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社員がうつ病になった際の対応のポイントは

部下がうつ病に…社員がうつ病で休職する際に会社はどうすべき?手続きや対応のポイントを解説

2022.01.06

皆さんの会社でも、うつ病などのメンタルヘルス不調が原因で休職された社員がいるかもしれません。今や中小企業のような比較的規模の小さな職場でもメンタルヘルス不調による休職者の発生は当たり前になってきています。

中小企業経営として少ない戦力を活用していく立場としては、早く回復して健康な状態で働いてもらえるように、適切な対応をしたいものです。一方で、うつ病は原因や症状がさまざまでデリケートな病気であるため、対応に迷う場面もあるでしょう。

そこで今回は、うつ病で休職を希望する社員がでたときに会社側が取るべき対応のポイントについて、順に解説をしていきましょう。

うつ病での休職の実態

厚生労働省が発表している2020年度の統計データによると、過去1年の間にメンタルヘルス不調により連続して1ヶ月以上の休職した社員がいる事業所の割合は7.8%、メンタルヘルス不調により退職することを選択した社員がいる事業所の割合は3.7%です。

興味深い点としては、1ヶ月以上の休業取得を行った社員がいる事業所の割合は、2年前の6.7%(2018年度のデータ)から増加したことに対し、退職を選択した社員がいる事業所の割合は、2年前の5.8%から減少しているということです。

昨今では、メンタルヘルス不調になった場合、“退職”という選択よりも、“休職”して職場復帰を目指す選択をする社員が増えている点が見てとれます。

コロナ禍も長引いていることで、社員は大なり小なり精神的なストレスを抱えていることでしょう。会社側としては、うつ病などのメンタルヘルス不調を防止する対策を検討する一方で、休職を申し出る社員がでた際の対応をあらかじめ検討し、いざというときに適切に対応できるように備えておきたいものです。

そもそも休職とは?

そもそも休職とはどのようなことを指すのでしょうか?

休職は、事前に会社と社員との間で休業期間を定めた上で、社員が自己都合で一定期間を仕事を休むことです。うつ病のような病気やケガをはじめ、育児や介護、ボランティア活動を理由とした休職もあります。

間違えやすい言葉で“休業”、“欠勤”があります。“休業”は社員自身に就労意思や働ける状態ではあるものの働くことができない環境にあることで、“欠勤”は本来出勤しなければならない日に休むことで、意味合いが異なります。

ここからは、実際にうつ病が原因で休職を希望する社員が出た場合のポイントについて順に説明していきましょう。

【もっと詳しく】休職制度とは?

社員がうつ病で休職する際の対応

1:会社の休職制度を確認する

休職という制度は、国や法律で義務づけられている制度ではなく、各会社で取り入れているものです。休職で認められる期間、休職期間中の社員の扱いや賃金支払いの有無、復職については、会社側が決定をすることができます。

多くの会社では、就業規則で休職制度を定めているので、それに従って、休職を申し出た社員の休職の可否や休職期間の上限を確認します。病気やケガを理由とした休職では、医師の診断書の提出を規定されている場合も多いです。その場合は、社員に診断書を提出してもらうようにしましょう。

休職制度を設けていない会社は、この機会に就業規則を変更することを検討してもよいでしょう。厚生労働省のモデル就業規則の休職についての記載は下記の通りですので、参考にしてみてください。

(休職)
第9条 労働者が、次のいずれかに該当するときは、所定の期間休職とする。
① 業務外の傷病による欠勤が〇か月を超え、なお療養を継続する必要があるため勤務できないとき 〇年以内
② 前号のほか、特別な事情があり休職させることが適当と認められるとき 必要な期間
2 休職期間中に休職事由が消滅したときは、原則として元の職務に復帰させる。ただし、元の職務に復帰させることが困難又は不適当な場合には、他の職務に就かせることがある。
3 第1項第1号により休職し、休職期間が満了してもなお傷病が治癒せず就業が困難な場合は、休職期間の満了をもって退職とする。

【もっと詳しく】就業規則に休職規定を定める

2:社員に医師の診断書を提出してもらう

医師による診断書は、社員の状況を医療専門家としての立場から客観的に記した記録書であり、この診断書の内容をもとに、休職の可否や期間などを決定していくための資料となります。

就業規則にて医師の診断書の提出が規定されている場合は、まずこの診断書を提出してもらいます。就業規則に規定がない場合にも、任意で提出を求めることができます。社員の健康状態を把握するためにもできるだけ提出してもらうとよいでしょう。

社員が拒否するなどで診断書の提出が難しい場合でもあるでしょう。しかし、休職を求めるほど体調が悪いのであれば、会社としても病院を受診してほしいものです。こんなとき、会社は安全配慮義務の一つとして、社員に対して医師にかかるよう命令することが認められています。

ただし、うつ病の恐れがある社員は、精神的に不安定な状況であることから、医療機関の受診に消極的な態度を示す可能性もあります。なるべく親身になって相談に乗るなどの方法を取り、受診への不安を解消させる対応を心がけましょう。

