

立花奈央子さん(以下、立花):もともと親の希望で高校を卒業してすぐ自衛隊と役所を受け、地方公務員として教育委員会で事務をしていました。その中で申請も担当したので実務の経験があったんです。

書類仕事は得意でしたし自分では特別なことではなく当たり前だと思ってやっていました。それをFacebookで発信すると投稿を見た人たちからの反響が大きく、「意外とみんな申請していないものなのか」と気付き、相談に乗ることが増えました。

——補助金や助成金はさまざまなものがあり、そのうえ新設されるものも多いですが、情報はどのように得ているのでしょうか?

立花:ネットで「補助金」「助成金」「情報」などで検索するといくつかのポータルサイトがあるので日々チェックし、メルマガなども登録しています。それらはみんな無料で手に入る情報です。

家賃補助については、内容やいつから申請開始されるものなのか非常に興味があったので、閣議決定されるのをあらかじめ追っていました。

あとは、市区町村によっても違うのですが、地方自治体のWebサイトは情報がきれいに表示されていないものもあります。なので、直接役所の産業振興課や商工会議所の窓口に行ってチラシをまとめて取ってきたりもしました。商工会議所などでは、会費はかかりますが助成金に関する相談会やコンサルなどもあります。

面倒な書類作成を効率よくするコツ

——業種や自治体によって変わってくる助成金や補助金の書類作成を効率よくするコツなどはあるのでしょうか?

立花:まず、ネットで検索してざっと情報をあらってみること。あと、この手の書類作成につまずきやすい人の多くは、最初に要項や要領をぜんぶ読むところから始めますが、だいたい挫折します。

もちろん、最終的にぜんぶ読むことは必要ですが、まずは申請に必要な書式や用紙をダウンロードして見てみる。そうすると、申請にはどういう内容を求められているのかがわかります。

実際に書く内容はそんなに込み入ったモノは要求されないことが多いので、まずは書類を見なくても絶対に書けるところ、たとえば、会社の情報やこれまでの売上などを先に埋めてしまいます。そうすると、意外と求められていることが少ないのがわかるので、そのときにはじめて必要なところだけ1項目ごとに要項を参照しながら掴んでいけば大丈夫です。

——国語の試験と似ていますね。

立花:そうですね。まず問題文をイチから読むのではなくて設問を読み、そこで問われるであろうポイントを意識しながら本文を読む、という感じです。やっていくうちに要領が良くなっていきますし、独特の役所用語なども何度か見ていくうちに慣れて、必要な書類も把握できるようになっていきます。

よく求められる申請書類としては登記簿謄本や納税証明書、確定申告書の写しなどがあげられます。それらが必要になってから書類を揃えようとすると、その種類の多さに滅入って諦める人もいるので、「そろそろ必要かな?」という予感がしたらおでかけついでにもらってくるのも効率がいいです。だいたい3ヶ月は使えるものが多いですし。

——Facebookにアップしている写真では1案件につき書類の束が1cmほどの厚みになっていましたね。

立花:1cmならまだいいほうです。3cm超えるとちょっと多いなと思いますが、怯んでいる場合ではありません。

書類作成は最初から完璧にやろうとすると失敗するので、要項を熟読した上でわからないところは素直に事務局に電話で聞いちゃっていいんです。事務局側でよくある質問をまとめてくれている場合もあるので、問合せ前にウェブサイトをチェックしておくといいですね。よほど審査が厳しいものでない限り、多少ちゃんと書けていないところがあっても修正がききます。もちろん重大な不備があれば落ちますけれど、普通に聞いて作ればまず大丈夫です。

そして、自分の会社がやりたいこと、その実行に必要な数字をきちんと把握しているならそんなに時間はかかりません。それがわかっていないと白紙の書類の前で悩むことになります。それをうまく汲み取って言語化してくれるのが補助金コンサルの仕事だったりするのですが、自分の会社のことですから、自分なりに把握する努力をしておくのは大事かと思います。

補助金額が数百万円以上だったり、採択率が低いもの、労務関係など手続きが煩わしいものは専門家に相談するのがいいでしょうね。社労士や中小企業診断士で補助金業務に詳しい人は、補助金情報サイト経由で見つけたり、地元の商工会議所で紹介してもらうことができます。それこそ社労士さんに相談するのがいいでしょうね。私も以前はお世話になりました。

補助金・助成金にありがちな落とし穴とは

——書類作成以外に何か気をつけるべきことはありますか?

立花:資金繰りに注意です! 補助金や助成金というのは申請して採択されたとしてもその場でお金がもらえるわけではないので、例えば100万円の事業の3分の2を補助してくれるとしても、お金が入ってくるのは2~3ヶ月後。33万円しか負担しなくていいとはいっても、しばらくは立て替えている状態といいますか、最初に100万円が必要なことには変わりないのです。

それがわかっていないと、思ったよりお金が入ってくるのが遅くて資金がショートする事態になりかねません。審査のチェックが厳しい場合や審査を外部委託している場合などは、さらに時間がかかることもありますし。

——役所の職員や関係者が知識不足だと感じたことはありましたか?

立花:以前、新宿区で上限10万円の家賃補助が出るという話があったのですが、不動産会社にその話をしにいったら知りませんでした。仕事に密接に関係する内容にもかかわらず、です。なので、情報は積極的に取りにいき、能動的に動かなければ制度をきちんと使うことは難しいのかなと思います。

役所の人間も一応情報共有はするものの、すべてを把握しているかというと、周知が難しいこともあります。テストも罰則もないので、知識が漏れてしまっていることもあります。

もちろん社労士さんとか税理士さんもきちんと情報はくださるのですが、やっぱり自分がやっている事業に対していちばんよく知っているのは自分です。だからそれに当てはまるものがないかと常に探すクセをつける。

あとは、何か良さそうな助成金や補助金が出てきたら、それに合わせて自分ができる事業がないかと企画を練ったり、組織のあり方について考えてみる。そんなきっかけを設けることが、補助金のねらいの一つなのだと思います。

——常にアンテナを張っておく、と。

立花:知っていると知っていないのでは大違いで、今回のコロナ関連の補助金でいうと、飲食店の場合は無理に稼働すると赤字になって、むしろ適度に閉めることで休業協力金が支給されて傷が浅く済んだのに、という声も聞こえました。これは補助金や助成金に限らずですが、情報を知った上でそれに合わせて動くのか、それとも自分のやり方を貫くのか、選択の余地があるというのは大きな力になると思います。

基本的に補助金や助成金というのは、頑張る人を応援したり世の中に対して貢献したい人を後押ししたりするものなので、何もしないで自動的にお金が降ってくるものではないんですね。

今回のコロナがきっかけでこんなに補助金ってあるのかって知った事業者さんも多いはずなので、これを機にアンテナを育てていくのもいいのかなと思います。もらえるお金はぜんぶもらわないと損!!(力強く)

立花奈央子
(株)オパルス代表取締役。新宿で写真スタジオを運営中。
フォトグラファー、イベントオーガナイザー、元芸能プロデューサー、貰える補助金全部とるマン。
女装撮影で起業し、現在は芸能人や格闘家から経営者まで幅広く撮影。
ビジネス用やSNS用のプロフィール写真撮影に注力する中、撮影を通じて繋がった人たちから補助金活用の相談を受けています。
https://linktr.ee/naoko_t

文・庄司ライカ

※Fast&Slow / PIXTA(ピクスタ)