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【インタビュー】企業再建のプロが語る中小企業経営の落とし穴と回避法2~「採用コスト」をケチると後悔する~

2020.09.23

日本の大手監査法人で財務諸表監査・内部統制監査を務めた後、再生事業を扱うコンサルティング会社で中小企業診断士として複数の企業再建に携わり、独立した現在もコンサルティング業務を請け負う経営コンサルタントに、主に製造業の傾く企業の特徴や問題点などを伺いました。

前回の記事では、お金を生み出すために必要なコスト削減として、人件費、そして倉庫や不良在庫など物流コストの整理について紹介しました。今回は実際に行った原価の見直しや、“優秀な後進を育てるために必要なこと”など「会社の仕組みとしての問題点」について話を聞いていきます。

いかに翌期に繰り越さないか。細かな原価分析で断ち切るタイミングを見極める

――ほかにも仕入れのコントロール問題で見えたものはありましたか?

物流というと“物の動かし方”もあります。倉庫というのは定位置に抱えてしまいますが、物流というのは動きもある。トラックをいつ動かして物を運んでいくかという観点でいうと、担当した洋菓子店は生ケーキを扱っていて、「できれば工房で作りたい」と各店舗で作っていたんですけど、やはり店舗で作ると食材をまず1回仕入れてから各店舗に運ばなければいけない。そういう自前主義の中でコストがかかるようなことをやっていて。こだわってやっていたんですけど、それってよくある“プロダクト・アウト”思考なんですね。会社側が「こういう技術があるからこれを作りたい」と言うんですけど、それが本当に消費者にとって価値があるかというところは一度見直さなければいけないところです。

本当に価値があるならコストをかけてやってもいいと思うんです。なぜなら売れるから。売れるものなら、コストをかけても赤字で作っていなければお金が入ってくる。ただ、そうやった結果、消費者にとっての価値はそれほどなくて。たくさん売れないものだったら、高いコストをかけてまでやる必要はないですよね。それがわかれば、本社工場で作ったものを一括で配送したほうが現場で作る人のコストなど削減できるので、断然いいと思うんです。

でも、1回“現場で作る”という形で舵を切ってしまうと、なかなか本社一極にしよう、とはできなかったりするので、やはり商品が売れている、売れていないというのを消費者視点で見ていかないと、物流的な問題や課題が出てきてしまう。そういったフロー面の問題もよく出てくるところですね。

――細かく“どの商品が今これだけ売れている”みたいなKPI(業績指標)の計測が疎かになりがちなんでしょうか?

疎かというか、できていないです。担当した洋菓子店はできておらず、僕は商品のデータを1つずつ貰って、売値がいくらで原材料費がいくら、1個作るのに必要な時間など情報を貰い、それを社員の時間単価に掛け合わせ、生産コストから人件費を算出し、そこにまた電気代など掘り出して各商品に配布し、金額を出しました。「こんな感覚でやっていたらそもそも赤字だ」とか、全然売れていない商品を可視化したんです。そのデータを見せると、「あれ? これこんなに売れてなかったの?」「赤字商品がこんなにある」など、社長や製造部長含めてそんな認識でした。原価分析みたいなところはできていなかったですね。

――発売してどれくらいの期間で売れていないと判断するべきなのですか?

お菓子でいうと、定番品とシーズナル(季節限定商品)があります。季節ごとの商品は1回作ると決めてしまうと製造に関しては仕入れも決めているので、「じゃあ一週間販売して全然売れないのでやめよう」というのは正直実態としてはなかなか厳しい。何ヶ月も前から大体仕入れのオーダーをしてしまっているので、急に止めても原材料が余ってしまうので販売中止にすることはできないですが、「じゃあそれ来年もやるんですか?」とか、あるいは似たようなものをやろうとしたときに反省が活かされていないことが課題だと思います。

だから、1回意思決定するとやめ時の判断をするのはなかなか難しいというのはあるんですけど、いかに翌期に繰り越さないか、次回に活かすか、というのが大事だと思います。これはアパレルも一緒で、もうシーズンで仕入れると決めたら工場に発注してしまうので、そのロット分が入ってきてしまう。それは売るしかないので、だからこそいかに断ち切れるか、が大事なのかなと思います。

――断ち切るタイミングを見極めるためのデータ分析が重要なのですね。

そもそも商品企画会議みたいなものもすごく適当なことがあります。担当した洋菓子店もオーナー企業だったので、とりあえず会長がOKと言ったらOKみたいな形で商品を出されていました。どういう商品を作れば売れるか、ではなく、会長がOKを出すものを作っていた。「どれだけ売れたらこれだけの利益がでる」という原価計算もあまりされていなくて。計画の見通しは非常に甘かったです。

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採用コストを渋ると優秀な後進が育たず高齢化・人材不足に

経営の悩み

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――会社の仕組み的に問題だと感じた部分は?

