
近年は、汎用的なオフィスアプリから、会計ソフトや勤怠管理ソフトまで、さまざまなアプリが「クラウドサービス」として、提供されるようになりました。
このクラウドサービスは、従来使ってきたアプリケーションと何が違うのでしょうか? また、どんなメリットがあるのでしょうか。
クラウドサービスとは何か
クラウドとは、直訳すると“雲”で、IT用語でインターネット内に雲のように存在する膨大なサーバー群を意味します。クラウドサービスとは、利用者がパソコンやスマートフォン、タブレットなどのIT端末を使ってこのサーバーへアクセスし、サーバーが提供するサービスを利用することです。そもそも「サーバー」は、“サービスを提供する”ハードウェアやソフトウェアを意味しています。
パソコンが普及し始めた当初は、利用者は購入したアプリや作成したデータをパソコンのハードディスクなどの“記憶装置”に保存していました。しかし、購入したアプリはバージョンアップの手間とコストがありますし、ハードディスクは故障するとデータがすべて失われるなどのリスクがありました。クラウドサービスを利用すれば、アプリのバージョンアップの手間がなく、故障でデータが失われるリスクも基本的にはなくなりました。
クラウドサービスには、その利用形態によって“SaaS”、“PaaS”、“IaaS”などに分類されます。その中でも特に私たちになじみのあるシステムが“SaaS(Software as a Service)”で、これまでは家電売り場なので直接購入していたソフトウェア(アプリ)を、インターネットのサーバー上で利用権を購入し、利用する方法を取ります。
企業の管理部向けのクラウドサービスとは
クラウドサービスにはさまざまなものがありますが、その中でも「経営ノウハウの泉」読者に関係がある企業の管理部(人事、経理など)向けの代表的なクラウドサービスや、今後注目したいサービスの例を以下に紹介します。
1.会計freee
業界トップシェアを誇る会計サービスです(2017年9月時点)。
手間のかかる会計の記帳作業を自動化し、業務の効率化を図ることができます。また、売上利益の分析など、経営状況を即座に確認することも可能になります。
2.Chatwork
ビジネスコミュニケーションを効率良く実施するためのサービスです。
業務に関わるグループチャットを作成することで、メッセージやファイルの送受信を簡単に行うことが可能で、必要に応じて音声通話・ビデオ通話を使い分けながらインターネット上でコミュニケーションを取ることが可能です。
3.kincone
インターネット上で社員の勤怠管理や交通費の精算をすることができる労務管理サービスです。クラウド上で勤怠管理できるサービスは沢山ありますが、Suicaなどの交通系ICカードで打刻して同時に交通費精算用のデータも生成できる点に特徴があります。
4.SmartHR
人事労務管理サービスの一つで、入社・退社手続きをスムーズに進めることができます。たとえば入社時に必要なデータを新入社員に直接入力してもらうことで、手続きに必要な書類が自動的に作成され、各役所へ書類の電子申請を行うことが可能です。
5.トヨクモ
自然災害が多発している中、活用すると便利な安否確認サービスです。
地震等の災害が発生した場合の自動通知メール送信や、社員からの回答を一元管理するシステムなど、いざという時に社員を守るためのサービスが充実しています。
6.PHONE APPLI PEOPLE(旧:連絡とれるくん)
社員や取引先の連絡先をクラウド上で一元管理することができるサービスです。
会社の内線や名刺、個人で保存している連絡先、チャットID等をサーバーでまとめて保存することが可能になるため、その時に最適なコミュニケーションツールを即座に選択し、相手へコンタクトを取る事が可能になります。
クラウドサービスを利用する際のメリットは?
企業がクラウドサービスを導入した場合のメリットは、何といっても独自でシステムを構築・維持をする手間が省けることでしょう。
昨今では、機密情報の漏えいなどセキュリティに関する問題が多く挙げられていますが、クラウドサービスの場合、提供会社がセキュリティ対策を取っています。
したがって、利用者はインターネット環境とログインのためのアカウントがあれば、いつでもどこでも安心してサービスを使うことができます。
また、ソフトウェアを購入した際に発生する、初期導入費用の支払やソフトウェアのインストールや最新システムへのバージョンアップをする必要もありません。利用者は、クラウドサービスの利用契約を行えば、常に最新のクラウドサービスを利用することが可能になります。
クラウドサービスを利用する際のデメリットは?
クラウドサービスを利用する場合の注意点としては、利用する際のアカウントの管理を徹底しなければならない点が挙げられます。
いくらクラウドサービス側がセキュリティ対策を取っていたとしても、肝心の利用者である企業側のアカウントやパスワードが流出してしまっては元も子もありません。
アカウントやパスワード情報の持ち出しについては、就業規則などで管理方法を具体的に定め、社員へ周知させる必要があります。
また、退職した社員のアカウント情報の削除対応も必要です。
忘れてはならないのが、在籍中に利用していたサービスアカウント・パスワード情報を返却(削除)してもらう対応になります。くれぐれも、社内のクラウドサービス加入情報を外部へ漏らさないように心がけましょう。
【参考】
1.会計freee
2.Chatwork
3.kincone
4.SmartHR
5.トヨクモ
6.PHONE APPLI PEOPLE(旧:連絡とれるくん)
*Graphs / PIXTA(ピクスタ)