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特別ウェビナー「産業医が語る!中小企業の経営者がやるべき5つの予防策とは」

産業医が語る!中小企業の経営者がやるべき5つの予防策とは(経営ノウハウの泉・特別ウェビナーより)

2021.06.07

公衆衛生・精神保健を専門とする産業医/労働衛生コンサルタントの日下慶子先生を講師に迎え、従業員の健康管理についての経営者向け特別ウェビナー(Webセミナー)『産業医が語る!中小企業の経営者がやるべき5つの予防策とは』が開催されました。

>登壇資料のダウンロードはこちら

日下先生によると、産業医は“働くことで不幸になる人を生み出さないための仕事”といわれているそう。大企業であれば社内に産業医がいるケースも多く、従業員の健康を会社とともにサポートしています。では、中小企業では産業医とどのような付き合いをしていくべきでしょうか。

まずは法律に定められた体制を作ることが大切ですが、健康診断と事後措置を確実に行い、安全配慮義務違反とならないよう、予見できるリスクはできるかぎり回避することが重要とのこと。また、地域産業保健センターや厚生労働省の資料など、リソースの少ない中小企業でも活用できる無料の資源があることが紹介されました。

産業医に相談できることは?最近はコロナ関連の相談が急増

<産業医に相談できること>
・病気やケガの予防のこと(予防医学)
・健康診断の結果のチェック(事後措置)
・職場の見回りと環境改善(職場巡視)
・病気を持ちながら働く人の相談(両立支援)
・過重労働による健康障害の防止(働き方改革)
・有害業務の管理(感染症・熱中症・化学物質)etc

最近は、社員が新型コロナウイルス感染症になってしまった、という相談が急増したとのこと。体調が悪い、熱が出たという社員が発生した場合に、“どういった対応をとるべきか”、“何日間の自宅療養期間を経て出社したら良いのか”など、会社内でルールを決め、現場で対応できるように体制を整えているそうです。

従業員が50人を超えるとやらなければいけないことは何か?

「従業員が50人を超えるとやらなければいけないことは何か?」これは最もよく受ける相談のひとつです。『労働安全衛生法』など、まずは法令をチェック。暗記する必要はないので、必要な時に参照できるようにどの法律に載っているかを把握しておくとよいそうです。

従業員が50人を超えると、“産業医・衛生管理者の選任”、“(安全)衛生委員会の開催”、“ストレスチェックの実施”が義務になるそうです。

また、必ずしも義務ではないですが、“ストレスチェックの集団分析”は上手く使うと組織運営の改善に効果的なので取り入れることを勧めています。

従業員の不健康がもたらす経営リスク

不健康、メンタル不調で仕事ができないなどのケースは、それが業務上のものなのか、業務外の理由なのかが大きなポイントとなります。業務と関係ない病気だとしても社員が休むと人手が足りなくなり痛手にはなりますが、業務上のケガや病気については、できるだけ未然に防ぐことが重要だそうです。

労災申請が認められた場合、会社が支払う労災保険料が増額する恐れ、また、民事訴訟で損害賠償請求に至るケースや、労働基準監督所から立ち入り調査が入ると人事や総務が対応に時間を取られるなどの経営への影響もあります。

重大な労基法・安衛法違反では、経営者や役員が書類送検される場合もあり、そのことがメディアで報道されると会社のイメージダウンに繋がります。

安全配慮義務とは?労務データや健康診断結果から損害回避を

事業主と労働者との労働契約においては、労働者が自分で自分の健康を守る“自己保健義務”があり、事業主は労働者が安全に仕事できるように、その生命、身体、健康を守るべき義務“安全配慮義務”があります。

では、“安全配慮義務”とは何をすれば良いのか。そのポイントは2つ。

(1)労働者が安全で健康に仕事が行えるように合理的な範囲で必要な配慮を
(2)予見できると考えられる危険について合理的に回避する手段があれば回避しなければならない

例えば、残業時間などの労務データや健康診断の結果から、会社側は従業員の体調不良を予見・予測できます。産業医がいないと健康診断結果をそのままにしてしまう、という企業が多いですが、それはリスクが高いことだそうです。

