登録

会員登録いただけると、

  • メールマガジンの受け取り
  • 相談の広場への投稿 等

会員限定のサービスが利用できます

登録(無料)を続ける
TOP > 記事一覧 > 経理 > セキュリティの生命線!“データ保存と廃棄のルール”作成と運用のコツ【目指せ!経理のデジタル化 第5回】
セキュリティの生命線!"データ保存と廃棄のルール"作成と運用のコツ【目指せ!経理のデジタル化 第5回】

セキュリティの生命線!“データ保存と廃棄のルール”作成と運用のコツ【目指せ!経理のデジタル化 第5回】

2021.02.04

会社が扱う情報は、決算や個人情報に関わる重要なものから、誰もが閲覧できる軽微なものまで、取り扱いに要する注意度のレベルはさまざまです。顧客の大事な情報をたくさん収集する会社と、社内の限られた情報しか扱わない会社では、時間やお金など情報に対する経営資源の使い方も異なります。

そのいかなるケースにおいても、収集し使用した情報を社内で保存し、一定期間経過後には、廃棄するという流れは同じです。今回はデータの保存と廃棄について、考えたいと思います。

デジタル化における保存の重要性

紙媒体ではなくインターネットを使って収集し、使用したデータは、当然のことながら、パソコンの中、もしくはサーバーに自然と保存されることになります。デジタル化さえうまくいけば、後は勝手にコンピュータが保存してくれるのだから、気にする必要はないと思ったら、大間違いです。保存のルールが整っていないと、せっかく集めた情報を、再利用したり、検索したりすることができなくなり、大混乱を引き起こして、業務に支障をきたす可能性すらあります。

紙媒体で保管していた時代なら、保管用キャビネットの場所は決まっているし、保管場所にも限りがあります。物理的な理由から、時期がくれば定期的に廃棄しなければならず、廃棄しやすいように段ボールごとに分類して保管するという運用が、どの会社でもなされてきたことと思います。

しかし言うまでもなく、コンピュータの中は無限大です。情報をデジタル化するということは、無限大の保管場所を手にいれることを意味します。

これは一見、デジタル化のメリットのように感じますが、セキュリティ面から考えると、実は大変なリスクです。厳格な保存ルールを作って、運用しなければ、大事な情報も軽微な情報も一緒くたに混ざって、どこに保存されているか分からないという状況に陥る可能性があるからです。

あるデータは社員が使うパソコンに、あるデータはサーバーに、あるデータはクラウド上に保存され、欲しい情報がどこに保存されているのかを検索するだけで日が暮れる、という事態になりかねません。

このような事が起きないように、デジタルの場合は、紙時代より厳格な保存と廃棄のルールを決める必要があるのです。

情報管理の現状を分析する

まずは、どの情報をどの媒体のどのフォルダに保存するかという、デジタル化のための情報管理の仕組みを見直しましょう。

みなさんの会社がすべてのデータを紙で保存しているなら、話は簡単です。これから新しいルールを作って運用すればよいのです。しかし、実際はそうは行きません。ほとんどの会社がすでにコンピュータを導入しており、紙媒体とデジタル媒体が混在しているのが実情でしょう。

経理部は経理で、総務部は総務で、営業部は営業でといった具合に、独自のデータベースが既にできあがっているのではないでしょうか? 分類の仕方だけでなく、ナンバリングの方法なども、部署によってマチマチというケースも多いことでしょう。

そこでまず各部署に、バラバラに保存されているデータの分類方法をヒアリングし、会社としての統一ルールを策定する必要があります。

次に部署ごとの独自ルールを、統一ルールに変更するのですが、これには大変な労力と時間がかかります。データのボリュームにもよりますが、半年から1年程度の準備期間は見ておくと良いでしょう。本業で忙しい中、社員に大変な負担を強いることになるので、過去分のデータをどこまで統一ルールに切り替えるかを、決めることも大切です。

保存ルールの決め方

1.データの分類方法を決める

まずはさまざまなデータを、その属性と重要度に合わせて、分類していきます。

分類のアプローチとしては、主に下記の2種類があります。

(1)責任者が会社全体の情報を把握し、大局的に大分類→中分類→小分類と分解して行く方法

(2)各社員が作成した個々のデータの属性を確認しながら、小分類→中分類→大分類へとまとめて行く方法

どちらがより自社に適しているかを考慮して、分類方法と階層を決め、社員全員が統一のルールに従った保存をスタートさせます。

2.廃棄期限を決める

分類方法を決める際には、廃棄期限を考慮してフォルダ分けすることが効率化のポイントです。

書類の保存期間は、法律で決まっているものと、会社独自で決まっているものがあります。一般的には、経理に関わるものは5〜7年、人事に関わるものは2〜5年、会社法に関わるものは10年となっています。

詳しくは、拙著「人事・経理・労務の仕事が全部できる本(ソーテック社刊))」をご参照ください。

決算書や株主総会議事録などは、永久保存としている会社も多いようです。

3.タイトルの表示方法を決める

次に各ファイルの名称を統一化する必要があります。ファイルのタイトルを見ただけで、内容が分かるように「この文書ならこの名称」と決めておくことがポイントです。

膨大な数のデータから、検索をかける際に、名称が統一されていないと、ひとつずつファイルを空けて確認しなければならないという無駄な作業が発生します。これでは何のためのデジタル化か、分からなくなってしまいます。

ファイル名を統一するだけでなく、作成者と作成日も合わせて保存すると、より検索しやすくなるのでオススメです。

4.廃棄のルールを決める

セキュリティ確保のためには、保存した情報をルールに則って廃棄することが肝心です。しかし前述したように、コンピュータの保存容量は無制限なので、毎日の業務に忙殺され、廃棄は後回しになってしまいがちです。

サーバーの中を情報の無法地帯としないためには、廃棄パトロールの仕組みをつくると良いでしょう。毎月1日などと、日にちを決めて、担当者が定期的に廃棄の状況をチェックします。ルーズな社員がいれば、廃棄を促すなど、厳格に運用することで、情報漏洩などのリスクを軽減することができます。

5.保存のためのツールを決める

保存ルールの決定と並行して、保存のためのツールを選ぶ必要があります。主な保存用ツールには、下記のようなものがあるので、参考にしてください。

(1)Google Drive(グーグルドライブ)

グーグル社が提供するグループウエア。Gメールやカレンダーも使えて、コストパフォーマンスが良いのが魅力。

(2)One Drive(ワンドライブ)

マイクロソフト社が提供するサービスなので、ワード、エクセルなどオフィスアプリとの相性がよく、使いやすくコストパフォーマンスが良いのが魅力。

(3)DocuWorks(ドキュワークス)

富士ゼロックス社が提供する文章管理ソフト。アプリケーションやフォーマットの違いを超えて、どんな文書でも一元管理できる。紙の文書を読み込んでデータ化し、紙媒体と同じ感覚で検索、編集が可能。

今回ご紹介した方法で適切なデータの保存・廃棄の参考になれば幸いです。

*duiwoy / PIXTA(ピクスタ)