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TOP > 今、注目のテーマ特集 > テレワーク > 【弊社はこうしてテレワークを導入しました (3)】残業や業務管理をどうするか〜突然のコロナ禍に見舞われた会計事務所の奮戦記〜

【弊社はこうしてテレワークを導入しました (3)】残業や業務管理をどうするか〜突然のコロナ禍に見舞われた会計事務所の奮戦記〜

今回のコロナ禍で、事務所の全面テレワーク(リモートワーク)化に踏み切ったという原会計事務所の税理士・原尚美さん。

東京・大田区で平成2年に開業して30年。クライアントはほぼ法人で、業務内容は人材派遣業、IT業、介護事業、不動産業、建築業、飲食やアパレルなど、多岐に渡ります。30年の蓄積により顧客の半分は大田区の企業ですが、大阪や福岡、フランスのクライアントまでいるそうです。また、7年前にミャンマーにも事務所を設けています。

テレワーク前回の記事では、テレワーク化で取り入れたコミュニケーションツールやクライアントとの関係性の変化について聞きましたが、最終回となる今回は、テレワーク化ならではの課題や、テレワーク化して良かったことを語ってもらいました。

テレワークならではの課題「普通に時間で管理できる」という男女の感覚の違い

——テレワーク化における課題はどんなことがありましたか?
原:まだ解決していないんですけど、残業や業務管理をどうするかは課題です。事務所に来たら問題ないのですが、家で9時~18時にきっちりとは仕事ができない女性スタッフも多いんです。特に今、新型コロナウイルス(感染症拡大)による休校で子どもたちが家にいるわけですよ(※1)。ママたちが事務所にいるのと同じ環境で9時~18時まで仕事をするというのは絶対にできないです。ごはんを作らなきゃいけないし、子どもの面倒や勉強をみなきゃいけない。でも日本の労働法って時間で管理するんですよね。ママたちはちょっと朝早く起きてとか、空き時間や子どもがお昼寝している時間、夜中に作業する……そんな働き方になってしまう。それをどうやって管理しようかな、と。

※1 インタビューを行った2020年6月時点

——子どもの行動は自由ですし、目を離せない部分もありますよね。
原:かと言って、残業を認めないわけにもいかない。最初は、やった仕事の量(成果物)で評価や管理をしようと思ったんです。例えば仕分けを何個入力したらいくら、とか。それも少し試してみたんですけど、すごく不満が出て。結局ノウハウがないから、その作業に対する適正な値段がわからないし、想定していない業務も出てくる。だから、全然そのシステムでは無理だったのですぐにやめて、時間で管理する形態に戻しました。

——そこからどうされたのでしょうか。
原:事務所と同じように勤務時間内に仕事ができるか、できないかを選んでもらって、できないという人は残業ナシとして、普通に作業ができる人たちは残業申請を認めます、としました。

これも、他の企業や税理士などに相談したんですが、男の人に聞くと「え?」とか言われるんです。「別に家にいたって会社にいるのと同じように働けばいいんだから、普通に時間で管理できるじゃん」と。「いや、それは無理だから」と伝えたんですけど、そこの感覚が男女で違いがあるんですよね。

ご夫婦でテレワークというご家庭もありますよね。やっぱり女性はお子さんがいるとママになってしまうんです。一方、お父さんはちゃんと9時~18時などカッチリ働いていて。もともと時短で働いていたあるスタッフが、仕事に集中できず「無理です」と言って、旦那さんがお昼休みの12時~13時と、土日にフルで働きます、と勤務時間を変更した例もあります。

残業も時間で申請してもらって、通常業務終了の1時間前には、「今日は何をするので、1時間残業したい」と作業内容を申請してもらっています。

——テレワークの通常業務の勤怠管理はどうされているんですか?
原:毎朝必ずミーティングをしているので、そこで揃ってスタートします。コミュニケーションツールの『Mcrosoft Teams』で必ず全員から「今日はこの作業をやります」と連絡が来て、業務終了時は「今日はこの作業をやりました」と連絡をもらうことにしています。

あとはテレワークの課題だなと思ったのが、仕事ができる人(やり方が分かっている人)は家でも、できるんです。しかし、入って間もないスタッフや、まだ仕事の組み立てができないスタッフは、通常1時間でできる作業が3時間かかったりしてしまう。

——テレワークでの新入社員教育については、どの企業も課題となっていそうですね。
原:事務所の同じ空間にいれば、新しい仕事の話題とか、例えば初めての持続化給付金について試行錯誤している声が聞こえるので、他のスタッフも無意識に情報が入ってくる。でも、テレワークだとそれがない。同じことを全員がイチから自分で調べたり試行錯誤したりしなければならない場合が出てくるんです。わかったことを「今度こういう情報が出たよ。これが必要だよ」と共有していたりしたんですけど、もっと“ノイズ”みたいな雑談が重要だった。コミュニケーションツールで共有する情報は完成したものが多いので。

——事務所で語り合っているから、その会話をちょっと耳に入れるとか、そういうリアルの良さはあると思います。
原:会話に直接加わらなくても、聞いていて「あ~、そうなんだ」と知識として、なんとなく頭には入っているとかね。目に見えない共有がなくなってしまった部分はあります。

「事務所の中の業務が見えるように」テレワーク化で良かったことは?