労務データで残業や休日出勤が続いている従業員がいれば、会社側から有給休暇の取得や業務の調整を提案すること、健康診断の結果に問題があれば医療機関の受診を推奨し、さらに病院受診後の経過まで丁寧に見ていくことが必要になってくるとのことです。

こういった予測できる危険に対して回避の対策をとらないでいると、安全配慮義務違反となる可能性があります。裁判になった場合は会社側が損害賠償を支払わなければならない、という事態になることもあります。

口頭で受診を促すだけでは不十分!具体的な従業員の体調管理を推奨

実際にあった安全配慮義務違反に関する判例では、高血圧症であった33歳のシステムエンジニアが脳出血により死亡したケースがあります。

月330時間という長時間労働と精神的なストレスにより毎年健康診断で異常が指摘されていましたが、担当者が口頭で精密検査を受けるように伝えるのみだったため、治療が行われていなかったことと、従業員の業務を軽減する措置を講じなかったとして、会社側の安全配慮義務違反と認められました。

ウェビナー資料5

出典: 経営ノウハウの泉

では、この例ではどのような対応をするべきだったのでしょうか。

例えば、該当の従業員を面談し、医療機関受診後の血圧の低下の様子など経過を報告するよう伝え、会社側でも把握できるようにしておくべきだと言います。

そして、労働時間の制限を実施。病院での治療と並行して、塩分を控える、禁煙、日々の運動など生活習慣の改善の指導も行い、可能なら産業保健師の指導を受けてもらって生活の改善をしてもらうことが大事だそうです。

その際の会社側への報告のやりとりはメールなどで行い、きちんと記録を残しておくことが必要とのこと。会社側が指導しているにも関わらず、従業員本人が医療機関を受診せず不摂生を続けていた場合は、本人の“自己保健義務”が果たせていないので、裁判となった場合に賠償金の金額が変わってくることがあります。

なお、事業者の義務として「健康診断の結果について医師の意見を聞かなければならない」と法律で決められているため、産業医がいない企業でも産業保健総合センター(さんぽセンター)や地域窓口(地域産業保健センター)など外部相談窓口に依頼する必要があるので注意してください。

健康診断を受けてくれない&自己受診する従業員への対応

また、「従業員がなかなか健康診断を受けてくれない」という悩みも多いようです。

健康診断を受けることも働く側の義務であると法律で定められていることを伝えることで大抵は納得してもらえるそうですが、それでも難しい場合は会社側が受診指示や業務命令で受けてもらうことができる就業規則にしておくという方法があります。

さらに、会社で指定した医療機関以外で健康診断を受けたいという従業員への対応は、法律で決められている健康診断の項目を伝え、検査データを共有してもらうという方法があります。

メンタルヘルス不調予防のためのケア

身体疾患による不調はまだ気づきやすいものですが、気づきにくいメンタル面での不調を訴え突然の休職となるケースも増えています。

架空の事例として、もともと真面目でおとなしい性格の30代男性が仕事でミスをしてしまい、上司から強く叱責されました。翌日出社せず、“適応障害、休職を要する”という診断書が提出された場合、を検討しました。どうすれば予防できたでしょうか。

メンタル不調は原因を突き止めることが難しい場合もあるため、“原因探しとその解決が難しい”という面もあります。プライベートな問題、仕事で起こったこと、性格など個人的な要因といった様々なストレス要因が複雑に絡み合ってストレス反応が起こるため、どのようなストレスがあり、その中でどのくらい仕事のストレスが関連していたのかについて、産業医面談でアセスメントしていくそうです。

悩みを話すことに抵抗がある方もいらっしゃるため、面談のはじめに「話したくないことは言わなくていいから」と前置きをしておくと、上司と部下の関係でも話しやすくなるかもしれません。話したことが誰に伝わるかも心配しているため、「人事には伝えない」や「もちろん同僚にも伝えない」ことをわかってもらい、“あなたと私の間だけの話にしておく”ことを保証することが大切です。

