顧客ニーズの捉え方とは?BtoBの「御用聞き営業」から抜け出す方法【ノウハウまとめ】
初めまして。廣瀬信行と申します。私は地方創生経営コンサルタントと『LINE WORKS』というビジネスチャットツールのエヴァンジェリストとして日本全国地域や企業・団体の活性化および自治体などの業務改善支援を行っております。
今回は“顧客ニーズの捉え方”というテーマでのお話をさせていただきます。経営者の方はすでに感覚的に実践していることも多いかもしれませんが、ノウハウが明文化できていないことも多いはず。そこで営業担当社員の育成時に活かせるコツをまとめました。
顧客のニーズを捉えるとは
一概に顧客ニーズの捉え方といっても、その業態によって一通りで収まるものではありません。今回はBtoBで顧客の顔が見えている・顧客と対話することができる場合についてのニーズを捉えた提案の仕方についてお話させていただきます。BtoCであったり、物理的に顧客の顔が見えていない場合のお話については別の機会にご紹介できたらと思います。
さて、この議論を始める前にまず、顧客の顔が見えているBtoBの場合での営業をレベル分けしてみます。
段階
レベル1:自分が(会社が)売りたいものを提案する
レベル2:顧客の期待通りに欲しいものを提案する
レベル3: 顧客が期待していた以上のものを提案する
レベル1はみなさんも経験があり、すぐに過去の記憶から思い出せるのではないでしょうか。いわゆる押し付けがましく話しかけてくる営業の人たち、それです。
このスタイルに堕することは絶対に避けねばなりません。売上を上げるのは強烈な幸運か詐欺的話術の使い主かのどちらかといっても良いでしょう。
お客様の話を「ただ聞く」ことは御用聞き営業への近道
そしてレベル2(顧客の期待通りに欲しいものを提案する)です。まず、顧客ニーズを捉えるというと、よく巷でいわれるのは“お客様の話をよく聞く”ということ。もちろんこれは大事なことなのですが、気をつけなければいけないのは、話をよく聞くことで満足してしまうこと。もちろんお客様の話をしっかり聞き、お客様が今何を考えているかを把握することは大切です。でも、それでは以下の状態に安易に陥ってしまいます。
1:他の営業担当などがよく話を聞いて理解した場合、あっさり競合になってしまい、値引き競争など生産的でない泥沼競争に引き込まれる
2:顧客が自分で“これがしたいな”と思っていることしか提案できず、買い手のいいなり出入り業者扱いをされてしまう
これはどういうことか。つまり、まさによくいわれる“御用聞き営業”の範疇を出られないということです。どっちにしろ最初から不利な立ち振舞をする土俵に自らたってしまうことになります。お客様から見てひたすら下座に徹する営業スタイルをよく目にします。これが果たして営業効率として良い選択肢なのかということです。
「顧客の因果関係」を理解する
では、さらにレベル3に向けて何をしたら良いか。それは真剣に“顧客のため”を考えること。そんなことは重々わかっているといわれそうですが、実はこれがなかなか難しい。顧客のいうことをそのまま受け取るだけでは足りないのであればどうしたらよいのでしょうか。
大切なのは
1:“なぜ”必要なのか
2:欲しい物を使って・利用してどのような結果を得たいのか
という顧客の話の背景にある因果関係をしっかりと理解することです。
因果関係を理解することで、顧客が持っている“欲しい選択肢”が適解なのかもこちらで吟味した上で、顧客にとって望み通り、場合によっては期待値以上の本当に求めていた提案を思いつくことも可能になります。考え方としては“顧客が望む結果”に対してどのような方法がベストで、そのために購入すべき製品・サービスとは何かを提案することです。これができれば、顧客にとっては“自分の考え・悩みを本当に理解してくれる”ポジションに自身をおいてもらうことすら可能になります。
視野を広く持ち「顧客のため」を真剣に考える
今回はBtoBでのお話です。つまりここで顧客とは企業の担当者でもありますが、突き詰めるとその企業が顧客です。経営者の方の場合は、そのまま顧客=企業というケースが多いですよね。顧客の背景にある企業を真剣に考えるということはつまり、企業に取っての事業課題を解決する・事業を伸ばすことを真剣に考えることです。
そのためには事業を幅広くそして深く理解し、さらにその企業がある現在の立ち位置・状況・特有の課題なども理解しなければなりません。その上で、どのような方策をとるべきかを積極的に提言できるほどの洞察力を持つ必要があります。
そして自らが提案できることと自らの提案では提供できないものを仕分けます。可能であれば、自分が提案できないものは誰か提案できそうな人を紹介するまでできたらより良い提案になります。ここまでできて初めて、価格競争などに悩まされずに常に競合を制することができます。
常に狙った企業について以下の習慣を徹底的に継続するだけで、顧客と会話する内容が刷新されるはずです。
・事業にまつわる動向・情報を収集する
・現在の業況・課題を把握する
・業界の先進・有効事例を研究する
・業界で採用されている製品・サービス・方策などを研究する
・他業界でも転用、利活用可能な材料を研究する
・上記の情報収集は国内に限らず海外にもアンテナを張る
その上で顧客の話を聞きながら“今まさに刺さるだろう”という提案を展開すれば、“もっと聞きたい”と思ってもらえるはずです。これの積み重ねが何より肝要です。一朝一夕に取引獲得、という態度を気取られるのは絶対に禁物です。
すべての業界に対してこれができることが理想ではあるものの、今関わりのある顧客の業界だけでも最初は構いません。そして必要性を感じる業界・領域について少しずつアンテナの幅を広げていくことで顧客にとっても常に価値のある情報提供・提案ができるようになってきます。肝心なことはあらゆるきっかけをスキル練磨の好機にする意識付けです。
少しずつレベル上位の提案をできるように
すべてを一辺に身につけることは難しいですから、ここまでご紹介した顧客のニーズ把握および提案におけるレベルを少しずつ、日々の心がけで上位に上げていくことが何より肝心です。
諦めてしまいそうな社員に対しては、自分の引き出しにある情報・知識・経験を増やしていきながら“御用聞き営業”の先にある、頼もしいパートナーに位置づけてもらえるように日々努力を継続することが一番の要点であることを繰り返し伝えていくとよいでしょう。
* xiangtao / PIXTA(ピクスタ)