——テレワークにしてよかったという声は?
原:家が遠くてお子さんもいる、時短で働いているスタッフの中には、「通勤時間も仕事にあてられるので業務時間を2時間増やしたい」と言ってきた人もいます。あと、うちのスタッフもお客様も含めてテレワークだとすぐに集まれる。今までだとみんなの時間を合わせて、外出などもあると「来週まで無理です」となっていたのが、「ちょっと1時間後に打ち合わせを」なども可能になりました。

——移動時間が不要なのは大きいと感じます。
原:遠くにいても時間を合わせられるのがいいですね。また、先ほど残業の話をしましたけど、残業をするときに必ずその時間でやる業務内容を聞くんですね。この会社のこの決算をしたい、とか。同じ業務をするのに、人によって全然かかる時間が違うんです。1時間で終わる人もいれば、3時間かかる人もいる。そうすると、なんでこんなに時間がかかるの?と聞けるわけです。「これをこうやっていて」と理由を聞くと、「あ、それはやらなくても大丈夫」とか、「こうやったらもうちょっと時間が短縮できるよ」とか、そういったコミュニケーションもできるようになりました。

——業務の見直しができるようになったんですね。
原:逆に、テレワークになって事務所の中の業務が見えるようになりました。ノートパソコンの使用などにより、全体的には効率は落ちたとは思うんですけど、こういった良かった部分もありますね。

あとうちは、コンサルティングとアカウンティングでスタッフ業務が分かれていて。コンサルティングはお客様を担当して、アカウンティングは入力や給料計算などを担当しています。私は主にコンサルティングのスタッフと相談など会話することが多くて、アカウンティングのスタッフとは今まであまり関わりがなかったんです。でも、今回テレワークになって、全員と必ず朝に「今日は何するの? 何か質問ない?」と話すようにしています。すると、以前だったら私が忙しそうで聞けなかったことも質問してくれるようになりました。「毎日先生と話せるようになって良い」と言ってくれます。

——そういった部分でいうと、原さんの負担は増えていないのですか?
原:私の負担は間違いなく増えていますけど、そこは移動時間がなくなったので、気にならないです。

——なるほど! コミュニケーションを取る時間が増えても、負担はそこまで変わらずということなんですね。
原:それでも確定申告の時期に重なっていたので大変でしたけどね。世間的に自粛や休業要請もあって、持続化給付金の申請やセーフティーネットの融資を受けるとか、お客様たちが悲鳴をあげて相談が一気に来たので、3月~5月は本当に大変でした。今(2020年6月末時点)はだいぶ落ち着きました。

——今は週に2日は事務所に出勤する体制をとられていますが、今後はどうされるのですか?
原:今も事務所の方が仕事が捗るので毎日来ているスタッフもいます。私は「家が遠くてお子さんが小さいならどんどんテレワークしていいよ」と言っているんですけど、あんまりしないんですよね(笑)。

うちは女性スタッフが多いので、お子さんが小さいうちは保育園に預けたりして逆に働けるんですよ。小学校4年生くらいになってくると、中学受験とかもっとお子さんのそばにいなければいけなくなって、辞める人が多かったんです。だから、テレワークを使って家にいながら働けるという選択肢のひとつができたのは、今回の働き方の変化のおかげだなと思います。

——これからテレワークを取り入れる企業にアドバイスは?
原:お金の問題はクリアしなければいけないですが、一番はスタッフと会社に合ったコミュニケーションツールを選ぶことが大事だと思います。そこがやっぱり肝だと思いました。

——結局、人とコミュニケーションを取ることが仕事の上で一番重要ということですね。貴重なお話をありがとうございました!

プロフィール

原 尚美 (はら・なおみ)
税理士。
東京外国語大学卒業。TACの全日本答練「財務諸表論」「法人税法」を全国1位の成績で、税理士試験に合格。直後に出産。育児と両立させるため、1日3時間だけの会計事務所からスタートし、現在はスタッフ49名(ミャンマー事務所含む)、一部上場企業の子会社やグローバル企業の日本子会社などをクライアントにもつ。ミャンマーに会計サービスの会社を設立し、海外進出支援にも力をいれている。
https://hara-tax-accounting.com/

インタビュアー

能一 ナオ(のういち・なお)
Webメディアを中心に記事を執筆。自身が赴き取材や対面インタビューも行うが、ほぼリモートワーク/テレワークで仕事をするフリーランスのライター。

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