なお、誰でも“ストレス反応”と呼ばれる、心理面では「気分が落ち込む」、体調面では「頭痛・腹痛」、行動面では「ストレス発散のために買い物をしすぎる」、認知面では「悲観的に物事を考えてしまう」などの反応が出る場合がありますが、この反応がでること自体=病気ではないとのこと。その時点で上手く対処ができずにストレス反応が長く続くと、病気や休業に繋がっていってしまうのです。

厚生労働省からは、メンタルヘルス不調予防のための4つのケアとして以下の指針が公開されています。

・セルフケア
・ラインによるケア
・事業場内保健スタッフ等によるケア
・事業場外資源によるケア

働く本人が自分でストレスに気づき対処法を身につけるセルフケアとして、ストレスチェックを受けてもらい、健康教育の機会を用いてストレスへの対処法を伝える機会をつくっている企業も出てきています。

ラインによるケアでは、部下と話をする際のポイントについての管理監督者向けレクチャーのニーズが高いそうです。また、ストレスチェックの集団分析を活用することもおすすめだそうです。

社内に産業保健スタッフがいない場合は、リワーク施設や公的な地域産業保健センターなどで、無料で相談や研修を受けることが可能とのこと。

なお、厚生労働省の『心の耳』というメンタルヘルスポータルサイトには、研修や資料が多数掲載されており、すべて無料で使用できるのでぜひ活用してください。

さらに、来年2022年4月から中小企業で義務化される「ハラスメント対策」に関してや、ウェビナー参加者から質問が寄せられた「生活習慣の改善に消極的な部下への対応」「休職・復職を繰り返すケースへの対応」など、資料と動画(以下リンクからダウンロード可能)で詳しく紹介しています。

また、続きが気になる場合は資料をダウンロードいただき、ご覧ください。

事前に頂いていた質問への回答

質問1.お世話になります。建設現場での作業が主たる業務の部門長です。健康診断で要検査になる部下が多く、肥満、高血圧、生活習慣の改善に取り組まずどの様に接したらよいか悩んでいます。

回答)まずは、医師による就業判定が必要です。就業制限を要する検査値であれば、検査値の改善が観られるまで、残業時間や交代勤務の制限など、医師の意見に基づいた対応をしておくほうが安心です。

要件を満たせば、労災保険の二次健康診断等給付も利用できます。

その他、健康保険組合による保健指導を受けられないかも調べてみましょう。予算があれば、禁煙外来や健康関連アプリに対する補助をしている会社もありますし、予算をかけなくても社内健康イベントなど開催することで、生活習慣を変えるきっかけになることもあります。

【参考】
労災保険二次健康診断等給付 / 厚生労働省

質問2.社員の体調不良の見極め方(行動、表情など具体的な例がございましたらご教示頂きたいです)

回答)まずは、元々どういう人かを知り、どこが普段と違うのかを見極めることが重要です。個人的に実践している見極めポイントの覚え方としては、「ケチな飲み屋」があります。

け(欠勤)

ち(遅刻)

な(泣き言を言う)

の(能率の低下)

み(ミス)

や(辞めたいと言う)

質問3.産業医の居ない企業ですが、体調不良者が出た場合、どこに相談すればよろしいでしょうか?

回答)産業保健総合支援センター、地域産業保健センターへのご相談をおすすめします。スポットで相談可能な開業産業医もいます。

質問4.がんやうつで休職・復職を何度も繰り返すケースが最近立て続けに起き、どのような対応が本人と会社にとってより良いのか悩みました。事例または担当として心がけるべきポイントなどお聞かせ頂ければと存じます。

回答)復職しても体調が安定しない場合や業務遂行能力が低下している場合は、復職の判定を取り消す旨、復職前に決めておくことが大事でしょう。また、復職後の困りごとを主治医に知らせることも重要です。がんの場合はできるだけ就労に影響が少ないような治療法を提案してくださることもありますし、メンタル疾患の場合リワークなどによってストレス耐性を向上させる治療方針に変えてくださる主治医も多いです。

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