後進が育っていない。あとはオーナー企業の問題。例えば、社長は代表取締役なので代表権を持っているんです。代表権を持っているということは、会社の意思決定を何でもしていいはずなんです。もちろん取締役会があったら、そこに諮らなくてはいけないですけど、本当は代表権を持っているので、権限がある。だた、社長がオーナーの子供だったりすることが結構あるんです。

会長が代表権を持っていなくても、社長が身内だと全然権限がないことが多いんですよ。自分が代表なのに 、毎回会長にお伺いを立てて、みたいな。僕らはそれを見ていて「代表が決めろ」と思うんです。なぜなら、会長はもう80歳とかで普通だったら引退していますよね。でも、オーナーで役員だからそこに残っていられる。知識も確かにあるとは思うんですが、古かったり頑固だったり、“俺がやってきたことが正しい”という考えが多いです。それで売上が上がっているのならもちろんそれでいいんですけど、僕らに相談に来ているということは、経営が厳しくなっている。だから、何かしらが間違っているんですけど、そこに対して気づけなかったり、頑固だからなかなか動けなかったりというのが、オーナー企業の問題点だと思いました。

そして、オーナー企業は後進を育てないんですよ。会長が「イエス」と言うことをやるので、外を見ずに会長のことばかりを見ている。人間にとって大事なのは意思決定ができるかだと僕は思うんですけど、会長が意思決定をするから、意思決定ができる人材が育ってない。「これで良いですか?」という、お伺いを立てる人だけが育っていく。そうすると、どんな有能な会長だとしても、社員を何人も抱えて毎回お伺いを立てられていたら、意思決定が遅れちゃいますよね。そういったところが行動的にオーナー企業としての問題で下が育たないのも問題だと思います。

――会長の顔色を伺う以外に後進が育ちにくい要素は?

上の人が自分でやってしまう、というのが1つありますよね。また、中小企業は社員が高齢化してきているので、単純に新たなことを覚えづらい。あと意欲がない。

――高齢化しているのは、席が埋まっていて新しい人材を入れられないからですか?

席が埋まっているというのもありますが、中小企業で成長しているところであれば、みんな手を挙げて入ってきてくださると思うんですけど、やはり僕が相手をしていたような小規模でジリ貧っぽい企業さんは、世間的にもなんとなくそう思われているので、若い人にあまり働きたいと思ってもらえないんですよ。

――募集していても若い新入社員が入ってこない?

募集していても“優秀な”新入社員は入ってこないですね。中途で30代くらいの人が入って来てくれたりするんですけど、「この10年間何をやってたの?」と思うような方だったり……。社長が困っているから次の右腕を育ててほしい、みたいなことで僕らに「あいつを育ててくれ」と経営企画の社員育成を依頼されることがたまにあるんですよ。その時は若手の30歳くらいの方だったのですが、Excelも全然使えないし、何が出来るんだろう、と。僕の伝え方が悪いのかもしれないですけど、全然育てられなかったです……。

――まずは良い人材を採ることが重要だと思いますが、経営難に陥る企業さんは、人材を探すところにもお金をかけない傾向がありますよね。ハローワークなど無料で募集をかけられるところだけ利用するのではなく、多少はお金をかけないと良い人材も集まらないのかなと思います。

ハローワークだけで就活する若い人はいないですからね。例えばエージェントなどは年収の30~40%を手数料として持っていくんです。500万円の人を採用したら、その分の40%で200万円ください、のような。そこの採用コストを抑えたいというのはあります。

――採用コストを渋ると優秀な後進が育ちにくいというのはありそうです。

やはり優秀な人が多く見ているところからきちんと採ってこないと、厳しい人材は多いですね。でも地方だと中小企業は給料も安いですからね……。やりがいと言われてもしんどい部分もあったりするので、なかなか良い人材が来ないし、だからこそ高齢化が進むし、難しい問題です。

あとは制度的な問題もあると思います。社員の話でいうと、人事評価制度は中小企業ではあってないようなものなんです。社長の一存で昇給したり、「あいつ嫌いだからやめとこう」など変な派閥ができて上に上がれなかったり。だから、しっかりと評価して社員に還元する人事評価制度の仕組みを作ることが大事かなと思います。それは、業績が悪い・悪くないに限らず、僕がお手伝いした中小企業さんは大体人事評価制度があってないようなものだったので。

――社員個人がそこにいる価値があるか感じられない、といった不満も出てきそうですよね。

お金で還元出来なくても、そこにいる価値を感じる人はいると思うんです。ある程度の生活ができれば、人間の承認欲求じゃないですけど、その会社でできることや評価されることで喜びを感じる方はいると思います。社長が好きな人だけ昇格させるようなことをしていると、社員のモチベーションという部分で「なんだあの社長」と言われているのを僕らはよく耳にします。勝手に社長が決めているというのが問題としてあるので、評価制度はしっかりと作っていかないといけないのかなと思います。

――例えば社労士や、経理面に税理士を雇うなど、専門家を入れるというのも必要なことかもしれませんね。

それは必要だと思います。もし、そういうところに知識がある人が社内にいるのであればやってもらえばいいと思うのですが、やはり中小企業というのは人材不足ですので、専門知識を持つ人が多くない場合がほとんどです。

大企業だと社内制度の担当者がいたりするのですが、でもそれは会社がずっと育ててきていた人で、そこにお金を毎年500万円などつぎ込んできた。使える人材になるまで育てていたら5年や10年かかるわけで、何千万円という投資をしてきているわけです。人材不足の企業はそういったところを怠ったわけなので、急に社内の人間にやれと言っても土台無理な話なんです。そう考えたときに、ちょっと高いけれど瞬時に動いてくれる外部アドバイザーやコンサルを頼んだほうがいいのかなと思います。まだまだ大丈夫だけれど将来的にやばいな、という企業であれば、変にお金をケチらないほうがいいと思います。

次回は、IT化など新システム導入についての課題、経営者と現場の乖離問題、中小企業が今取り入れられることなどを紹介します。

*Andrey_Popov / Shutterstock

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