3:休職期間を設定する

会社の休職制度を確認し、必要に応じて社員から診断書を受け取ったら、それらの情報と社員本人からの申告をもとに具体的な休職の内容を確認します。

休職の期間については、基本的には、医師の診断書の内容を参考にしながら、就業規則に従って決めていくことになります。医師の診断書には休職の期間が記載されていることが多いので、その期間が就業規則の休職制度の範囲内であれば、そのまま休職期間とすることも多いでしょう。

個人差はありますが、メンタルヘルス不調による休職期間の長さは、一般的に3~6ヶ月程度が多いとされています。

ただ、うつ病の場合は、想定より病状が長引くケースもあります。当初定めていた休職期間が終わっても復帰が難しい場合、会社が定める休職期間の範囲内であれば、延長するという対応も可能です。

注意したいのは、就業規則で定める休職期間の上限です。うつ病は個人差が大きく、回復までに数年以上かかることもあります。先に挙げたモデル就業規則にもあるように、休職期間が満了しても復職が難しい場合には、退職となることが一般的です。

4:社員への休職制度の説明

休職の内容が定まったら、休職期間、延長の可否や条件、休職期間の上限、満了時の対応などを伝えます。その他にも、休職期間中の社員が気になるポイントである、給与・賞与支払や保険料の徴収など、下記に挙げる項目も明確にしておきましょう。

【もっと詳しく】休職辞令を作る

・給与や賞与
基本的に、会社は休職をしている社員に給与は払う必要はありません。賞与も査定期間に勤務実績がなければ寸志や払わない場合が多いでしょう。給与や賞与についても就業規則に規定があれば、それに従うことになります。なお、厚生労働省のモデル就業規則での記載は下記の通り、無給の場合とともに、カッコ書きで支給の場合が記載されています。

(休暇等の賃金)
第41条
3 第9条に定める休職期間中は、原則として賃金を支給しない( 〇か月までは〇割を支給する)。

・社会保険料
社会保険料の支払いは、休職中であっても会社と社員のそれぞれの負担は変わりません。よって、休職中も会社と社員は変わらず社会保険料を払わなくてはいけません。給与の支払いがあった際には天引きをしていた社会保険料ですが、休職中は無給の場合が多いので、指定の銀行口座に振り込んでもらうようにするとよいでしょう。短期間での復帰が見込める場合には、一旦会社が立て替えて、復職後の給与の支払いの際に精算することもできます。

・住民税
給与から天引きをしていた住民税については、休職中は社員本人に支払ってもらう必要があります。普通徴収に切り替える方法がよいでしょう。

・傷病金手当
休職中に給与の支払いがない場合、社員は健康保険から傷病手当金を受給するケースが多いです。一般的に申請は会社が行います。休職中の収入を不安に思う社員は多いので、該当社員に受給資格があるかを確認のうえ、申請や受給の流れを社員に共有しておくと安心できるはずです。

5:休職中の連絡手段の確認

休職中の社員あるいは家族とは、必要なときに連絡できるように連絡手段を決めておきます。そして、休職中でも月1度程度、社員の体調の確認をするなど、コミュニケーションをとるようにしましょう。

【もっと詳しく】休職中に定期的に連絡もしくは面談をする

うつ病で休職した社員が復職する際の注意点

たとえば育児休業等から復職する場合と比べて、うつ病が原因で休職した社員が復職する場合は、より不安を抱えながらの復帰となることを覚えておきたいです。

復職にあたって、まずは休職していた社員に復職の意志があることをきちんと確認します。そして、職場復帰をしても問題ない旨を記載した医師の復職診断書を提出してもらうようにしましょう。復職しても問題ない健康状態なのか、どのような配慮が必要なのかを確認するためです。

復職することが決まったら、会社としてはうつ病で休職していた社員が、なるべく負担なく職場復帰できるように、できる限りサポートしたいものです。配置転換や異動が可能なのかも検討しましょう。また、いきなり多くの仕事を任せるのではなく、社員が徐々に職場へ溶け込むことができるようにできる限り配慮しましょう。

そのために、復職をサポートする計画書を作成することをおすすめします。計画書には、段階的に職場復帰するための仕事内容の計画、配慮が必要な場合は具体的にどう対応するか、定期的な面談はどうするかなどを記載します。こうすることによって、仕事内容は適切か、必要な配慮がなされているかを定期的に振り返ることができるので、復職者も安心して仕事に取り組むことができ、会社として対応の抜け漏れを防ぐごとにつながります。この際、産業医がいる場合は、しっかり連携するとなおよいでしょう。

【もっと詳しく】産業医が語る!中小企業の経営者がやるべき5つの予防策とは

まとめ

社員がうつ病を発症した際に会社側が取るべき対応のポイントについて解説しました。社員がうつ病などの深刻なメンタルヘルス不調になる前に対応ができるように、定期的な面談によるメンタル面のケアや適切な人材配置の確認も必要でしょう。

また、冒頭で説明したように、うつ病などのメンタルヘルス不調で休職する社員はもはやめずらしくありません。中小企業にとって貴重な戦力である社員がうつ病などで休職を希望した場合も、早く回復して健康な状態でまた働いてもらえるように適切な対応を心掛けたいものです。

【参考】
労働安全衛生調査(実態調査)』 / 厚生労働省
モデル就業規則について』/ 厚生労働省

* Pangaea、CORA、ururu、Yotsuba、EKAKI、ふじよ / PIXTA(ピクスタ)