労働実務事例
[ 質問 ]
企業オーナーがまもなく70歳に到達します。本人は勇退するつもりでしたが、正式にはまだ後継者が決まっていません。仮に引き続き就労する場合、年金や保険料がどうなるのか、教えてください。
岡山・M社
[ お答え ]
おおまかにいうと、厚生年金の被保険者資格は喪失、在職老齢年金は適用継続というイメージとなります。それぞれ、起算日等の問題があるので、少し細かく確認してみましょう。
厚生年金の資格喪失事由は、「死亡したとき」「事業所に使用されなくなったとき」など5種類定められています(厚年法第14条)。喪失の時期は、原則として喪失事由に該当した日の翌日ですが、「70歳に達したとき」には、その日に資格喪失する扱いです。「70歳に達した日」については、年齢計算ニ関スル法律(明治30年法律第50号)等により、「誕生日の前日」と定められています。
資格喪失日そのものは、誕生日の前日が月の半ばに位置していればその日になります。しかし、年金額・保険料の計算ベースとなる被保険者期間の考え方は異なります。
被保険者期間は、「資格を取得した月から資格を喪失した月の前月までを算入する」規定です(厚年法第19条第1項)。
保険料は、「被保険者期間の計算の基礎となる各月につき、徴収」(同第81条第2項)します。「誕生日の前日」に資格を喪失するのですから、その日が含まれる月は原則として被保険者期間の計算に含まれず、保険料徴収の対象となりません。
70歳に到達した後も継続勤務するケースであっても、70歳で資格喪失したときは、「1カ月が経過すると、それまでの被保険者期間や標準報酬月額・標準賞与額を計算の基礎に加えて、老齢厚生年金の額が再計算されます」(70歳到達時改定)。つまり、「誕生日の含まれる月の前月」までが新たに被保険者期間として追加され、年金額が増額されます。
しかし、「老齢厚生年金の受給権者が70歳以上の使用される者である日が属する月」については、60歳代後半の老齢厚生年金の仕組みが適用されます(厚年法第46条)。在職老齢年金の計算式は、65歳以降と同じです。
在職老齢年金=(総報酬月額相当額+基本月額-46万円)×0.5×12
注:総報酬月額相当額=標準報酬月額+当月以前1年間の標準賞与額÷12
なお、70歳以上の高齢者が在職老齢の対象となる場合、70歳以上被用者の雇用、退職、賃金等に関する届出が必要になります。昭和12年4月2日以降に生まれ、常時勤務している人(社会保険の加入資格を満たす勤務パターンの人)が対象になります。
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